プロローグ
「相変わらず寒いな...」
俺は渡行時 20歳(彼女いない歴=年齢)の高校卒業から社会人として働いている会社員である。
2021年3月31日
今日は仕事で小学生の頃に住んでいた北海道へと飛行機で向かい、空港に降り立ったところだった。
今住んでいる東京では気温は既に20度を超え、日差しが強い中スーツを着ながら外を歩いていると暑いくらいだったが、ここ北海道はまだ少し雪が残っているくらい寒い。
「仕事は明日からだし、今日は楽しみにしていた旅館でゆっくりしよう。」
久しぶりの北海道で出張先の近くによさげな旅館があったこともあり、いつもはビジネスホテルだが奮発して旅館を予約していた。
空港を出て思い出の場所を観光した後、旅館へ向かいチェックインを済ませて部屋へと向かった。
「ネットで画像は見ていたけど、これは想像以上だな...」
部屋はとても広く、ベッドはキングサイズ、おまけに薪ストーブまでついている。
天然温泉に入り、気づけば時刻は23:50。
とりあえず薪ストーブを付け、ソファーに座りゆっくりすることにした。
そっと目を閉じ、小学生時代を思い出す。
「思い返せば俺の人生、小学生の頃から後悔が多いんだよなぁ」
自称後悔神の俺は、小学校時代から様々な後悔(主に恋愛)を重ね、彼女いない歴=年齢という残念なステータスを持ってしまっている。
その象徴でもある3枚の手紙は自分への戒めとして今でも財布の中に大切に保管しているのである。
「周りは結婚した友達もいるし、俺もそろそろ結婚とかも考えないとかな...そもそも彼女すらいないんだけど...」
「いつまでも後悔してたって仕方ないよな。」
決心がついた俺は財布から3枚の手紙を取り出し、それぞれの手紙を見つめる。
1枚目は名前だけ書かれた内容の無い手紙。
2枚目は『ずっと前から好きでした』と書かれた名無しの手紙。
3枚目は『どうして気付いてくれないの』と書かれた手紙。
それぞれ小、中、高生の時に好きだった女の子から貰った手紙であった。
どの女の子も後一歩というところまで来ていたはずなのに、彼氏、彼女の関係にはなれず、皮肉なことに最後に手紙を貰って終わるということまで歴史を繰り返してしまう。
「物で残しておくのが良くないのかもな。」
「最後くらい昔に戻った気持ちで燃やすことにしよう。」
そう考え、目をつぶり、中二病だったあの頃好きだったセリフを言いながら、薪ストーブの中にその手紙を入れることにした。
その時、時計の針は長短2本とも上を向いていた。
「思い出の中でじっとしていてくれ」
『私は思い出にはならないさ』
!?!?!?
「今の声...」
目を開けるとさっきまで見ていた景色は変わり、テレビの画面に映し出された某人気キャラクターがこちらを見つめていた。
「いったい何が起きたんだ!?」
思わず大きな声を上げると、また別の声が聞こえ始めた。
『うるさいわね!こんな夜中にテレビ見てないで早く寝なさい!』
こちらの声は聞きなれているような、少し違うような、そんな声だった。
振り向くとそこには母がいたのだが、明らかにいつも見ている顔よりしわが少ない。
いや、そんなことはどうでもいい。
まず、一体ここはどこなんだ?自分の声も声変わり前みたいに高くておかしくなってるし、いつも見ている視界より低いし。
10分ほど考え、たどり着いた答えが以下の3つだ。
1.夢を見ている
2.手紙を燃やしたことで火力が上がり、焼死しかけて走馬灯が見えている
3.過去に戻った
必死に考え、たどり着いた答えだったが、1は疲れていたとはいえ一瞬目をつぶった瞬間寝るわけないし、2はあんな小さな手紙で火力が上がるなんてことはないと思うし、3は現実的にありえない。
まだ可能性の高い1を信じて頬をつねってみるも、ただただ痛いだけだった。
とりあえず寝れば夢から覚めるだろうということでそういえば目覚ましセットしていなかったけど時間通り起きれるかな、なんてことを考えながら若いころの母の言うことを聞き、寝ることにした。
朝、布団を引っぺがされて寒...と思いながら起こされた。
『いつまで寝てるの!早く起きなさい!』
と、大声を上げられ反射的にこう言った。
「すみません!遅刻しました!」
『何言ってるの、小学校は4月6日からだから今日は休みでしょ。』
『休みだからって寝すぎよ、朝食出来てるから早く起きなさい。』
母らしき声がまた聞こえ、少しの間パニックになったが、だんだんと理解しがたいことを理解し始めてくる。
そう、一番ないだろうと思っていた3が最有力候補になりつつある。
とりあえず起きて朝食を食べながら、明らかに若くてしわの少ない母と高校生の頃に家族ぐるみでハマって見ていたアニメのネタを交えながら話をする。
「不思議に思う前に言っておく!俺は今あり得ないことを体験した。い...いや...体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが...あ...ありのまま今起きていることを話すぜ!」
その後、昨日までのことを話し、最後にこう言った。
「な...何を言っているのかわからねぇと思うが俺も何をされたのかわからなかった...頭がどうにかなりそうだった...催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ...」
『本当に何を言っているのかわからないわ、アニメの見過ぎでおかしくなったのかしら』
と、本気で心配され、このネタが通じないことの効果も増してより現実味を帯びてくる。
そんな中、ふと日めくりカレンダーを見るとそこには2007年と4月1日と書かれていた。
「あぁ、やっぱりそういうことなのか。」
これだけ証拠が揃うと心のどこかで疑いは残っているが、信じることにした。
そう、俺は小学一年生の始業式前にタイムスリップしている。
「待てよ、本当に過去に戻れたのだとしたら俺は今から2021年3月31日までに起きることを覚えてる限り知っているということになる。」
「ということはもう後悔なんてせずに生きられる!!!」
そう思い、これからどう生きていこうか4月6日の始業式まで作戦を練ることにした。
偶然に偶然が重なり、後悔の多かった過去に戻ることが出来た一人の男の物語である。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
本作が人生初作品になります。
たまたま思いつき、暇だったので投稿してみようといった勢いで投稿しているので投稿頻度は低いと思います。
評価や感想などがモチベーションに繋がり、投稿頻度も上がると思いますので頂けましたら幸いです。
完全初心者ですがよろしくお願いいたします!