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4、転移先は

昔の自分の文章力から目を背けてしまい、更新が遅くなりました! すみません。

 光が治まり目を開けようとしたけど上手く見えなくて、再び目を閉じる。両手を瞼の上に置き、少し待つ。


「もういいかな」


 そうして目の前に広がる光景はというと。


 森。


 しかも不気味な鳴き声がどこからともなく聞こえてくるというおまけ付き。


「ママ、早速娘の命の危機です。ママの馬鹿。肝心の転移先を間違えるなんてありえない。娘の大事な初っ端ですよ?」




 ひとしきり口に出し終わったところで一息吐く。



 ママがあの場所から此処を見ていることを心の底から願ってる。でないとこうして口に出して罵った苦労が水の泡となってしまう。


 わなわなと震え続ける体を宥めて溜息を吐く。


 とりあえず現在位置を知りたい。いや、それより水かな。水が欲しい。人が生きる上で最上位に必須なものだから。まあ、体を動かすものとして、だから野生動物に襲われたら一発アウトなんだけども。



 転移魔法が自分の能力的に使えるはず。条件とかあるのかな。自分が行ったことのある場所とか。


 あ、ママが魔法はイメージだとかいう、ここだけ切り出したら根性論なことを言ってたな。


 それで村とか街に行くか? でも急に街中に現れると目立ち過ぎる。だからと言って門前でも人がいるだろう。村は? 村に行けたとしても、村といった人と人との関わりが密接な地域は余所者に良くしてくれるだろうか。



 駄目だ。


 転移後のことばかり考えてしまって上手く転移を使える気がしない。



 とりあえず魔法を試し打ちしてみることにした。


 よし、あそこの木に狙いを定めて、ウィンドカッター。


「………………」


 景色に変化はないし、なんなら聞こえるのはガサガサと葉の擦れる音と相変わらずな不気味な鳴き声だけで五感全てに変化がない。


「ええぇーー……」


 何でだよ。


 んん。少しキャラが崩れた気がする。




 詳しく考えていこう。


 脳内でウィンドカッター、風の刃をイメージした。それなのに魔法は発動しなかった。


 イメージが足りないのか?


 いや、明確に風の刃が木を切り倒す姿をイメージした。なのに魔法は撃てなかった。


 なら魔法を撃つには他に何が必要なのか。


 異世界ものの物語を読んでいる時、魔法を使う時何をしていた。


 ある小説では全てスキルがサポートしていた。ある小説では魔術陣というものを使用していた。ある小説では魔力を感じるところから始めていた。



 これか? 魔力に対するイメージ不足。



 人間一度これだと思ったらそれ以外には思えないものだよね。一度魔力に対するイメージを明確にする。


 魔力は身体中を巡る血と似たものだと過程する。


 その魔力を腕に。掌に。人差し指に。どんどん濃く力強くしていく。


 その魔力を人差し指から放出する。その瞬間、ウィンドカッターのイメージを乗せる。


「………………」


 景色に変化はないし、なんなら聞こえるのはガサガサと葉の擦れる音と相変わらずな不気味な鳴き声だけで五感全てに変化がない。


「何でだよ!!」


 んん、またキャラが崩壊した。


 撃てたと思ったのに。身体の魔力を指先に集めるのは合っていたと思う。ちゃんと魔力っぽいものを感じた。


 魔力を放出する瞬間に魔法のイメージを乗せるのでは遅いのかな。魔力を集めてウィンドカッターをイメージしながら放出してみようか。



 魔力を腕に。掌に。人差し指に。どんどん濃く力強くしていく。そしてウィンドカッターをイメージする。このままだと自分の中からこの練った魔力を出せないので、イメージ的に魔力を出しやすいように人差し指を突き出した銃の形を両手で作り構える。


 撃つ。


 ドオン。


 私の指先から放たれた風の球。…………球だ。最初は刃のイメージだったのに。最終的にイメージが銃に釣られたらしい。まあそれでも魔法を撃てたことに変わりはない。



 予想以上に魔法を出すまでに時間が掛かった。精神的疲労感はあるものの、それを上回る達成感と自分が魔法を撃てたのだという現実がとても嬉しくてにまにまと笑う。







 ひとしきり余韻に浸り終えた後、水探しの旅に出ようかとしたとき時。急に閃いたのだ。



 あれ、私、水をだせるのでは。



 と。




 そして実際に水は出せた。出せたがその水を留めるための容器が何もないことを失念していた私。掌に水を移し、全てが漏れてしまわないうちにと慌てて飲む。



 喉が潤ったことで思考にゆとりができた。


 そこら辺に生えてる木の私が座るに丁度良いくらいの高さにある根に腰掛け、そう言えば無限収納(インベントリ)という便利なスキルも貰っていたなと思い出した。


 それとともに、ママの「無限収納(インベントリ)に生きる上で必要な武器やら食料やら防具やら、必要そうなものをいれといたわ」という言葉も思い出した。ママの満面の笑みが脳裏にバーン! と浮かんだ。


「…………。とりあえず中身見よ」


 無限収納(インベントリ)。ステータスと同じ、スマホのような画面が目の前に浮かぶ。何ブロックもある中、一番上にでかでかとオススメの文字とともに激しく主張されているそのブツは。



「オーマイガー」



 いや見た目と名前が一致しているだけの思っているモノとは全く違うブツなのだと信じて、無限収納(インベントリ)からそのブツを取り出し開封する。


 それは紛れもなく水とカロリーメイトだった。


 私はへなへなとしゃがみ込む。


 私の苦労は水の泡。いやまあ大変な労働ではなかったよ。けれども納得いかない。


 しかもこのピックアップの仕方、絶対ママ私のこと見てるし。こんな細かいことするくらいなら私をここから救い出してくれ。




 カロリーメイトを食べ水分も追加で飲んだ後、私は体力を回復するため寝ることにした。


 結界が本当に張られていることを小石を当てウィンドカッターを当て確認して安全だとわかった上で寝る。


 決して現実逃避ではないので悪しからず。











 ギエェ。ギエェーー!


 濁音の鳴き声という決して爽やかとは言えない自然の目覚ましで起きることになった私は小鳥のさえずりで目を覚したかったな、と思いながら目を開ける。


 目の前に広がる色が銀だった。


 自然色の茶でも緑でもない。


 付け加えて言うならふさふさ。触り心地もふもふ。ぬくい。しかも呼吸なのか上下に動く。


 目を開ける前に寝心地で気付けよ自分。



 そっと息を止め、なるべくこの生き物を刺激しないようにとスローモーションで動き立ち上がる。続けて一歩、二歩と下がる。


 私がもたれ掛かっていたのは銀色の毛の体長2メートル以上あるだろう巨体を持つ狼だった。わぁ、ファンタジー。


 結界を張っていた筈なのに、何故私はこの狼と寝ていたのだろうか。


 

『お主』

「………………」


 巨狼の瞼が開き黄金色の目が私に向けられた。そのどこか不機嫌な眼差しに心臓が鐘打つ。


『おい。聞こえておらんのか?』

「はい! 聞こえてますごめんなさいちょっと驚きで言葉が出なかっただけなんです食べないでください!!」

『食べんわ。人間は不味い』


 つまり人間を食した事があるんですね。


 私は顔が引き攣った。


『阿呆。戦闘時に肉塊が口に入っただけだわ』


 ちょっとよく分からない。でも分かっていますよという顔で頷いておいた。



 話を変えよう。


「なんでここに居るんですか?」

『我は面白そうな魔力を感じ、その魔力の持ち主に会ってみようと来ただけだ』

「結界有りませんでした?」

『無かったぞ』

「えぇ……。教えてくれてありがとうございます」


 何でだろう。後で考えよう。



「私って面白い魔力なんですか」

『ああ。人の魔力とは違う、どちらかというと神寄りの魔力を感じてな。まあ、お前自身も面白そうだがな』


 褒められているのか貶されているのか分からない発言は反応に困る。親しくないと余計にそうだ。


『どうだ、我と従魔契約をしないか』

「私は別に良いんですけど、貴方は良いんですか?」

『ああ。我と契約出来るほどの魔力を持つ人間で、我が気に入る者などそうそういないからな。お前は魔力が多くしかも面白い。ピッタリではないか』

「ならします。したいです。でも、従魔契約ってどうやるんですか?」

『なに、簡単だ。お主が我に名前をつければ良い』

「そうなんですね」


 本当に簡単だ。簡単だという事ほど有り難いことはない。


「参考に。貴方の種族は?」

『神獣フェンリルだ』

「んん」


 ドヤ顔。毛皮を被っているのに分かるくらいしてるドヤ顔。可愛さににやけそうになるのを必死に堪える。


 そこでドヤ顔のまま首を傾げないで欲しい。可愛すぎる。






 名前を決めないといけないのにどうしよう、このフェンリルの可愛さで全く考えられない。





評価二人もしてくださってありがとうございます!

ブックマークも増えてて嬉しいです!


これからもゆっくり更新ですがどうかお付き合いください。

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