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2人の関係

「………は?」


中は荒れていなかった。

空気も険悪な物ではなく、和やかな物である。

予想外と言えば予想外だが、雰囲気が良い分にはこれと言って問題もない。

だが、そこに居た人物に俺は呆気に取られた。

鬼だ。筋骨隆々の赤い鬼が居た。

妖怪の代表格と呼べる鬼が厳めしい顔で胡座をかいていたのだ。

その顔が此方を向く。ただそれだけ。

なのに、俺の足は震える。

生物の格とでも言うべきか、根本からして人とは違うと分からせられる。

腰を抜かさなかったのを誰か褒めて欲しい。


「ほぉ……ナヨが見て欲しいと言っていた子供は貴様か」

「は?え?」


見定めるように見詰めるその瞳が恐ろしかった。

気分は肉食獣に目を付けられた小動物のようだ。

声からして怒ってる訳でも、食べようと思ってる訳でもないのに俺は1歩後退る。

頭ではなく本能がそうさせた。

逃げなければという生物の生存本能だ。

それぐらい目の前の存在は恐ろしかった。


「ふはっ!イッキよ。お主は自らの顔が怖いことを自覚せい。怯えているではないか」

「無茶を言うな!顔を見ずにどうやって診察しろと言うんだ!」


神――ナヨの一言で顔が逸れる。

思わずホッと安堵した。

生きた心地がしなかったのだ。

落ち着いたことで気になるのは、イッキと呼ばれた鬼について。

会話の内容からして彼が専門家なのは間違いがないだろう。

言っては悪いが、見るからにして脳筋タイプにしか見えないが、腕は確かなのだろうか。

疑いたくはないが、思わず疑問が顔を覗かせる。


「くく………腕は確かだから安心せい。認めたくはないが、これでも妾の知る限り随一の医者じゃ」

「おい。ワシは今すぐ帰っても良いんだぞ?来て欲しいとわざわざ頼まれたから来たんだ」

「ほぉ、約束を反故にするつもりか。覚悟は出来るとるのじゃな?」

「はっ!蹴りを付けるにはちょうど良いぐらいだ!」


「疑ってすみませんでした!助けてください!!」


一色触発の空気に俺は慌てて謝罪した。

もう少し気を付けるべきだった。

ここには心を読む神と、険悪な中の鬼が居るのだ。

さっきは何故か喧嘩にならなかったが、その恐れがあることを考えておくべきだった。

それに、俺のために来てくれた相手を疑うなんてお門違いだ。

頭を下げて謝罪する俺に対し、返って来た返事は予想外の物であった。


「フハッ!」

「ハッ!」


「「ハハハハハハハハハ!!」」


笑っていた。

これ以上ないぐらいに爆笑していたのだ。

これには思わず呆然とする。

今の何処に笑う要素があったのか分からなかった。

その疑問に対し、目元に溜まった涙を拭きながら鬼が答える。


「はぁ、はぁ、人の子にしては中々素直な奴だな貴様。ナヨが救いを求めるのも分かる。こんなに笑ったのは久方ぶりだ」

「えっと……これは……?」

「驚かせてすまんのぉ。これは妾達の挨拶みたいなものじゃ」

「昔どんぱちやっていた名ごりでな。今もこうして口撃し合っているだけよ」

「思えば、妾達も大人になったものじゃ」

「大人と言うには歳を取りすぎたがな」

「違いない」


さっきの嘘のように和やかな雰囲気だ。

というか、待て。昔そんなに仲が悪かったのか。

どんぱちやる程とはいったいどれだけ仲が悪かったのだろう。

神達の言う昔がどれぐらい前かは分からないが、当時に生まれなくて良かったと思う。

この時代に生まれたことに感謝しつつ、口を開く。

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