表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/225

61 防衛都市ガルクニルでの宴会①

時間はユウ達が王城を去って少し後に遡る。

そこではこの城の主であるトゥルニクスが怒りに顔を歪めていた。


「許さん。許さんぞ。劣等種である人間が私にあの様な事をするとは。フフフ・・・戦争だ。全てを巻き込んだ大戦争を起こしてやる。」


そして暗く笑うトゥルニクスの背中から黒いオーラが立ち上り始める。

するとその中から一人の男が顔を覗かせ耳元へと顔を近づけるとそっと囁きかけた。


「そうだ、お前は王なのだ。お前の言葉、行動、思想は全て正しい。さあ、あの男と娘を殺し世界を混沌に陥れるのだ。」

「やっぱりね。」


すると男の更に後ろから今度は少女の声が聞こえた。

そして次の瞬間、男は強い衝撃を受け、トゥルニクスの背後のオーラごと壁に蹴り飛ばされる。

それと同時にトゥルニクスは糸の切れた人形のように力なくその場に倒れ意識を失った。

少女はそれを一瞥して蹴り飛ばした男に視線を向ける。


「おかしいと思いましたが予想通りデーモンに憑りつかれていましたね。」


そして、その少女は先ほど消えたはずの精霊オリジンである。

彼女はトゥルニクスの様子がいつもと違う為、様子を伺っていたのだ。

そして精霊王よりも更に上位の存在である彼女ならば何者にも気付かれず潜伏する事は容易い事である。

するとデーモンは立ち上がるとオリジンを睨みつけ声を荒げた。


「貴様、これは我々の管轄だ。勇者が誕生した以上、魔王の誕生も必然。そいつは魔王に相応しい心の闇を持っている。邪魔をするな!」


オリジンはデーモンの言葉を聞くと何故か凄く嫌そうな顔になりトゥルニクスを見下ろした。

その目には明らかに侮蔑と嫌悪が含まれており、まるで台所に良く出る黒い虫を見ている様だ。


「あなたはこの男の闇を知っているの!?」

「そ、それは・・・。」


しかし、ここに居る二人はある意味において足元で眠っている男の犠牲者である。

それにデーモンは相手の心に巣くう闇に憑りつくのでどういうものかをちゃんと理解していた。

そしてデーモンは強く指摘されて言葉を詰まらせたが誤魔化すように言葉を繋いだ。


「闇は闇だ!それで十分だろう。」

「そう。その強がりが何処まで続くか楽しみね。」


するとオリジンはおもむろにその場で靴を脱ぎ素足でトゥルニクスの顔をグニグニと踏みつけ始めた。

ただ、その足は白魚の様に指先まで滑らかで靴を脱いだばかりでも臭いなんてまるでない。

それどころかトゥルニクスの顔はまるで花畑で寝ているかの様に笑顔となり、その足を包む空気を全て吸い込もうとでもするかの様に鼻の穴を広げている。

その様子にオリジンは自らも嫌そうな顔になりダメージを受けているがそれに耐えながら棘のある声で命令を下した。


「起きなさいトゥルニクス。これは命令よ!」


するとトゥルニクスの目が『カッ』と開き豚の様に鼻を鳴らし始めた。

それを見て今度はデーモンからも冷たい視線が向けられ、胸やけでもしたように顔を歪めている。


「『クン!クン!』こ、このカホリはもしや・・・。オリジン様のおみ足!しかも・・・素足!!!さらにここは私の寝室。オリジン様、とうとう私の愛を受け入れてくれる気になったのですね!」


そしてトゥルニクスは目を覚ますと嬉しそうにオリジンに踏まれながら全く見当違いの推測を口にした。

しかもその顔は踏まれていると言うのに笑顔を絶やさず明らかに喜んでいる。


「何を馬鹿な事を言っているのです。あなたがデーモンなどに憑りつかれてるから助けてあげただけです。私の計画上、あなたが馬鹿をすると困るのですよ。」


そう言ってオリジンはトゥルニクスから足を離し魔法で徹底的に綺麗にして靴を履き直した。

それでもその顔には嫌悪感が感じられ、心の中では今履いている靴を廃棄する事を決めた。


ちなみにトゥルニクスの闇とはロリコン、脚フェチ、ニオイフェチ、ドM、精霊萌えである。

そんな事は国民にも家族にも言えずそれが心の闇となっていた。

更に言えばアリシアの母は身長140センチのロリコン体系で隠れドS であった。

トゥルニクスは城で晴らせない鬱憤を市井に求め、アリシアの母と出会ったのだ

そして二人が愛し合った果てにアリシアが生まれたのである。

その事実を知る者は今ではトゥルニクスのみとなったがアリシアがなぜこんなに健全に育ったかは不明である。

もしかするとSとMが互いに打ち消し合った結果かもしれない。。


そして、トゥルニクスの悶える姿を見てデーモンですら既にドン引いている。

やはり、知っているのと直に見るのとではまったく印象が違うようだ。

そんな彼にオリジンはトドメの言葉を放つ。


「こんな奴を魔王にしたら世界がドSとロリばかりになっちゃうわよ。あなたはそれで良いの?」

「い、いや。少し待ってくれ。考える時間が欲しい。」


オリジンの止めの言葉にデーモンは頭を抱える。

しかし、その顔から既に答えは出ているのだろう。

大きな溜息を吐くとオリジンに視線を戻した。


「どうやら俺の選択が間違っていたようだ。俺は胸のデカい女が好きだからな『チラリ』。」


そう言ってデーモンはオリジンの姿を見て「フッ」と鼻で笑う。

彼女の姿は少女でありトゥルニクスの好みと言う事は絶壁である。

するとそれに気付いたオリジンは胸を隠すと怒りを顔に浮かべた。


「こ、この姿は仮の姿なのです。本当はもっと凄いんだからね。あ、何ですかその哀れみの顔は。それは信じてないわね!」


すると先ほどまで足元で余韻に浸っていたトゥルニクスが立ち上がりオリジンの肩に手を乗せた。

その顔は今までに見た事のない程、凛々しいものである。


「君の良さは私が知っていれば良いのです。あの様に脂肪を愛する馬鹿は置いておいて私と愛を語らいましょう。」

「あんたは黙ってなさい。それに誰が私に触れていいと言ったの!」


その言葉と同時にオリジンの拳が横腹にヒットし、トゥルニクスはくの字に曲がって飛んで行った。


「これは仮の姿だって言ってるでしょ。」


しかし、トゥルニクスを見ればとても嬉しそうにその場に膝を付き、何かの余韻に浸っている。

それを見てオリジンもデーモンも蔑んだ目を向けた。


「オリジンよ、我の過ちに気付かせてくれた事に感謝する。私は他の候補の下へと行かせてもらう。この者が候補に挙がる事は今後も永遠に無いであろう。」

「そうしてちょうだい。」

「フ、フフッこの良さが分からないとは愚かな事だ。」

「お前とはとことん意見が合わんようだ。我が次に現れる事があれば命を覚悟しろ。さらばだ!」


そう言ってデーモンは背中のマントを翻すと姿を消して行った。

ちなみに彼は魔王選定の資格を持つ者。

すなわち最上位デーモンである。

通常ここまで穏便に話は進まないがそれも全てオリジンのおかげであった。

デーモン、天使、精霊と形は違えど世界の安定のために存在する者達だ。

無駄と分かっている諍いは滅多に起さない。

特に今回は互いに最上位の存在同士の話し合いだったので特に穏便に解決に至った。

その原因の一つがトゥルニクスの性癖であると知る者は極少数である。


デーモンが去った後、オリジンはトゥルニクスに話しかけた。


「あなたは今日の事を何処まで覚えてるの?」

「オリジン様が私の所へ夜這いに来た以前の記憶はありませんね。覚えていても全て吹き飛んでしまいました。」


どうやら彼の病気は予想以上に重傷であるようだ。

オリジンは別の意味で世界を救ったのかもしれない。


「それは置いておいて。それなら今日の事を説明してあげるわ。」

「置いておくのですね。私としては愛の告白だったのですが。」

「・・・それでは説明するわ。」


オリジンはトゥルニクスの言葉をサラリと流すと一秒でも早くこの場を立ち去る為に説明を始めた。

第一王子と第一王女が結託しアリシアを殺そうとしたところから始まり二人の死亡や王家と精霊王たちの契約が切れた事。

しかし、試練さえ受ければ契約は可能な事。

アリシアがユウと言う名の男の下に嫁に行った事。

そしてそれらを聞いてトゥルニクスが一番反応したのはアリシアの嫁入りだった。

アリシアは母親にとても良く似ている。

そのためトゥルニクスは溺愛していたのだが、それが突然嫁に出ると告げられ黙っている様では変態・・・、いや、父親ではない。


その顔を見てオリジンは呆れた表情を浮かべて溜息を吐くと今度こそ消えていった。

そして彼は即座に行動を起こし始める。

それはもう、権力をフル活用する勢いで動き回り、その日の昼前には王都を飛び出した。


そして現在へと時は戻る。




俺が眠りに付いたのは夕方だった。

そして今、目が覚めたのはそれから2時間後の事だ。

この体はスキルとレベルのおかげであっという間に体力が回復する。

しかも昨日習得した精神耐性のおかげで短時間の睡眠で精神的な疲れも吹き飛ぶようだ。


「・・・。俺は疲れたから寝るのではなく、単純に寝るのが好きなんだが。」


物語の主人公たちによっては寝る時間がもったいないとか、寝なくても大丈夫だから行動する者もいるが俺にはそれが理解できそうもない

睡眠は正義だ。

別に現実が辛い訳ではないが眠る時の幸福感には抗いがたいものがある。

しかし、今の俺は短時間の睡眠で疲れが回復し、まるで12時間以上眠って気分爽快に目が覚めた時の心境だ。

これで寝なおそうとしても目が冴えていてなかなか寝付けそうにない。

無理やり寝る事は可能だがそれは俺のポリシーに反する。

しかもそんな寝方をした時に限って悪夢にうなされるに決まっていた。


仕方なく俺は起き上がるとベットから抜け出し状況を確認する。

どうやらライラ達は揃って宴会に出かけた様だ。

マップには彼女たちがギルド前で固まっているのが映し出されている。

外はまだ危険かもしれないがアキトや総理も傍に居るので心配ないだろう。

ヘザーはギルド内にいるのでおそらくはこの町にいる間に色々と交渉や今後の話をしているようだ。

一応目で見て確認してみたがスタッフはヘザーに言い寄られてタジタジになっている。

昨日見た美人な姿なら嬉しいだろうが今の彼女は老婆の姿なので彼も大変だよう。


そして俺は窓を開けると床を蹴ってそのまま空に飛び上った。

その瞬間、そう言えば昔に空を飛ぶ夢をよく見た事を思い出す。

しかし、その時は最後には墜落して終わり、痛みと共によく目を覚ましたものだと笑いが零れる。


(・・・落ちないよな。)


不意に思い出した昔の記憶に今の現実が急に不安になってくる。

そしてマップを拡大すると更なる不安がこの町に向かって来ていた。

そこに表示されている名はこの国の国王トゥルニクス。

20名ほどの部下を連れているがその内の13名には名前がある。

恐らくは来た方向と状況から暗部の連中だろう。


「オリジンの言葉を無視してお礼参りにでも来たか?」


すると空を飛んでいた俺の横から突然声が聞こえた。


「それはないわよ。」


俺は不意を突かれ驚き、視線をそちらに向けるとその存在を探した。

するとそこには昨夜に再会したオリジンの姿がある。

そしてもう一度マップを確認するがオリジンの反応はない。

さすが精霊の母と言うだけあり補足するだけでも一筋縄ではいかないようだ。


「それじゃあ、何しに来たんだ?昨夜の様子からまともな人間には見えなかったぞ。」

「まあ、それは今から説明するわ。アリシアの所にはシルフィーを説明に行かせてるから。」


それならと俺はその場で滞空するとオリジンから説明を聞いた。

結果だけ見れば俺は命拾いしたのかもしれない。

あの時の段階で最上位のデーモンと戦って勝てる可能性は低いだろう。


「それなら何で暗部の者を引き連れているんだ?」

「それは分からないわね。でもあの男はあれで王で父親だから少しは何か考えてるのよ。馬鹿なこと言ったら私が沈めてあげるから大丈夫よ。」


(今、鎮めるじゃなくて沈めるって言ったよね。何処に沈められるのだろうか。)


そして俺達は沸き上がる人々の上を飛び越えてギルド前に降り立った。

すると丁度トゥルニクスも馬に乗ってその姿を現しさっそうと地面へと飛び降りる。

しかし、その馬は通常の馬ではない。

足も8本あり体もとても大きい。

種族はスレイプニールと言う名前の様だ。


そしてトゥルニクスは馬から下りるとアリシアに駆け寄って行った。

その後ろに少し距離を置いて20人のエルフが並んでいるが13人の男にはやはり見覚えがある。

やはり暗部の者達の様だがその横の7人の女性は何だろうか。

護衛と言うよりもメイドか給仕のように見える。


そして視線を向けていると彼女達から一斉に威圧が飛んで来る。

俺は耐性があるので問題ないが後ろにいる数十人が巻き添えに会い、失神してしまった。

それなりに高レベルの威圧の様だが冒険者ギルドと言い、こちらでは威圧が本当に挨拶なのだろうか。

そう考えて俺も彼女達に威圧を放った。

全力にすると気絶させそうなので手加減してレベル7程度だ。

これなら丁度相殺できるだろう。

そして俺が威圧を放って相殺した事に気付いたのか彼女達からの威圧がゆっくりと弱まって行く。

それに合わせ俺も互いに突き付けた得物を下ろす様に威圧を下げると彼女たちは笑顔を浮かべた。


(問題なく挨拶は終了したようだな。)


そして威圧が無くなると彼女たちは俺に一礼し、再び澄ました顔で姿勢を正した。

その横では俺達のやり取りを見ていた13人の暗部の男が額から汗を流し体を震わせている。


(まあ、強力な威圧だったけど範囲の指定が甘くてかなり周りにも漏れていたからな。影響を受けてしまったのだろうな。)


しかし、総理の威圧は俺のよりも強力だ。

そう考えると俺もまだまだと言う事だろう。

そして俺達のやり取りを見てトゥルニクスは「チッ」と小さく舌打ちした。


(あれ、今のって挨拶じゃなかったのか?)


するとトゥルニクスは何も無かったかのようにアリシアに顔を向け笑顔で話しかけた。


「私の事情はもう知ってるのかなアリシア。」

「はい、優しいお父様が豹変されていたのには理由があったのですね。気付けずに申し訳ありません。」


そう言ってアリシアは申し訳なさそうに表情を曇らせ顔を俯ける。

そんなアリシアにトゥルニクスは笑顔を浮かべその肩に手を置いた。


「気にすることは無い。私もお前もこうして無事だ。お前の兄と姉は残念だったがあの二人には自業自得な面も多い。お前が気にする事ではないよ。それよりもだ。」


トゥルニクスはアリシアに優しく声を掛けると後ろに振り向きそこに居る者達に視線を移した。

そしてまずはメイド達に視線を向けると笑顔で彼女達の紹介を始める。


「彼女達をアリシアに与える事にした。あの7人は私に仕えていた一流のメイド達だ。きっとあちらでも役に立つだろう。お前も王位を放棄したと言っても王族には変わりない。身の回りの世話をする者が必要だろう。」


そして今度は男達に視線を移す。

しかし、その顔には先ほどまでの笑顔は消え真剣な顔に変わっていた。


「それとあの者達は暗部の者らしいね。。君の温情に免じて死刑にはしないけど代わりの罰を与えた。」

「あの、どういった罰ですか?」

「条件付きで君の護衛に付けて国外追放にしたんだ。彼らはアリシアがこの地に戻っている時はこの国に滞在できる。そして、その期限も100年としたからエルフなら問題ないだろう。もし君が要らないというなら仕方ないから処刑するよ。」


するとアリシアは困った顔で俺に視線を向けて来る。

いきなり来てこんな事を言われても普通は困るだろう。

俺達も別に豪邸に住んでいる訳ではないのでこんなに来られても困る。


(ここは男を見せる時かな。)


「それなら俺が面倒を見ましょう。」


そう言って俺はアリシアの横に立つとトゥルニクスは鋭い目を向けて来る。


「一般人の君に彼らが従うかな?」

「ん?何言ってるか分からないが従わせる必要はないぞ。」


俺はそう言って剣を抜いた。

既に何人も殺している。

13人の首の無い死体が増えても問題ないだろう。

それを見てトゥルニクスの顔に焦りが生まれ始め俺はニヤリと笑った。


要は何かに理由を付けて俺とアリシアに監視を付けたかったのだろう。

家はメイドに見させ外は暗部の人間に見張らせる。

恐らくはそんな所だ。

その為にはここでこの男達が殺されるのは奴にとって都合が悪いはずだ。

まあ、まさか俺が即座に殺す決断をするとは予想もしてなかったのだろうが。


すると俺の後ろからクツクツと笑い声が聞こえて来た。

そしてその相手は前に出ると俺の横に立ちこちらへと笑顔を向けて来る。

だが、その目には僅かだが狂気が宿り、明らかに酒を飲んでいるのが分かる。


「お主も言う様になったな。しかし、そんな修羅の様な決断はまだ早い。もう少し周りを頼る事を覚えなさい。」


そう言って総理は真面目な顔になりトゥルニクスに視線を向けた。


「あなたは?」

「この者達が住まう国の代表じゃよ。そ奴らは儂が引き取ろう。文句はないな。」

「な、何を勝手な事を・・・。」


しかし、トゥルニクスの言葉は途中で止められた。

総理から威圧が放たれ強制的に喋れなくなったのだ。

しかし、彼も対抗して王としての威信を胸に威圧を込める。

そして互いに高まる威圧の嵐。

だが、ある所でトゥルニクスの威圧の増加は限界に達して止まった。

しかし、総理の威圧は更に高まり、それを見ていた周囲の人が一斉に逃げ出した。

それでも総理は更に威圧を強め続ける。


(一体どれだけの力を隠し持ってるんだ・・・。)


すると総理は威圧の範囲を絞りトゥルニクス個人へと標的を変えた。

これだけの威圧に至近距離で耐えている姿を見れば群衆の中に奴を悪く言う者もあらわれないだろう。

そして、総理は静かにもう一度問いかけた。


「文句はないな?」

「わ、分かった。それで・・・良い。」


そして総理の威圧が収まり辺りに静寂が訪れた。

しかし彼は悪い笑顔を浮かべトゥルニクスの耳元で言葉を囁く。


「儂も気になる事があるからな。数名は奴らにつかせるつもりじゃ。そいつらが自由な時間に誰に何を連絡しようと儂は関知せん。儂らの国は人の権利を尊重する国じゃからな。」


すると今度はトゥルニクスが悪い笑顔を浮かべ額に浮いた汗をぬぐった。

そして二人は固い握手を交わし頷き合って手を離した。


これでは悪代官と越後屋ではなく、悪代官ペアーだ。

さすがにこれは黄門様もビックリだろうな。

いや、威圧をくらってポックリ逝きそうだ。

それにしてもやっぱりこの国では威圧が挨拶なのか。


そしてこの会話は二人だけの間で交わされ周りに知る者はいない。

その後、彼ら暗部から結界石が購入可能であると知ったトゥルニクスは日本の大口顧客になるがそれはもう少し先の話である。

ちなみに後ろに控えているメイドさんで一人を残し全て総理に付いて行ったのもまた別の話である。

彼女達は真に仕えるべき主を見つけたのだろう。

そして時間が経つにつれ逃げて行った人や気を失った人も参加した大宴会が再開された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ