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伊神との関係、その結末

「僕は君にある封印を施した。それは何か分かるかな?」

「名を使った封印です」


そう。俺に名付けられた鏡という名は、奴が付けた名だ。

だが、その名も偽りに過ぎない。

確か、本来の名は―――。


館莪魅(かがみ)………確か、それが俺の名だった筈だ」

「大正解。よく覚えているね。そう、僕はその名に君の呪いを封印した。さて、今その封印はどうなっていると思う?」

「それは……」


どうなっているのだろうか。

今の俺は鏡であり、ナツキだ。

本来はあり得ない2つの名を持ったことは封印にいったいどのような影響を与えるのか。

顔が青白くなる。咄嗟に手を見やるが変化した様子はない。

その事に思わずホッと安堵する。


「どうやら理解したようだね。君の予想通り、封印に綻びが出始めている」

「そ、そんな……!俺は、また、あの姿に戻るのか……?」


嫌だ。あんな姿に戻りたくない。彼等のようになりたくない。

絶望の淵、俺は蹲る。

脳裏に過るは地獄の光景。

仲間を喰らい、自らを喰らい、お互いを喰らい合う彼等の姿。

自らもその輪に戻る。たったそれだけのこと。

あぁ……それだけのことなのに恐ろしい。

母が居なければ、奴が――伊神が居なければ、俺もまた、あの輪に居たのだろう。

分かってはいたのに、その事実を認めたくなくて―――知らない振りをしていた。

救いを求めて手を伸ばす。

助けてくれるのであれば誰でも良かった。

そんな思いで伸びる、行く宛のない手を掴む者がいた。


「大丈夫。その為に僕が居る」

「あっ」


優しい抱擁。

伊神の鼓動が聞こえる。

思わず涙が零れ落ちた。

懐かしい感覚。幼い頃に似た経験をしたことがあったことを思い出す。

嫌悪感は消えていた。背中に手を伸ばして抱き付く。

昔もこうした。その時は手が小さ過ぎて指に掴まるのが精々だったけど、今ならちゃんと抱き付ける。


「どうやら全てを思い出したようだね」

「うん。ごめんなさい。あの時は助けてくれて、本当にありがとう」


今なら顔を見て言える。


『僕が必ず君を助ける。君のお母さんもさ。だから安心して欲しい』


『大丈夫。君はちゃんと人に戻れるよ。この僕に任せなって!』


伊神に掛けられた数々の言葉。

今なら全て言える。泣いてばかりだった俺を安心させようと掛け続けた言葉は俺の中で根を張っている。

辛い時にふと思い浮かぶその言葉に何度助けられたか。

彼は俺のもう1人の親だった。


「はは……そう素直に礼を言われると照れるね。うん、でも、そうだね。1人の親として“君が無事に成長してくれて嬉しいよ”」


その一言に涙が決壊した。

物語はまだ続きます。

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