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娘side一鬼

娘の悲鳴が耳について離れない。

痛みに喘ぎ、ワシに救いを求める娘をワシは救うことができなかった。

ワシは無力だった。突如として現れたナニかに娘が取り込まれて行くのをただ見ていることしかできなかったのだ。

取り込まれた娘は変わり果てた。

ニコニコと笑い。楽しげに村の人々に声を掛ける。

その様子だけ見ればよく笑うようになったと、ただそう思っただろう。

だが、違った。娘は救いを求める者を見付けては助けに行くようになった。

どこから出したのか分からない(くすり)を渡し、これを飲めば助かると甘言する。

それを信じ、飲んだ者は確かに救われた。

異形の怪物としてな。

ワシは娘を叱った。


「アレはなんだ!!お前はいったい何を飲ませたんだ!!答えろ!!」


ワシの詰問に娘は笑って答える。


「元気になる薬!生き残れるのなら何だって良いって言うからとっておきのを上げたの!」


無邪気だった。

それが齎す被害を一切考えず、求められるがまま必要な物を渡す。

確かに。あぁ、確かに、間違ってはいないのだろう。

それが欲しいからと、安易な手に縋った者が悪いとさえ言える。

だが、変わり果てたあの異形を見て何も思わないのか。

あまつさえ、おはよう等と挨拶をする。

倫理観がどうかしてるとしか言いようがない。

娘はこんなのではなかった。

人を狂わせて何も思わない子ではなかったのだ!!

ワシは娘が恐ろしかった。

人ではないナニかへと変わり果てた娘が恐ろしくて、気が付けば家を飛び出していた。

妻との約束を破った。

命尽きる直前、娘を頼むとお願いされたにも関わらず。

ワシは恐怖に負けた。

あの子から逃げたくて、行く当てもない道のりをずっと走り続ける。

走り続け走り続けて、ある時、ワシは気が付く。

なぜ体力が切れない。なぜワシは一層早く走れる。

恐ろしかった。気が付いてはならない事実に気が付いてしまったようで。

その予感は当たる。体を見下ろしたワシは見た。

人ではあり得ない肌に、人ならざる足。

湖に映った自らを見てワシは悟る。


(あぁ……ワシもまた、あの子に(のろ)われた者なのか)

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