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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門
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柿のある丘

それから程なくして、目的地に着いた。


10年前にリーザとさくらと3人で森の散策、ハイキングを行った場所だ。


木々はそれなりに大きくはなっているのだろうが、私は当時の記憶を鮮明には持っていない。

少し荒れたのかな?というイメージだ。


ひと気の少なさそうな理由からこの地を選んだのだが、そもそもこの地が国や県のものなのか、はたまた個人の私有地なのか調べもせずに勝手に入った。


それは今回の再訪問に際しても、確認もせずに来てしまった。

誰かに咎められたら、不法侵入だろうから素直に謝ろう。よし、そうしよう。


「お父さん、こっち〜、早くぅ〜」


勾配は緩いが、さくら脚強過ぎ!オジサン苦しいです。


余り人の手が入っていない場所に来ると、リーザとさくらは元気さが増す。

人間では計り知れない自然のパワーをエルフは受け取る事が出来るんだろうな。


こちとらただの人間ハアハアハア。その上40半ばのオッさんハアハアハア。坂を上がるぞハアハアハア。

何とか坂を登り切ると、記憶にある果物の数え唄を歌った例の丘だ。


「ここだ、ここ。とりあえず、着いたぁ~」


でも何か整備されてて、ベンチも設置されてるぞ。今の登って来た坂も振り返って見下ろすと整備された跡がある。やっぱ人様の土地?何か少し不安だが、まあ悪い事をしに来た分けでは無いからな。と気お取り直す。


そう思いつつ、坂道での疲労からベンチに腰かけた。


「ん?」

ふと目の前にヒョロッと伸びた柿の木が目に入った。

か細いが、小さいながらしっかりと柿の実が成っている。


「さくら、良くこの場所覚えていたな」

「えへへ」

何か曖昧な感じ。


さくらはその、か細い柿の木におもむろに手を伸ばすと、柿の実をひとつもいで私に投げ渡した。


「食べれるよ」


いや人様のものだろうし、そんな勝手に、と思いつつ柿の表面を磨いて嚙り付いた。


「あがががが、、、渋っぶう!」


口の中が渋味で満たされて、何度も何度も唾を吐き出したが治らない。ぐわぁ〜口の中が酷い!

あははは、と私の顔を見てさくらは笑い転げた。


「お父さんゴメン、こっちだよ」

そう言って、別の柿を再び投げ渡して来た。


渋面のまま渡された柿の実を見下ろす。先程の渋柿と何ら変わらない。

とにかく口直しに何か欲しかったので、恐る恐るではあるが、この柿にかぶり付いた。


「あっ、美味しい。甘い」

先程の渋味は打ち消され、甘く美味しい柿が味わえる。


「美味しいねー」

そう言ってさくらがベンチの私の横に腰掛けた。


「お父さん、分かる?」

何が?まさか?

「そう、この柿の木、前に来た時に埋めた種が育ったんだよ!」

まさか!

「10年経ったからね〜」

さくらはそう言って嬉しそうな顔をしてもう一口食べた。


何か不思議な再会、その木の甘く成った柿を食べ、持参した水筒で水分補給をし、人心地付いた。

そしてその場に持って来たシートを敷いてゴロンと横になった。


夏の終わりの秋口、日差しは木々が覆いとなり、丘を抜ける風が気持ちいい。木々が風でこすれる音、遠くで小鳥の声がする。時間がゆっくりと過ぎるようだ。


リーザが一緒で無いのは残念だが、来て良かった。


さくらがぴったりと横にくっ付いて来た。幼女モードだな、けど私は抱きマクラでは無いんだが。


「さっきさくら、先に渋柿渡してきたけど、渋柿と甘いのの見分けがつくの?」


渡された2つの柿は同じ木に成り、見た目が同じだったけれど成育差、味が極端だった。見分ける知識を持っていたのかな?

「うん、木が教えてくれるの」


う〜ん、エルフの能力かな。それと少し気になっていた事を話した。


「今日この森?丘?に入って気が付いたんだけど、整備されていた跡があったので誰かの私有地だと思う。昔来た時は何も考えずに入ったが、今日はあちこちで何やらあきらかに整備されている箇所があったので私有地である事を確信した。ベンチも設置されてるしな」

見解を続ける。


「もしも誰かに見られて声を掛けられたら、素直に謝る。勝手に入ってるからな」

さくらが答える。

「うん、分かった。でも大丈夫」


大丈夫?何で?


「ここ買ったから」


はぁ〜?!




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