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窮地に入らずんばなんとやら

「はっ!!はぁはぁはぁはぁ」


慌てて起き上がる。

先ほど見た光景が頭を離れない。

すぐさま手を見るが、そこには変わらず俺の手があった。

小さくなったとは言え、人の手だ。

あの手じゃない。そのことにホッと安堵する。


「ん?ここ何処だ?」


夢のことが先行して気付かなかったが、見知らぬ部屋の中に俺は居た。

古き良き和室と言った感じで、畳の上に布団が広げられている。

漂う畳の匂いを吸い込みつつ、ベットから起き上がろうとして気付く。


「は?……浴衣?俺の服は?」


見間違いかと目を擦る。

だが、改めて見ても浴衣だ。

いつの間に、とは思うが考えても無駄であろう。

というより他の問題に意識が向いたと言う方が正しい。


「マジかよ。てことはあれか?裸を見られたってことだよな?」


顔が熱を帯びるのを感じる。

大丈夫だと、大人ならまだしも子供なら見られて困る物はない筈だと言い聞かせる。

だからセーフと言い聞かせるが、心情として納得ができるはずがなく。


「ああぁ"あ"あ"ああ"あああ"ぁああ!!」


布団に包まり絶叫する。

その頃にはもう、あの夢のことなど気にもしていなかった。

今はただこの羞恥心を発散したかったのだ。


「はぁ、行くか」


それから暫くして、一通り叫んで気持ちを落ち着かせた俺は、神に会うべく部屋を出ることにした。

行かないという手もあったが、会うのが遅くなるか早くなるかの違いでしかない。

重い足取りで部屋を出る。

部屋の先は縁側に面した通路となっており、暖かな日の光が照らしいていた。

縁側の向こうは茶色の地面が見えるばかりではあったが、和と言えばな光景に思わず感嘆の溜め息を漏らす。


「スゴいな」


昔はこの景色が珍しくもなかったのだろう、と柄にもなく思いを馳せる。

思わず見惚れてしまうが本来の目的を忘れている訳ではない。

興味を紛らわすように頭を振り、左右を見回す。


「さて、どっちに進もうか?」


この部屋が何処にあるか分からないが、居るとしたら左と右どっちだろうか。

どっちでも良いと言えば良いが、折角なら早く見つけたい。

ここは勘に任せて選ぶか。


「―――――左かな?」


なんとなく左に居そうという曖昧な理由ではあるが、勘に従い左側の通路を進む。

角を挟みつつも長い通路を進むこと暫く。微かではあるが人の話し声が聞こえてくる。

それも1人ではなく2人。

もしや、あの専門家だろうか。

気になりつつも声が聞こえる位置まで移動する。


「わざわざ呼び出した理由が本当にそれだけとは、変わったものだ――なぁ、ナヨ?」

「ふはっ!それを言うならお主は相も変わらず研究一筋じゃなぁ――イッキ?」

「ハハハハハハ!………喧嘩なら買うぞ?」

「ハハ!お主から仕掛けておいて何を言うとる。その台詞は妾の方じゃ。幾ら温厚な妾でも我慢の限界はあるのじゃぞ?はよぉ謝るのなら許してやらんこともない」


「………………」


両者とも喧嘩腰。

目線だけで火花でも散らしていそうだ。

正直言って、逃げ出したい。

今からここに突撃しに行く勇気なんて俺にはないのだ。

というか、知り合いとは言っていたがこんなに仲が悪いとは聞いていないぞ。


(これどうなるんだ。今すぐにでも喧嘩が起こりそうなんだが?)


もしそんなことが起こったら一溜りもない。

俺なんて一瞬で消し炭になってしまうことだろう。

ジリジリと後退する。

このまま何も見なかったことにして部屋に戻ろうか。

バレてないなら行けるはずだ。

そう思って、そう考えて後ろを振り向く。

そして凍り付いた。


「何をしとる。来たのならはよぉ、こっちに来るのじゃ」


後ろには誰も居ない。

声がしたのは部屋の中からだ。

いつから気付いていた。

疑問に思うも問う勇気がない。

もしかしたら気のせいかも、そんな淡い希望を抱く。


「来ぬのなら此方から行くぞ?」

「――行きます」


気のせいではなかった。

分かりきっていたことだが、外れたことに落ち込む。

行きたくない。行きたくはないが、行かなければならない。

険悪な空気の中に入らなければならない事実にそっと溜め息を吐く。

重い足取りで部屋に近づき、取っ手に触れる。

緊張していた。

扉の先にはいったいどのような光景が広がっているのだろうか。

先の会話からして、拳の1つや2つ交わしててもおかしくないのだ。

見るのが怖いと思いつつ、震える手に力を籠める。


(よし!よし!!行くぞ!!!)


覚悟を決めて開いたその先には予想外の光景が広がっていた。

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