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心の病

作者: 無富 乃加奈

この話は実体験と創作が混ざったホラー小説です。


※ちなみに登場人物の名前は仮です。


 俺の名前は加藤。


 小中高と普通に進学し、大学も卒業して大手のゲーム会社に勤めている。


 そんな俺は会社に就職し、必死で仕事のノルマをこなして行ったが、上司からパワハラされ、さらに上司からオーバーワークを要求されてドンドンと肉体的にも精神的にも病んでいった。


 俺はそんな日々を送り、夜は眠りも浅いし、朝も起きるのも億劫になり、これは会社にも出勤出来ないと判断し、会社には「インフルエンザになったので、会社をしばらく休みます」

 と、嘘の病状を伝えた。


 すると上司は俺に対しこう伝えてきた。


「お前の仕事は全部残しておくからな!病気が治ったらすぐにノルマをやるんだぞ!」


 そう怒鳴り散らして、電話を切られた。


 俺はその日、精神科に行き、診断は重度な鬱病だと診断された。


 精神科の先生には「すぐに仕事を辞めて、心を休める事をススメます」


 俺は先生にそう言われたので、退職届を会社に送り、自己都合退職した。


 今まで賃貸で住んでいた家は家賃が高く、今までの仕事が出来ない為、生活保護に入る事になった。


 家は生活保護で指定されている家賃が安いアパートにしか住めないので、引っ越すことになった。


 ちなみに親も両親ともに亡くなっていた為、兄にしか頼れなく連帯保証人になってもらった。




 ⭐︎



 引っ越しが終わった。


 引っ越し先のアパートは築10年で、新しいアパートだ。

 このアパートは2回建で部屋が1階部分は3つの部屋があり、上の階も同じく3つの部屋がある。


 俺の部屋は1階の1番奥の部屋で角部屋だ。


 部屋自体は一人で住む分には大きく感じるが、なんだか部屋の空気が重い気がする。


 これも精神的に参っているからなのかな?


 でもまあ、角部屋で一番奥だし車の音も聞こえない。


 部屋に荷物を運ぶのは大変だったが、全て部屋に運んで荷物整理も終わり、俺は先生の言う通り、精神の薬を飲んで心を休める事だけに努めた。



 ⭐︎



 その日の夜、21:30頃だっただろうか。


 上の階に住んでいる住人の足音が聞こえてくる。


 歩き方にクセがあるのか、一歩一歩がドンッ!ドンッ!とそこそこに煩い。それにずっと走り回っている感じもする。


 さらに、床にスマホを置いているのか、バイブ音がする。


 それに夜なのにスマホで誰かと通話しているのか、ずっと話し声が聞こえている。


 それは0時過ぎても何回もしていて、イライラしながらも俺は精神科から貰った薬のおかげか、引っ越しして疲れたおかげなのか、やっと眠気が来て1日目を終えた。



 ⭐︎



 あれから1週間が経ち、上の階の人の足音もスマホのバイブ音も続いていたが、俺にとっては見過ごせないことが起こった。


 なんと上の階の人のベランダから俺の部屋のベランダにゴミが捨てられていた。


 外で洗濯物を干すので、やめてもらいたい。


 俺はこのアパートを管理している会社に苦情を入れる為、管理会社に電話をした。


 ―――プルルル、プルルル。


「はい、○○コンサルティングの高橋です。どういったご用件でしょうか」


「あのー、すいません。1週間前に引っ越してきた、○○アパートの103号室に住んでいる者なんですが・・・自分の部屋の上の階にいる203号室の方についてなんですけど、部屋のベランダから私の部屋のベランダにゴミを投げてきているんです。あと、歩き方のクセが強いのか。足音も大きく、深夜になっても下の階の自分から聞こえるくらい大きな声でずっと電話で喋っているんですよ。話し声はまあ仕方ないと思うんですけど。せめてゴミだけは注意して貰えないでしょうか」


「かしこまりました。では特定を防ぐためにですが、全ての玄関ポストにゴミを投げ捨てないでおくような手紙の注意喚起をしますね」


「すいません。よろしくお願いします」


「はい、これでまだ続くようでしたら、もう一度電話を下さい」


「はい、わかりました。ありがとうございます」


 そう言って俺は電話を切る。


 これで変わるかな?



 ⭐︎



 電話して2日後に「ゴミや騒音が鳴らないように」といった内容の手紙が玄関ポストに入れられた。


 どうやら管理会社が動いてくれたようだ。


 これでゴミ問題は解決してくれると良いな。



 ⭐︎



 それから1週間経って変化が起きた。


 俺の部屋の玄関ポストに手紙が入っていた。


 内容は『となりのモノです。大声で歌わないで欲しい。静かにして欲しい』という簡潔な内容だった。


 どうやら102号室の人が入れたみたいだ。


 でもこの内容はおかしい。


 俺は昼も夜も家にいるが大声で歌った記憶はない。


 もちろん音楽もかけていないし、音を出すものに関しては、TVもほとんど見ないので、PCでヘッドホンでゲームをするかスマホで動画を見ているくらいだ。


 いったい何なんだろう?



 ⭐︎



 そしてそれから1週間後、再びベランダにゴミが撒かれていた。


 そのゴミはかなりの異臭がしており、触れるのも嫌なほどだ。


 それに上の階の騒音も酷くなっており、俺は限界を超えた。


 俺は管理会社に再び電話をすることにする。


 ―――プルルル、プルルル。


「はい、○○コンサルティングの高橋です。どういったご用件でしょうか」


「あのー、すいません。前に引っ越してきた、○○アパートの103号室に住んでいる者なんですが・・・前回と同様に自分の部屋の上の階にいる203号室の方についてなんですけど、部屋のベランダから私の部屋のベランダにゴミを投げてきているんです。しかも前と違ってかなり異臭がすごいゴミなんです。触るのも嫌なので回収してくれませんか?あと、前にも言いましたけど、足音も前より大きくなってて、102号室の方が間違われたのか、大声で歌っていると手紙を送られました。上の階の方にもう少し強めの注意をお願いしたいのですが・・・」


「そうでしたか。アレではダメだったのですね・・・。かしこまりました。当社では対応出来ないと判断しましたので、費用は全て当社が受け持ちますので引っ越しをお願いできないでしょうか?」


「はい?」


「この説明については引っ越しをした後に説明致しますので、明日に引っ越しの手配を当社が行いますので、荷物の整理だけ準備をお願いします」


「う、ううん。まあ、そっちが全て持つと言うのであれば良いですが・・・」


「はい、よろしくお願いします」


 そう言って俺は電話を切った。


 電話中も上からの騒音が酷い、102号室に住んでいる人と同じく、歌声も聞こえてきた。


 でも歌声を聴く分には「ああああ」とか「うううう」としか聞こえてこない。


 これは歌なのだろうか?



 ⭐︎



 引っ越し準備が終わり、明日に引っ越す事になった。


 今日で最悪な日ともおさらばだ。


 明日引っ越すので冷蔵庫には何も入っていない為、今日はコンビニ弁当が夕食になった。


 スマホで動画を見ながら夕食をすませていく。


 するとベランダからガサゴソと音がして、子供のような声が聞こえる。


 こんな深夜に子供なんて居るわけないだろうと思い、無視することにする。


 しかし突如、俺の隣から耳元で「もういいよ〜」囁かれるような声とどこかへ逃げて行くような感じで「キャハハ!」という笑い声が聞きこえた。


 俺はベランダに何か気配を感じたのでゆっくりとベランダのカーテンを開けた。


 するとそこには片方しか腕のない子供のようなナニカが、上の階を見て上を指差している。


 俺はマズイ!と思った。


 俺は見ちゃいけないようなモノを見た気がして、カーテンをすぐに閉める。


 な、何だったんだアレは・・・。


 俺は息が上がっているのに気が付き、呼吸を正し、もう一度カーテンを開けてベランダを見てみた。


 そこには・・・誰も居なかった。


 俺はきっと幻覚でも見たんだろうと思って、精神の薬を飲み、布団に入ってすぐ寝る事にした。



 ⭐︎



 翌日、俺は引っ越しをした。


 引っ越し先は前のアパートより新しく、築3年でアパートではなく壁の厚いマンションだ。


 部屋も2階だし、虫は入ってこないしベランダからゴミを落とす人もいない。


 前のアパートと違って、なんだか本当に前と違って重い空気も無いようだ。


 今日はゆっくり眠れそうだ。



 ⭐︎



 そして引っ越ししてから3日後。


 ○○コンサルティング管理会社から電話がきた。


「もしもし、○○コンサルティング会社の高橋ですが、加藤さんでしょうか」


「はい、加藤です」


「先日の件で大変ご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした」


「えっと、確か引っ越しをする理由を話してくれるんでしたよね」


「はい、嘘偽りなく。説明させて頂きます」


「はい、お願いします」


「まず簡潔に説明させて頂きますと、203号室の方についてですが、加藤さんが引っ越ししてきた日、というよりも、ずっとなんですが、そこには誰も住んで居ないんですよ」


「え?!」


「こちらとしても大変言いにくいことなのですが、被害にあってしまわれたので説明致しますと、203号室は事故物件と言われております」


「えええ?!」


「ゴミに関してですが、103号室に誰かが住れた時にしか発生しない現象なのです」


「実はあのアパートなのですが、加藤さんと同じく精神的な病気になった方が住んでいたのですが、女性が1人、子供が1人いました。そして住われてから3年後に子供と一緒に女性が横たわるように心中していました。死に方は子供と女性の方は左腕が切断されており、その腕は見つかっていなかったのです。ですが、今回の2回目のゴミには子供と女性の腕が腐って発見されたみたいなのです」


「へ、へえぇ・・・そうだったんですね」


 どおりで臭かったわけだ!


 しかしあのアパート事故物件だったのか・・・。


「って、ちょっと待ってください。頭の整理が追いついてこないですよ・・・」


「はい・・・」


 整理しよう。


 上からゴミを投げてくるってことは、俺に気付いて欲しかったとかか?


 そういえば歌声も子供をあやすような声だったようにも思えてくるし、子供が鳴き声をあげているような感じだったかもしれないような気がしてくる。


 俺が引っ越してきた時の現象をあげてみよう。


 まず、足音だ。


 ドンッ!ドンッ!という音で走り回って聞こえていた。


 スマホのバイブ音は・・・なんだったんだ?


 あとはゴミの件だろ。


 それとあの歌声とかも怪しく見えて来る。


 それに子供が上を指さすような白いナニか。


「すいません、えっと大丈夫ですか?」


「え?あ、はい。大丈夫じゃないけど大丈夫です」


「それと実はまだですね・・・」


「え?まだあるんですか?」


「102号室の方についてなのですが・・・」


「はい」


「実は102号室も、ずっと誰も住んでいないんですよ」


「え?いやいや!それはおかしいでしょ!だって手紙がポストに入れられてたんだし!」


「でも実際は住んで居ないんですよ」


「そ、そんなバカな!」


 じゃあ俺が見た手紙っていったい誰が書いたっていうんだ?!


 俺は手紙の内容を思い出す。


 確かこう書かれていたはず。


『となりのモノです。大声で歌わないで欲しい。静かにして欲しい』


 となりのモノ?


 大声で歌わないで欲しい?


 ちょっと待て、俺が歌声が聞こえ始めたのは今のここに引っ越すちょっと前だったはず。


 何かがおかしい。


 いや、待てよ?もしかして・・・。


「すいません、もしかして何ですけど、102号室と203号室の方って関係あったりしますか?」


「ええ、よく分かりましたね。はい、関係あります。実は102号室の方は203号室の元夫が住んでいました」


「やっぱり・・・っということは102号室の人は今はどこに?」


「実は当社に何回も203号室から音が煩い、歌声が煩いと何回も苦情が来ていた時がありまして・・・」


「それで?!今は?!その元夫はどこにいるんですか?!」


「はい・・・203号室の心中があった日から彼は現在も行方不明になっています。警察の見解では元夫が子供と妻の腕を持ってどこかへ行ってしまったと解釈されているそうです。彼の部屋から『煩いので出かけることにする。でも1人では寂しいから子供と妻に会いに行ってから出かける』という置き手紙があったそうです」


「行方不明・・・」


 俺は恐怖した。


 もし俺があのままあそこに住んで居たらどうなってしまっていたのか。


 102号室の人に連れ去られ、行方不明になる?


 俺がゴミを撒かれたことで管理会社に苦情を入れたことで203号室にいた妻と子供が気付いて貰えたと思ってアピールしていた?


 そしてあの子供は「もういいよ」と言っていた。


 かくれんぼか?


 いや、もしかしたら俺があの時に上の階に行って、何かを見つけてしまったらどうなってしまっていたのか・・・。





 いや、もうこう言う事を考えるのはやめよう。


 たらればの話は永久ループする。


 うん、そうだ。


 これは俺が心の病が、精神がおかしいからそう見えただけ、聞こえただけだ。


 スマホのスピーカーから管理会社の高橋さんが、俺の名前をずっと呼んでいる。


 でもスマホなのにまるで遠くの方でずっと俺の名前を呼んでいるように聞こえる。


 あれ?スマホが地面に落ちている?


 でも俺はそんなことが、もうどうでもいいと思った。


 そう、何もかもがどうでも良くなくなったので、何も言わずそのまま切ったのであった。


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ホラーとは全く関係ありませんが、他にも異世界転生ものを書いてますので興味がありましたら読んでみてください。

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