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引きこもり冒険者のおバカな英雄譚  第一部 暴れまくって王国を救う?   作者: 牟川
第1章 冒険者大会の狂った前夜祭
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第29話 ゲルト・ファミリーの奮闘


「王都ムーク市警察だ! ゲルト・マクンいるか? 」


 ボブ警部の声が、店内に響き渡る。

 店員、家族連れの客、そしてチンピラどもは唖然としていた。次から次へと続く展開に、もはや追いついていないのだろう。

 さらに、十数人もの警官たちが店内に入ってきた。


 しかしゲルトだけは、先の波動魔法によって壁に激突しながらも立ち上がり、ボブ警部たちに視線を向ける。


「サツが何の用だよ? 」


 小馬鹿にしたような感じだった。


「お前がゲルト・マクンか」


 ボブ警部がそう訊ねる。


「そうだけど? 」


「A級冒険者ロモスの殺害容疑で逮捕する」


 ボブ警部が逮捕令状を広げながらそう言うと、警官たちが一斉にゲルトを取り囲んだ。

 俺も直ぐに動き出す。


 俺の動きに勘づいたのか、ゲルトが俺に視線を向ける。その眼から、憎悪の感情がよく伝わってくる。


「要するに、お前は刑事だったんだな」


 ゲルトが俺に視線を向けて、そう言う。


「……」


 俺は無言で、自身の身分証を見せつけた。

 それを見たゲルトが、崩れるように倒れこんだ。もはや、諦めの表情だった。


「……マジか。国家憲兵隊捜査局……そんな奴らが捜査してたなんてな」


 そう呟く。


「それほど、大きな事件だってことだ」


「だが、俺もそんな大物になっていたわけだ」


 いや、お前はハンター事件の表層部分に過ぎないのだろう。あぶり出さなければならない奴らはもっと大勢いるはずだ。

 

 そう思考を巡らせていると、不意に女性の姿が映った。


「兄さん! 」


 イルザだった。


「イルザ……」


 思わずそう声にする。

 ずっと、俺をつけてきたのであろうか……。


 その可能性を完全に排除することはできないが、少なくとも俺の付近で怪しい気配はなかった。


 そう考えると、ボブ警部を尾行していたのかもしれない。

 市警本部に行く前と出た後で、怪しい気配の数が変わっていたわけだし、その可能性は高いだろう。

 

「……話は後ね。それよりも、彼らは未だ抵抗の意思があるようだわ」


 と、イルザが言う。

 

「そのようだな」


 チンピラどもは、それぞれナイフを取り出して威嚇している。さらに、外から戦闘音も聞こえてきたのであった。

 

 怒号も聞こえる。

 声から判断して、どうやらイザークたちが近くにいるようだ。


 その状況を察してか、ボブ警部が素早く動きゲルトを取り押さえた。後に続いて、数名の警官もゲルトを取り押さえる。


 他の残った警官たちサーベルを抜き、他のチンピラたちを威嚇する。

 

「ゲルト! お前の手下はどのくらいいるんだ? 」


 ボブ警部がそう訊ねる。

 

「全部合わせたら、ざっと50人くらいはいるだろうな? 」


 ゲルトの返答に、ボブ警部が舌打ちした。

 数の上では、こちらが不利だ。


 しかしこの店内に限って言えば、チンピラどもはナイフを手にしている一方で、警官たちはそれよりも長いサーベルを手にしている。至近距離に近づかれたらアウトだが、一定の距離を保っている状態であるから、警官たちが有利だろう。


 それに、チンピラの数も少ないし、S級冒険者のイルザもいるのだ。何とかなるに決まっている。


「店内は任せた。俺は、外の野郎どもをやってくる」


 そう言って、俺は店を飛び出した。

 もちろん、店内の気配だけは特に注意して意識するつもりだ。何か変な動きでもあったら、直ぐに店内へ戻れるようにな。

 

 店を出ると、チンピラどもがイザークたちを取り囲んでいた。イザークの他に、ロミーナとその妹エリン、そして支部長がいる。


 一見すると、多勢に無勢な状況なのだが、イザークたちの健闘があってか、現状の負傷者はチンピラだけのようだ。


「お前ら、助けが必要か? 」


 俺はそう言って、イザークたちのところへと駆け寄る。


「イゴル、イルザさんの側にいなくて良いの!? 」


 エリンがそう叫ぶ。


「お兄さんとしてのプライドは無いのですか!? 」


 さらに、ロミーナもそう叫ぶ。

 姉妹揃って、我が妹のイルザが好きなようだ。


 そして、支部長が俺の肩を叩いた。

 

「イゴル君。これはキミが招いた結果だよ? いくら警察の力を借りたからと言っても、このありさまだ。どうするんだ」


 と、言う。

 

 支部長に特段焦った様子は感じられない。

 とはいえ、このような状況で大人しく説教を受けている暇はない。早いところ、このチンピラどもを制圧してしまうとしよう。


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