1、異世界転生するために〜容姿を決めよう〜
慈愛に満ちた目で私を見ているティーアをちらりと見やる。途中からは正に女神といった雰囲気を醸し出したが、最初はそうでもなかった。
「どうしたの?」
「いや、ティーアの雰囲気が最初と今で違うなぁって思っただけ」
ふわりと微笑まれ、その柔らかさにほわりとする。しかしその気分はすぐに終わりを迎える。
「敬語を使うとなんだか気分が揚がるでしょう」
「ア、ハイ」
穏やかに言われたはずなのに圧が凄かった。
「私の体って消えたんだよね。転生する時の体はどうするの?」
「体は今から作ろうと思っているの」
「そうなんだ」
待って。そうなると私の母親はティーアになるのではないだろうか。
「ええ。梨花の母親は私になるわ。だから、その、……………あのね、私のことはママと呼んで欲しいの。駄目かし「もちろん! 嬉しい!!」
「…………本当……?」
「うん! 私は孤児だったから。ママという存在が出来て本当に嬉しいよ!」
「そう、なら良かったわ」
照れながらも素敵な満面の微笑みいただきました。私まで照れてくる。
この人可愛いなと本気で思ったのは内緒。お互い更に顔が赤くなると読んだ。
「んんん! 早く梨花の体を作りましょう! まず通常は転生した時の体の年齢を決めれるのだけれど、体を一から作るとなると年齢を選ぶことが出来ないの。だから6歳からになってしまうわ。…………ごめんなさい」
へにょへにょ、と眉を下げる。
実に可愛らしい。母親に対する表現ではないとわかっている。それでも可愛い。私のママは宇宙一可愛い。
それにしても6歳か。もうすぐ三十路になる所だった私からすると、幼児の行動をしないといけないのは恥ずかしいな。
「ごめんなさい…………」
「いや、若いに越したことはないから大丈夫」
「彩色はどうしましょう。あっ、顔はちゃんと可愛くするからね」
可愛いのは決定なのか。そこに選択肢はないのだろうか。あまり目立たなくていいのだけど。
「彩色は自分で選んでいいんだよね。ママと同じアメジストの瞳にキラキラ輝く銀の髪がいいな。あ~でも、金髪も憧れるね……」
自分で選べるとなると迷ってしまう。
そして何故かママが満面の笑みなのだが。
「銀髪で、光が当たると反射して金のような色になるようにしましょう!」
異世界らしくていい。異世界ライフに思いを馳せて胸が躍る。
「うん、そうしてほしい」
「うふふ。私と同じ色だなんて、私の娘はなんて可愛いことを言うかしら。もう、大好きよ!」
おうふ、ママさんや、そんなことを言われたら照れるぜ。
ママが焦って私と目線を合わせ、顔を撫でるように指で触れられる。
「なあに?」
「どうしたの? 何故泣いているの? …………ごめんなさい、わからないの。だから教えて欲しいわ」
「え」
私は初めて自分が泣いていることに気づいた。
「ごめんなさい」
「謝る必要はないの」
「うん。ありがとう。大好きだなんて初めて言ってもらったから、多分、それで、っ」
自分の涙なのに、止めることができない。止め方がわからない。
「存分に泣きないてしまいなさい。そんなあなたを愛おしいと思ったから」
正面から抱き締められる。遠慮なんてない。ぎゅうぎゅうと苦しいくらいなのだが、それが嬉しい。
「さっきの大好きは少し軽かったけれど、今は重いほどあなたのこと大好きだと思っているの。言ってもいいかしら?」
「……言って」
「大好きよ、私の可愛い娘」
「私もママが大好き。フェイのことは心残りだけど、私を殺したのがママでよかった」
「………………素直に喜べないわ……」
この状況を見たら、男に羨ましがられるな。だって、胸が思いきり顔に当たっている。しかも魅惑のボディーときた。
「もう落ち着いたから大丈夫。ありがと」
「どういたしまして。私も、娘になってくれてありがとう」
泣き過ぎた目を隠しつつも、私の体決めを続行する。
「次はステータスを決めましょう。私の可愛い娘が困らないように、チートってやつにするわ」
「いいの?」
「もちろんよ。そして梨花、あなたは今魂でしかないから、目は腫れたりしないわ。ステータスは分かる?」
「そうなの!? ……手どかします。そしてわかりますぅ。私、異世界転生物の小説大好きだから」
笑われた。慈愛が籠った声だったからか拗ねる気が起きない。
「あら、そうなのね。ステータス自分で決める? それとも私が勝手に決めていいかしら?」
「いいよ。むしろ面倒臭いのでお願いします」
チートなステータスなら何でもいい。だから面倒くさがりだとよく言われるのだろうな。
可愛いともふもふは正義っ!!
ですよね。(ティーア並の圧)