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2章完 2人に送ろう、この言葉を

昨日あの後、泣きすぎて寝てしまった俺は気がつけば自室のベットで朝を迎えていた。


「ふぁ~~」


腕を伸ばしながらあくびを漏らし、ボヤけた視界で天井を見詰める。

とくに意味のない行動だが、ぼうっと見ていれば自然と焦点が定まった。

今は朝の何時かと知ろうとして時計を探すが、見つからない。

というか、そんなものなかったな。

わかっていたはずなのに、寝起きだとそんな事も忘れてしまう。


「ん~~~~っ!」


改めて背伸びをしてから起き上がり、窓から差す暖かな光に心地好さを感じながら服を探す。

とはいっても着るものなんて限られている。

手に取ったのは巫女服っぽい服だ。なぜっぽいかと言うと、上着が着物ではなく、白地の半袖だからだ。

うん、半袖なんだよ。長袖でも、振袖でもなく、半袖。いや、そっちの方が良いとかじゃない。

こっちの方が着やすいし、元男としては女装らしさが減って着やすいまである。

ただやはり、巫女服といえば母さんのような格好をイメージしてしまうだけに、これを巫女服と認めるのはどうかと思っただけだ。

下はさすがに袴だけど、腰の横にあるチャックを閉めれば終わる簡単仕様。腰回りにはゴムヒモまで入ってるし、ちゃんと尻尾を通せる穴もある。

既製品にこんな穴はない。これは母さんの手作りだ。

最初はパーカーを着回そうと思っていたけど、それだと可愛くないと、洗濯してる間はどうするのかと言われて仕方なく諦めることになった。

だけど、着方も知らない浴衣と着るのは無理だと拒否った結果、この服が用意された。

母さんからは別案として、毎朝着付けてやろうかと提案されたけど、無理に決まってる。

いくら親だと思おうとも今世では血の繋がらない相手だし、スタイルの良い母さんに着付けてもらうというのは色々な意味でヤバすぎる。

てな訳で自力で着替えることができるこの服が採用された、という訳だ。

今じゃあもうすっかり着なれてしまい。違和感もなく着てしまっている。

いやな慣れに思わず溜め息を吐く。


「だけど、これが日常になるんだよな……」


自分で決めたこととは言え、しょっぱなから挫けてしまいそうだ。

でもまぁ、男に戻れるんだし、貴重な体験と思って楽しめば良いかと、そう思うことで前向きにする。

こんな格好、男がしたら気持ち悪いだけだもんな。

思い浮かべるのは男だった俺の姿。

筋肉質という訳ではないが、それなりに筋肉のついた男がこの服を着てる光景を想像して、背中に寒気が走る。


「や、やめとこう」


うん。これ以上考えても仕方ないと、頭を横に振って掻き消す。

それよりも早く居間に向かおうと部屋を出れば、奥の方から母さんが歩いて来るところだった。


「ん?起きたのかナツキ。来んから起こしに来ようかと思ったところじゃ」

「おはよう、母さん。そんなに時間経ってた?」


時間はわからないけど、それでも遅くなるほどじゃなかったはずだ。

そう思って首を傾げれば、母さんは首を横に振る。


「そうではない。それどころか、いつもより早いぐらいじゃ」

「じゃあ、どうして?」

「一鬼と伊神が出ると言うてな。朝食を食べてから行けば良いものを、充分世話になったからと断りおって……!」

「はは……」


なんだか最後は怨み節が聞こえたけど、まあ、事情は把握した。

そっか、帰っちゃうのか……。

わかっていたけど、いざ、その時が訪れると昨日とは比べ物にならないぐらい寂しさがある。

母さんと同じことを言うけど、せめて食べてから帰れば良いのに。

もう少し話し合っていたかったと思いつつも、母さんの案内の下で玄関へと向かう。

玄関に着けば、すでに行く準備万端の2人が談笑していた。

別れだというのに微塵も寂しいとか、悲しいとかの雰囲気がない2人にモヤモヤとした気持ちを抱く。

自分でも気づかないうちに膨れた頬から慌てて空気を抜く。

これじゃあ、まるで子供みたいじゃかいか!

しっかりしろと、自らを叱咤し、気持ちを落ち着ける。

かるく呼吸を整えた俺は2人に声をかける。


「おはよう。もう帰っちゃうって聞いたけど、ご飯食べてからでも良いのに……」

「おはよう。ナヨと同じことを言うね。さすが親子。子は親に似るというけど、まさしくその通りだとは思わないかい?」


一鬼へと振り向き、伊神が問えば、一鬼は笑みを浮かべる。


「そうだな。仲が良いからこそ、似るのだろうな。また今度会う時が楽しみで仕方ない。次会う時は言葉遣いまで似とるかも知れんぞ?」

「おっ、それは楽しみだね」

「いやっ、そこまで似ないから!というか、真似するつもりないし!!」

「なんじゃと……!」


母さんがショックを受けたみたいな反応してるけど無視だ、無視。

そもそも似る以前に普通のことしか言ってないからな!?

普通に考えて、食べてから帰れば、なんて誰も思うはずだろう?!

そこだけで似るとか普通は言わないって!!

そう主張するのに2人は分かっているとばかりに笑い合う。

それが逆に羞恥心を煽る。というか、昨日も同じことあったな!?

これ、何を言っても無駄だと悟り、頭を抱えてしまう。


「さてと。お遊びはここまでとして、ナツキの顔も見られたことだし。僕たちはそろそろ行くよ」

「そうか……。気をつけて帰るのじゃよ?ほれ、ナツキも頭を抱えておらんで顔を上げるのじゃ」


母さんに促された俺は1度、深呼吸をして心を落ち着けてから顔を上げれば、2人は柔かい笑みを浮かべて俺の言葉を待ってるようだ。

俺は思わずフッと笑う。

どうして笑ったのか俺自身よくわかっていない。

それでもわかることは、2人のことが()好きだってことぐらいか。

最初に俺は一鬼へと顔を向ける。話すべき内容は自然と出てきた。


「一鬼。最初は見た目が怖くて苦手だったけど、今じゃあお父さんみたいだと思ってる。俺を見る父親のような表情がそう感じさせるのかな?頼りがいがあって、甘えたくなるんだよな。また会う時は甘えても良いか?」


俺の問いに一鬼は声ではなく、サムズアップすることで答える。

それがなんとなく、一鬼らしいなと思いつつ、今度は伊神へと顔を向ける。


「伊神。最初はヤベェやつと思ったけど、今は良いやつだと思ってる。村のことも救ってくれたし、俺のことも、母さんだって助けてくれた。ありがとう。今度会う時はなにか礼をさせてほしい」

「気にしないでくれ、と言いたいけど気にするんだろう?なら、その時になったら好きなことを願わせてもらおうかな?」

「少し怖いけど分かった。その時になったら教えてくれ」


あらかた言いたいことは言い終わったと思う。

こんなにスラスラと出てきて俺自身、驚いたけど、そのお陰で言いたいことを言えた。

満足感を抱きながら改めて2人を見据えて、俺は思いの丈を籠めてこの言葉を送る。


「また会おう!元気な姿で!!」

物語は一旦ここで完結といたします。

続きも考えておりますが、しばらくの間は他のことに集中したく、キリの良いここで区切りとさせていただきます。

読者の皆さまには半年以上もの間、本作をお読みいただき誠にありがとうございました。

お陰様で逃げずにここまで来ることができました。

途中からグダグタになってしまったのは私自身、自覚しており、最後ぐらいはしっかり締めようと頑張りましたが如何だったでしょうか。

良かったと、そう思っていただけたのであれば幸いです。

またいずれ、ここで再会できることを祈って締めさせていただきます。

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