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解呪side伊神

「鏡には会わなく良いのかい?」

「えぇ、こんな見た目では怖がられてしまうでしょうから」

「そんな事はないと思うけどね、僕は」


それどころか会いたがると思うよ。

なんせ、生き別れた母親だ。

言いたいこともあるだろうし、話したいこともある筈さ。


「さっきも言ったけど、素直になりなよ。叶えられない願いではないんだ。最後ぐらい、会ったって良いんだよ」


これで終いとなるんだ。

何もせずに亡くなったと聞かされた鏡がどう思うか分からない君ではない筈さ。

これでも、死に目に立ち会えない辛さは少しは分かるつもりだ。

だから、つい、諭すなんてらしくもないことをしてしまった。


「………そう、ですね。最後ぐらい、鏡に会いたいです。成長したあの子の姿を目にしたい」

「なら決まりだね。治療をしたらすぐにでも呼ぼう」

「ありがとうございます」


目元に涙を溜めながら笑顔で礼を言うイオリ、僕はそれを見て苦笑する。

礼を言われる程じゃないさ。

これは僕の我が儘な願いでもあるからね。

本来ならその機会も与えずに殺すのが正しいのさ。

彼女はとっても厄介だからね。

それを自らの欲の為にねじ曲げる。

その為に君には消えてもらうよ、病魔。

空間から1つの小さな木箱を取り出す。

病気吸収(ディジーズアブソーブ)、これはその小型版。

あれが範囲型とするなら、こちらは単体型。

それをイオリに向けて起動する。


「“開錠”」


封を解かれた蓋が持ち上がり、溢れ出す粘性を帯びた黒き液体。

範囲型が天へと昇るのなら、こちらは地へと墜ちる。

地面に接触した部分から凄まじい勢いで侵食を開始し、イオリを囲うように円状に広がり止まる。

そこから浮かび上がる5本の黒き指がイオリの体を覆う。

そして始まるは水が流れ込み、苦悶の声を上げるイオリの悲鳴。

正直、聞いていて耳心地が良いとは言えない。

これを聞いているぐらいなら迎える準備をした方がマシさ。

それでも万が一があるから離れられないんだけどね。

早く終わらないものかと待っていれば、やがて汗だくのイオリが中から姿を現す。


「無事に治ったようだね」

「はぃ………お陰様で……」


息を切らしながら答えるイオリに、僕はハンカチを取り出し拭う。


「これでもう彼女に苦しめられることはない筈さ。流石に餓鬼の特性を消すことは出来ないけど、少しの間なら飢えを感じない筈だよ」


ここはどうしても本人でなければ分からないからね。

一応、予測通りの効果を発揮するようにしたけど、どうかな?

イオリに問い掛ければぎこちないながらも笑みを浮かべる。


「感じません。久しぶりです、飢えを感じないなんて……」


巫女として呪い(飢え)を抑え、堪え続けていたと語るイオリの表情はとても清々しげだ。

精神力が化物だね。

幾ら抑えようとも飢えは無くならないのに、よく今まで食べずにいられたよ。

僕なら我慢できずに食べてしまうよ、きっと。

肩を竦めて言えば、イオリは苦笑する。


「一口でも食べてしまえば理性を失くすと、そう思ったので。最後の意地ですよ」


何もかもが相手の思う壺なのは誰だって嫌でしょう?

そう語るイオリはしてやったりと笑みを浮かべていた。

強かだね。

敵に回したら恐ろしいタイプだよ。


「君が敵でなくて良かったよ」

「ふふ、私なんて貴方様からしたら簡単に倒せるというのに、可笑しなことを言うものですね」

「幾ら強かろうとも勝てない相手とはいるものさ。さて、そろそろ1度戻るよ。長々と話していたら時間が無くなるからね」


このままだと永遠と話し続けてしまいそうになり、敢えて僕は会話を終わらせる。

名残惜しさはあったけど、時間は有限だからね。

仕方ないと笑い掛ければ、イオリは返すように笑う。


「そうですか。では、待っていますね」

「すぐに戻ってくるよ」


イオリに背を向けて扉に手を掛けたところで、そこで1つ言い忘れていたことを思い出す。


「そうそう、今の鏡はちょっと見た目が変わってるけど驚かないでね?」

「え?」

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