迷いと決断
当時中になんとか完成できました。
前話合わせてギリ1話分です。
「は?」
予想だにしない言葉に思わず呆けた声を漏らす。
生きているのか?あの場所で?
真っ白になる思考、だが、それは一瞬のこと。
目を見開き伊神を見詰めながら俺は声を漏らす。
「嘘じゃなくて、本当に?」
「嘘を吐く理由なんてないさ。これは紛れもない事実だよ」
「どうして……」
疑問を口にしながらも本当は分かっていた。
これは伊神からの気遣いだと。
降って湧いた提案に俺は迷った。
会いたい訳じゃない。
それどころか会いたいとさえ思う。
だけど、どう接すれば良いのか分からない。
何度も言うが、赤子の頃に別れたっきりなのだ。
言葉もまともに話せない頃で、ママなんて1度も呼んだこともない。
親子としての会話もしたことがないのに、いきなり会ってママなんて呼べるほど俺に勇気はなかった。
正直に言えば怖いのだ。
悪い人ではないし、それどころか優しい人だって知っている。
だが、これは知っているからと言って拭える気持ちじゃない。
尻込みする俺に声を掛けたのは母さんだった。
「なにも必ず会う必要はないし、怖いのなら妾も一緒に行く。それでも迷うのなら己の心に問うてみれば良い。会いたいか、会いたくないか、とな。そんな難しい問いではなかろう?」
「はは……」
確かに、難しい問いではない。
それどころか簡単な問いだよ。
答えなんて最初っから出ている。
それをうじうじ悩んで会わない理由を探してしまった。
せっかく得られた機会を、たかが怖いからという理由でふいにするところだった。
1度、両の頬を強く叩く。
これをやったところで痛いだけで、何の効果もないが、気持ちを切り替えるには打ってつけだ。
「伊神、頼む!俺を母の下まで連れて行ってくれ!!」
その答えに対し、伊神は待っていたとばかりに笑う。
「良いよ。それじゃあ、さっそく行こうか」




