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第4話 ミズロン村へ


 村の名前はミズロン村。

 この村こそ、今回俺が向かおうとしている目的地であり、ドラゴンによって襲撃された村だ。


 今現在、ミズロン村まで直接行く馬車は無い。それは、ドラゴンの襲撃によって、付近の街道にも被害が出たからである。

 


 つまり、最終的には自分自身の足を頼りに辿り着かなければならないのだ。


 因みに、王都ムーク市からミズロン村に行くまで片道2日~3日かかるのが一般的と言われている。

 まず、ミズロン村に一番近い町であるシェヌロカの町に行くまで普通の馬車で2日かかり、さらにそこから移動するわけだ。今回は、ミズロン村まで行く馬車は運行していないため、シェヌロカの町からは徒歩になる可能性が高い。



 そんなわけで、なるべくなら早く出発したいところなのだが、俺はとある喫茶店にやって来ていた。つまり、まだ王都ムーク市すら出ていないわけだ。


「ミズロン村に行くのか? 」


「ええ。既にご存知だとは思いますが、ドラゴンに襲われたみたいですのでね。少し調べてきますよ」


 相手の問いに、俺はそう答えた。


「そうか。お前のことだし、好きにしてきたら良い」


 と、相手が言う。


「わかりました。あくまでも冒険者として……程々に調べてきますよ」


「冒険者として……か。お前には無理だろうがな」


「無理ですか……? そういう言い方をされるとなると、もう既に何か掴んでいるのですか? 」


「大した情報は入ってきていないが、ドラゴンは魔物だ。魔物ということは当然使役の対象になるだろう」


「なるほど。魔物を使役するような連中が絡んでいるなら、お互いに真面目に取り組まなくてはならなくなりますね」


「そういうことだ。……ところでシェヌロカの町に寄るだろう? そこの街道保安官の事務所にこれを届けて来て欲しい」


 そう言って、相手が封筒を手渡してきた。


「判りました。シェヌロカの町に寄ったら、渡しておきます」


 俺は、その封筒を受け取る。


「実は、シェヌロカの町で拘束していた男が逃走してな。そいつ自身の魔力は大したことはないのだが、厄介なことに魔物を使役する魔法を習得しているんだ。まあ、よろしく頼むよ」


「……魔物を使役する魔法ですって? 」

 

 まさか、そいつがドラゴンを操っているのではなかろうか。


「そう驚くな。今言ったとおり、奴の魔力は大したことはない。それに目を赤く光らせて暴れることも無かったことから、少なとくとも奴単体での脅威度は低いだろう。だが、奴の自宅には骸骨の模型が無数にあったんだ」


「なるほど……」


 その骸骨の模型を使って、何か危険な行動に出ようとしていたのかもしれない。


「さて、お前もこれから出かけるんだ。そろそろ、解散しようか」


「はい」

 

 そして俺と相手は、会計を済ませて喫茶店を後にした。

 相手とはそこで別れて、俺は馬車駅へと向かう。


 寄り道をしたとはいえ、特急馬車でも使って一秒でも早くミズロン村に行きたい。


 ただ、報酬額である金貨5枚が上限だ。今回の依頼では、旅費などの手当ては全く付かないので、金貨5枚を超えてしまったら赤字になってしまう。もちろん日当で稼ぐ手もあるが、そこまで長居するつもりはない。


 報酬はついでだ。赤字にならず、そして少しだけプラスになれば良い。


「シェヌロカの町まで行きたいのだが、特急馬車の値段を教えてくれ」


「ここからシェヌロカの町までだと、銀貨50枚になるね」


 銀貨50枚か。

 つまり、特急馬車を往復で利用すれば金貨1枚になる。


「わかった」


 俺は代金を支払い、窓口の係員から特急馬車のチケットを受け取った。それから直ぐに、シェヌロカの町方面へ行く特急馬車に乗り込んだのである。


 退屈な馬車の旅も、シェヌロカの町に到着したことで一旦終わった。

 王都ムーク市を出たのは今日の朝だ。既に夜になっているが、わずか1日でシェヌロカの町に到着したのである。


 俺はシェヌロカの町で一夜を過ごし、朝一番に街道保安官の事務所へ立ち寄り、封筒を渡した。特に会話をすることも無く、数分もしない内にやり取りは終った。


 それから、徒歩でミズロン村を目指すことになった。

 途中の馬車駅までは運行している可能性もあると考えていたが、係員に訊いたところミズロン村方面の馬車は一切運行していないと告げられた。


 具体的な距離は判らないが、先ほどの係員から徒歩で半日かかるとは聞いている。今日中にはミズロン村に着けるだろう。


 ちらほらと、冒険者たちの姿が見える。その中には、王都ムーク市のギルド支部でよく見かける連中もいた。


「見ろよ? 引きこもりのイゴルだぜ」


「マジかよ。引きこもりなのに復興活動の手伝いなんか出来るのかね」


「むしろ、復興活動の妨害とかしそうだよな」


 と、連中は俺の姿に気づくなり、ゲラゲラと笑いながら俺を小馬鹿にするようなことを言ってくる。


 相変わらず、俺の評判は悪いようだ。


 だが、ひたすら先に進むと連中の姿は無くなっていった。大方、疲れて休んでいるのだろう。冒険者ならもう少し体力があっても良いだろうに。


 途中の馬車駅を越え、さらに進む。

 ただひたすら歩くのが、少々懐かしく感じてくる。


 さて、ミズロン村に近づいてきたのかは判らないが、道の真ん中に大きなクレーターが見えてきた。確かにこのような状況では、馬車は通れないだろう。


 そして、周囲の草原も一面が真っ黒に染まっていた。


「酷いありさまだな」


 と、俺は素直な思いを呟く。


 本来、この地域にドラゴンが棲息しているという情報は無かったのだ。理由……原因は一体どのようなものなのだろうか。


 俺は、そのようなことを考えながら先へと進んだ。


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