表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/51

1度は使ってみたいアレ

遂にこの日が来た。

高ぶる思いを抑えて席に着く。


「ナツキ、此方に来るのじゃ」

「いや、でも……」

「先の件で懲りてはおらぬようじゃな?」

「……分かったよ」


先の件――風呂場での失言を持ち出され、渋々俺は母さんの膝の上に座る。

座ること事態は嫌じゃない。母さんの膝に座るのはむしろ好きな方ではある。

だが、元男として色々と、そう色々と柔らかい感触を感じてしまい辛いのだ。

母さんにはその心情を理解して欲しいと思うが、理解した上でやっているというのだからお手上げだ。

真上を見上げる。母さんはニコニコだ。

きっと俺は今、顔が赤いのだろう。

それが可愛いというのだから母さんは変態かも知れない。

思わず漏れ出る溜め息。母さんに頬を突かれる。


「妾は変態ではないからの?ナツキが可愛いのがいけないのじゃ」

「はいはい」


相手するのもアホらしくなり適当に返事を返す。

母さんは不服そうにするだけで何かを言って来ることはないが、その代わりとでも言いたげに頬を弄られる。

痛くはないが止めて欲しい。

言っても無駄なことは証明済みのため反応はせず無視を決め込み、目線を下げて伊神を見る。

俺達に背を向ける形で座る伊神が、大きな木の箱を弄っているのが気になったためだ。


「なぁ、それはなんだ?」

「これかい?君から預かったお守りだよ」

「全然面影ないんだけど……」

「あのままでは使えないからね。中身だけ取り出してこれに入れ替えたのさ。あぁ、そうだ。お守りは返すよ」


そう言うが早いか伊神は手を振る。

一瞬、その動きに疑問を抱くが急に感じる手の重さに気が付き咄嗟に手を広げる。


「は?お守り?どうやって?」

「それが伊神の力じゃ。空間に干渉しとるらしいぞ?」

「なにそれチートかよ」


そんな便利な力、普通に欲しいのだが。

俺でも使えたりしないものかと、伊神に視線を向ける。


「何か視線を感じるけど、教えて欲しいとかなら無理だからね?」

「どうしても?」

「どうしても。これは僕固有の力であって、他人に伝授できる物ではないからね」

「はぁ~、それゃそうだよな……」


転移とかしてみたかった。

テレポートと言って一瞬で移動するとか、1度やってみたかったのに。


「伊神に頼らすどもナツキには妾が居るではないか。妾では不服か?」

「そうじゃないけど、男として空間能力には憧れがあるんだよ」

「ふむ?よく分からんものじゃな、男というのは」


母さんからしたら異能の力であれば何でも良いと思ってるらしいが、そうじゃないんだよ。

確かに、母さんの力にも興味はあるよ。

狐火とか、獣化とか、やってみたいし。

その力を使って無双とかさ、してみたいよ。

ただそれ以上に空間能力の方に興味があるってだけでさ。


「そこまで言われると嫉妬しそうなのじゃが?そんなに伊神の方が良いと言うのか?」

「違うから!ただカッコいいと思っただけだよ!」

「むぅ」


面倒くさい、この母親。

たかが憧れ程度で嫉妬しないで欲しい。

振り回された尻尾は当たるし、抱きつかれるしで子供っぽすぎないか。

伊神が笑う。


「ハハハ!僕は取らないから安心してよ」

「信じられぬ。ナツキの可愛さにやられて盗まぬとも言えんじゃろ?」

「君が言うのかい?まぁ、良いや。最初にも言ったけど、今の君から盗むほど僕は命知らずじゃないよ。それでも不安なら、ナツキ、これ上げるよ」

「えっ?」


またしても空間転移によって送られて来た物を掴む。

手を広げて確認してみると小さな玉が手の中に納まっていた。


「それ、僕の力が籠められた宝玉。1度だけ危険に応じて発動するようしてあるから、空になったお守りに仕舞っておいて持ち歩くと良いよ」

「マジか!?ありがとう!!」


1度だけとは言えありがたい。

大事に掴んで慎重にお守りの中に仕舞う。

顔が緩む。嬉しさを抑えきれないのだ。

使い捨てとは言え、これで俺にも空間能力が使える。

危機的状況にならずに済むに越したことはないが、もし、そんな状況になったらテレポートと言ってみたいものだ。

そんな状況で言えるか、なんて不躾なことは考えてはいけない。

妄想だからこそ夢が膨らむのだ。


「ナ――」

「待たせたな」


場の空気が変わる。

声の主たる一鬼が遅れてやって来たのだ。

いつも以上に厳めしい顔付きで部屋に入って来た一鬼は1度謝罪をすると空いた席に座る。

場に重苦しい空気が漂う。

そんな中で此方を振り向いた伊神だけは笑っていた。

待っていたとでも言いたげに、歓迎するように両手を大きく開いた伊神は声を発する。


「さぁ、作戦を話そうか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ