↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/296

娘はハーフエルフ

 『エルフの里国』何処に在るのだろう。

 そこは多くの里が集まり、ひとつの共同体の延長として、“国“として成り建ったと。だから”里国“だと。

 でも、何か変な言い方。



 私はスルガ トキヒコ、日本人、40歳なかばの会社員、既婚、子供一人。

 本日、妻は会合に出席との事で帰宅時間不明(こちらの時間で今日中かな?)。

 一人娘も何かの会に出るとの事で、帰宅時間不明(門限である22時には戻るであろう)。


 よって今夜の夕飯は一人飯だ。 

 夕飯は私一人分なので、改まっての準備も正直言って面倒だ。独身時代に戻ったつもりで、私大好きインスタント袋麺に一手間掛けようと思う。


 冷蔵庫からモヤシと豚の挽肉を引っ張り出して炒め(ゴマ油が多かったか?)インスタントラーメン付属の粉末スープで味付けをする。


 麺は2袋分を卵の白身部分といっしょに茹で、ゆがく。

 麺が出来上がったら茹で汁をほとんど捨て、粉末スープの残りの1袋と先程炒めた具材に絡める。

 残されている生卵の黄身部分と刻んだ薬味ネギを乗せて簡単汁無し麺の完成だ。


「ただいま~」

 特製汁無し麺が出来たタイミングで、娘の帰宅だ。

 全く、なんつぅタイミングだ!見てた?

 完成した汁無し麺のどんぶりを食卓に着く。


 娘が帰宅早々に、何やら大きな風呂敷包を食卓に置いた。

 それはまるで、結婚式の引出物のようだ。

「今日の会、打ち合わせ?でお弁当貰った。手を洗って来るね」

 何だコレ?弁当?

「今夜はママがいないだろうから、お父さんと夕飯を一緒に食べようと思って持って帰って来た。包み開けておいて~」


 包みを解くと、こりゃ豪華。

 大きな箱は16当分されていて、和洋折衷、色々な料理が盛られている。

 3,000円?いや5,000円以上しちゃいそうだ!ふえぇ~。


「わー何かスゴイね、いただきます」

 私と揃って食卓に着いた娘は、先ずは大きな海老から食べ出した。

「お父さん、欲しいの有る?ん?」

 クンクンと何やら匂いを嗅ぎ出すと私のどんぶりを覗き込んで来た。端(はした)ないなぁ〜、外ではやるなよな。

「お父さん何食べてるのぉ?」

 と。

「オレ特製、インスタント汁無しラーメンだよ」

「ちょっと頂戴」

 私は向かい側に座る娘にラーメンどんぶりを差し出した。

「ぐちゃぐちゃに混ぜていいよ」

 ラーメンどんぶりを受け取った娘は、ためらわず、箸でぐるぐると混ぜると、一口、

「何コレ、うっまぁ~」

 ジャンクフード的な物は発育上や食育上、ゼロで無いけど、なるべく避けてはいた。それは我が妻リーザの方針でもある。


 今夜は私一人飯でも有り、少し油断していたな。

「コレおいしい。私のお弁当と交換ね」

 思いもよらず、大変豪華な弁当が目の前に来た。

 あー、でも、この容器を捨てる事を考えると良し悪しだな。量も多い。それにしても、、、

「それにしても、こんな豪華なお弁当が出る、頂いて帰って来るなんて、どんな寄り合い?」

 本来なら、その場の皆で夕食会に続いたそうだ。娘は私を気遣って帰って来たそうだ。


「何かねぇ、開発した新しいITプログラムを使って起業を考えている人達。大まかだけどね」

「メンバーはもう実際に起業している人が3人と大学の研究室のOBと先輩、どっかの会社の人、弁護士、司法書士とか。10人だった。」

 まあ、私がすれ違う事も接する事も無い、異なった次元の優秀な人達だな。


「そんなメンツの中で、さくらは何すんの?」

(『さくら』は娘の名前でハタチの女子大生である。)

「ん〜、女性目線や若い人の意見が欲しいって言われていたけど」

「今日は別になんにも喋ってないや。お弁当儲けた。」

 と言って笑っている。


 私達の娘さくらは、ハーフエルフ。正真正銘の私の娘だ。妻のリーザがエルフである。

 エルフ族は頭脳明晰で、知能も知識も知性も人間と比べる事すらおこがましい。


 敢えて例えるなら、人間の一般成人の知能などエルフでいえば赤子レベルとなってしまうだろうか。


 また、彼らは良い意味での『フェニミズム』が無い。

 いわゆる『男は男らしく、女は女らしく』ってやつだ。

 エルフ族も男エルフ、女エルフが居て、それぞれの役割も有る。男エルフだからやれる事、やれなければならぬ事を各人が持っており、女エルフもしかり。

 ただそれらの垣根は非常に低く、男女問わずにそれぞれが、それぞれの行いを果たし、助け合い、尊重し合う事で永きに渡り社会を形成している。


 ひねくれ者や意見の合わぬ者もいる。だけどエルフは共同体としての暮らしを求め探す。

 また、ハンディキャップを持つ者、行動や思考の劣る者も居る。

 エルフはそのような者達を置き去りにしない。エルフは平等に対等に、歩を進むべき道を探り、実践する。

 平凡な私が客観的に感じても、それは堅実でありながら、優しい世界。


 その社会を構築する(出来る)背景とも言えるのが、『エルフは相手の思いを読む』。

 “テレパシー”が存在するのであれば、そんな感じ。


 それば実際に、相手の意識の表層部を汲み取り、お互いが理解し合う。そこには無駄な言葉など要らない。

 相手の気持ちを汲み取る事で相手の思いを知り、理解し、寄り添う。

 だからそこに私なんかが紛れたら、下心に狡さ、悪態なんかも筒抜けで、ちょんバレだ!


 だから、エルフ達と接するのに、当初は苦労した。

 格好付けても、虚勢を張っても、見栄を張っても、見繕っても、増してや嘘も隠し事も通用しない。いい意味で潔白であれ、だけど人間である私には、向え立つエルフの意識も気持ちも読み取れない。

 だから、私なんかには都合が悪く、何処かで後ろめたく、負い目を持った。エルフばかりがこっちの事を見透かすみたいで、狡いじゃんか!と。


 だけど、リーザと接する事で気付かされた。

 人間は、相手の意識を汲み取れない。だけど、エルフ達は飾らない。エルフ同士が接する時に、何も見繕ったりしない。それは私と接する時も、同じ態度であったんだ。


 エルフは、そのままだったんだ。

 飾らない自分、見栄を張らない自分、格好付けない自分、、、どこまで、自分がそのままの態度で、エルフと接する事が出来るのか。

 何時からか私は『ありのままの自分』で居よう、そうありたいと思う様になっていた。

 でないと、エルフ達とは付き合えない。


 加える成らば、エルフは嘘を付かない。

 だけど人間社会では、『嘘も方便』『上手な嘘』なんかもある。だからリーザは現代社会を暮らすにあたり、嘘が下手だ。嘘が苦手なんだ、、、だった筈が、最近ちょっと怪しい。

 エルフは明晰だ。だから実は『上手な嘘』をマスターしてたりして。


 頭脳明晰なエルフ達なのだから

「そんなに頭が良いのなら、産業革命や現代科学を凌駕する技術を行えばいいのに」

 とリーザに以前、言った事がある。

 リーザの回答に、私は恥ずかしみと納得せざる得なかった。

「私達は永い時間の中、人間社会を見て来ております、我が王の言と意識を共有しております。」

 エルフの王は自身がお持ちになる力で、人間社会を垣間見て来た。


 どれだけの時間かは分からないけど、人類より10倍の時を過ごすと思われる彼らの王に、人間はどれだけ観察されていたかは不明だが、王から聞かされた話しだと、人間社会の素晴らしく憧れる文明文化、発展を知る。


 知れば知るほど、理解を深める程、そこから導き出され、行き着いた負の部分(争い、破壊、汚染、公害)は、エルフの社会にとり、発展に伴う豊かさや利便性を差し引いても不要なモノ。

 エルフ達は求め無いモノ。

 彼らが求めるのは継続であり、無闇な発展や進化を求めてはいない。

 彼らは自然を愛し、自然の中で穏やかに暮らしている。



 ハーフエルフである我が娘は、そんなエルフの頭脳を引き継いでいる面が有るようだ。

 おかげで学業の成績優秀者として学費免除の恩恵を受け、安月給のわが家の家計に大いに貢献している。誇らしい。

 ただ、人間の年齢で20歳と言えど、人類の10倍、1,000年以上を過ごすと云われるエルフからすると幼児レベル。


「お父さん、今日いっしょに寝ようよ」

 我々家族だけで過ごす時間、さくらはエルフの傾向が強まるのか、少し幼女の様な姿が現れる。

 幼女って、親子とか男女の垣根が低く、意思を主張しつつも、基本は親に見も心も委ねる。

 可愛い天使。


 人間とエルフ、この子はそれぞれのどこまでを引き継いでいるのだろうか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。