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厄災の痕跡

「のぉ、一鬼よ。妾は今、とても複雑じゃ」

「だろうな。あのような姿を見せられてしまえば複雑にもなろう」

「何故じゃ……何故、妾ではなくそやつに懐くんじゃ!!」


轟く声に思わず目を見開く。


「仕方ないじゃないか。僕はナツキの命の恩人にして、同じ姓を持つ家族だからね。ポッと出の母親なんかより僕の方が良いよね?」

「えっと……」

「抜かせ!ナツキは妾が大好きなのじゃ!お主のような胡散臭い奴が好きなはずがなかろう!そうじゃな、ナツキ?」


俺はなんと答えれば良いのだろうか。

どちらを選んでも嫌な予感しかない。

頼りになりそうな一鬼に目を遣るが、我関せずとばかりに顔を背けられてしまう。

というか、そんな話をしてる場合ではないと思うのだが。

顔を上げる。伊神は笑えを浮かべるばかりで何も答えない。

母さんを見る。さぁ言ってやれとばかりの表情で俺の返答を待っていた。

交互に2人の顔を見遣り、俺は決断する。


「どっちも好きじゃ……駄目か?」


なんともへたれた返答だと思う。

だが、いや、言い訳に聞こえるかも知れないが優劣をつける話ではない筈だ。

これで納得してくれたら良いんだが、無理だよな。

思わず眉根が下がる。見上げる先、2人は何故か目を丸くしていた。


「……確かにそうじゃな。うむ。妾たちが間違っておった」

「はは、そうだね。この程度のことで張り合うとは僕は情けないよ」

「声を荒げてすまぬな、3人とも」

「いや、気にしてないよ。僕こそごめんね。変に張り合ってしまって」


何故か一転してお互いに謝罪し合う2人。

急な展開に呆けてしまう。

事情を知らないかと一鬼を見遣るが、こちらはこちらで何故か感心した様子で頷いていた。

事情を知らぬは俺ばかり。疎外感を感じながら口を開く。


「あぁ~、そろそろ本題に戻っても良いか?」

「そうじゃな。伊神、説明を頼む」

「了解。とは言ってもある程度の事情はさっき説明したけどね」


シンと静まる場。

互いに真剣な面持ちで見合い、次なる言葉を待つ。


「改めて言うよ。このままじゃナツキは餓鬼に堕ちる。それは君たちも嫌だよね?」


俺、母さん、一鬼は同意とばかりに頷く。

思い出したばかりとは言え、彼等のようになりたくはない。

それを解決するためにここに来たと語る伊神の話は続く。


「まずは何をするにしてもナツキの持つ、そのお守りが必要なんだ」

「このお守りが……」


服越しにお守りを握る。

先程も欲しいと言われたが、理由までは聞かされていない。

教えて欲しいと目で催促する。


「僕オリジナルの(じゅつ)がそのお守りに籠められていてね。彼等を救う(すべ)がその中にはあるんだ」

「そんな(すべ)がなんで俺なんかのお守りに?」

「それはね、ナツキ。君じゃないといけないんだ。彼女の力を強く浴びた君じゃないと、ね」

「彼女?」


彼女とはいったい誰のことだろうか。

俺の頭を撫でる伊神を見遣るが、その目は一鬼に向けられていた。


「一鬼、あの厄災が関わっているとしたらどうする?」

「まさか……あやつが?」


一鬼の目付きが剣呑となる。


「そのまさかさ。ナヨは既に知っていることだけど、この件の一端には彼女が関わっている。これがどう言う意味か分かるよね?」

「なぜ言わなかった、ナヨ」

「あの時は話せる状況ではなかったのじゃ。あやつらを封じるので妾は精一杯で、気づいた頃にはあやつは消えていたのじゃ……」

「そうか」


場に重苦しい空気が漂う。

会ってから少ししか経ってないとは言え、苦渋を噛み潰したような表情の一鬼を初めて見た。

ただならぬ因縁を感じさせるが、厄災と呼ばれた彼女といったい何があったと言うのか。

ただ1人、事情を知らない俺は置いてけぼりであった。

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