55 暗部壊滅
ユウが宿を飛び出したのと同じように、アキトと総理も夜の闇の中を走っている。
しかし、アキトが全力で走ってもユウには追いつけず、その距離はひらく一方であった。
その横にはなぜか並走する総理の姿がある。
彼のレベルでは到底追いつけるとは思えない速度で走っているのに総理は眉一つ動かさず平然と付いて来ていた。
アキトはそれが理解できず難しい顔で総理に視線を向ける。
すると総理は苦笑を浮かべて声を掛けた。
「アキトよ。お前は昔から頭が固く、感情よりも理論が優先する男じゃったな。」
「それが何か問題でもありますか?」
「それが今のお前とユウの違いじゃよ。奴は理論よりも感情が優先しておる。走り出したら止まらん鉄砲玉の様な男よ。じゃが今の世界は感情も力に変える。儂は先日使ったスサノオでそれを実感した。お主が急成長している理由は知らんが今のままではユウには追い付けん。」
それを聞きアキトは走りながらも歯を食い縛った。
それは別に妬ましい訳でも悔しい訳でもない。
ただ、アキトはユウのストッパーとしての役割を担うと決めてこの力を手に入れた。
それが叶わないと感じた時、アキトの信念がグラついてしまったのだ。
「なら・・・。なら、どうしろというのですか。俺にはこの思考を変える事は出来ません。全てをユウに押し付け安納と表向きだけの護衛をしろと。そんな事はごめんだ。」
すると総理は軽く笑うと言葉を返した。
「別に変る必要はない。儂はお主の考えも好ましく思っておる。じゃが可能性を絞るのは止めよ。おそらく、お前には心を許せる相手、大事な者が少な過ぎる。本気で命を賭けてでも助けたい者を増やすのじゃ。そうすればスキルが自然と答えてくれる。」
この頃のユウは既に時速200km/hの壁を越えていた。
その為アキトの視界からはすでに消えており肉眼で捉える事も出来なくなっている。
それを見てアキトは今までの自分を捨てるのではなく少しだけ変えて行こうと決意した。
ちなみにアキトとユウのスキルに違いなど存在しない。
あえて言えばスキルが進化しているかしていないかの違いがあるがもとよりユウは死線を潜り抜けてスキルの進化を果たしている。
それに比べ常に論理的に行動するアキトは安全マージンを残して戦闘をしていた。
その僅かだが大きな違いが今の差へとつながっている
現にユウはポイントを使わない成長力促進の能力を自然と引き出した進歩が目立つ。
しかし、アキトはそれがあまりなかった。
ユウは夢の世界で、アキトが苦しむ中でも放置したがあれが彼にとって今までで最大のスキルアップだったほどだ。
すなわち、彼はライラが以前言っていた勇者の火事場の馬鹿力を全く使っておらず成長力促進の真の効果を発揮できていなかった
そして今のアキトと総理の会話は奇しくもそれに準じる内容と言える。
しかし、急に変われと言われて変われる人間は世界中探してもそう居るものではない。
そんな者が居ればさぞどちらの世界でも生きにくい事だろう。
そして、アキトはユウが到着して90分後に王都への到着を果たした。
その頃には戦闘は終わり城も静かになっていた。
俺はフレアと並び目の前に並ぶ30人の敵を睨みつけていた。
そして、その後ろではアリシアとシルフィーがそれを見守っている。
シルフィーは特に彼らへの恨みが無いのもあるがアリシアの護衛としてその位置についている。
無いとは思うが敵の攻撃よりも仲間、特にフレアからの流れ弾が危険だからだ。
もし彼女の攻撃が当たろう物なら、その時点で灰すら残さず消えてしまう。
シルフィーには攻撃を受けきる自信は無いがその攻撃を逸らす事は出来る。
それ程までにフレアが精霊王の中で攻撃特化と言われるのは伊達ではないようだ
肝心の俺はと言えば今は剣ではなく拳を構えている。
何故なら俺も昔は周りと馬が合わずによくケンカをして殴り合っていたからだ。
だからスキルを得てすぐの頃は剣よりも拳の方が得意で今でも本気で怒りを感じるとこうして相手を殴りたくなる。
しかし、ここまで大事な家族を危険な目に合わされたのは初めての経験だ。
「先に言っておくが俺は平和主義者だ。だからこんなに怒りを覚えた事は今までの人生では一度もない。だからここまで他人を殴りたいと思った事も初めてだ。」
『鉄拳を習得しました。』
(お!よさげなスキルを獲得したな。)
鉄拳とは肉弾戦の時に効果を発揮するスキルだ。
拳と出ているが蹴り技にも使え接触面を鉄の様に硬くしてくれる。
今の俺なら身体強化・改と合わせて、ここの敵が持つ剣程度なら素手で折る事も出来るだろう。
そして敵の男達も覚悟を決めたのか俺達を半包囲する様に囲み始めた。
アリシアは壁際を背にしているので後ろからの攻撃の心配はない。
いざとなれば全力で守れば間に合うだろう。
そして一人の男が剣を掲げ「行けーーー!」と声を上げた。
その瞬間、フレイには5人が襲い掛かり俺には10人が襲い掛かって来る。
恐らくは俺から始末しようというのだろう。
剣を持つ物3人、槍がその後ろから3人、残り4人が俺に向け火の魔法を放ってくる。
4属性の中で最も殺傷能力が高い火の魔法を放つのは初手としては間違いでないだろう。
目くらましにもなるしダメージも期待できる。
しかし、俺にとってそれは悪手だ。
俺は拳を振るい向かって来る魔法を全て打ち砕いた。
今の俺は魔装も纏っていないがその拳に微かな火傷の後も無い。
スキルの重複発動により敵の炎は俺にダメージを与えられる威力ではなかった様だ。
そして、目の前から炎が消え驚愕している剣を持つ3人に俺は瞬動で間合いへと入る。
そのまま一人を拳で殴り、体を捻って次の相手には回転を利用した回し蹴りを、3人目には更に飛び上って踵落としを決めた。
すると殴った男はその部分にボッコリと穴を開け、蹴りをくらわせた二人は折れ曲がって壁や床で血の華を咲かせた。
続いて襲ってきた槍持ちの3人は魔刃を腕に纏うとその槍を斬り飛ばし、その間合いに入り首を胴から切り離した。
その瞬間、首から血が噴き出すが俺はバックステップでそれを交わし、魔法を放って来た4人へはカマイタチを大量に放った。
するとその体はコンニャクの様に呆気なく切り裂かれバラバラになって地面へと崩れていく。
流石にここまで来ると少し気持ち悪くなりそうだが、どうやら精神耐性が働いたらしくすぐに落ち着きを取り戻して来た。
これは不要な時はオフにしておいた方がよさそうだ。
感情の起伏は人間にとっては大事な事なので日頃は辛くてもスキルに頼るのはやめよう。
『了解しました。平時の際にはこのスキルは効果を消しておきます。』
またか。
それにしてもこの声の主は誰なのだろうか?
こいつのおかげで間に合わせる事は出来たが正体が全く分からない。
この騒動が終わって落ち着いて、会話が可能なら話をしてみよう。
その時までこのままである保証はないけど。
そして俺が10人を始末するよりも早くフレアは5人を跡形もなく燃やしていた。
どうも魔法の炎は通常の炎と違い酸素を消費しないようだ。
5人もの人間を燃やし尽くす程の炎を生み出して攻撃しているのに全く息苦しくない。
酸欠を心配したがこれなら問題なさそうだ。
そう言えば以前、初めてホブゴブリンを倒した時もライラは炎の壁で敵を足止めしていた。
あの時も少し不思議に思ったが気にする余裕が無かったので確認をしていない。
今度、検証してもらう必要がありそうだ。
そして残りの敵は15人。
厳密にはセドリアスは含まれないので14人か。
すると残り14人は一カ所に集まると呪文を唱え始めた。
それと同時にアリシアから声が飛んでくる。
「気を付けてください。あれは合同魔法のフレア・バーストです!おそらく私ごとこの部屋を火の海にするつもりです!」
しかし、そうなると術者はどうするにだろうか?
奴等は相打ち狙いか?
「術者はどうなるんだ?」
「術者は魔法の結界で守られます。炎に巻かれる事はありません。」
しかし、そうなると待つ必要性は無いだろう。
先に奴等を倒せば終わりだ。
しかし、思いのほか奴らの詠唱は早い。
まるでテレビで見た早口言葉大会の様だ。
そして、あっと言う間に詠唱は終わり魔力が集まっていく。
状態を見るに後は放つだけなのだろう。
その証拠に一番後ろで見ているセドリアスは笑みを深め俺達を見下すような視線を向けている。
すると突然、横から力強く引っ張られたかと思うと頬に柔らかく熱いモノが触れた。
『火の精霊王の寵愛を受けました。それにより熱耐性が熱無効に進化しました。スキルが無効に進化したためレベルはありません。』
俺は急な出来事に驚きそちらに顔を向けるとそこには笑顔のフレアが立っていた。
そしてそのまま力いっぱいに背を押されてしまい敵に向かいたたらを踏んだ。
「死ね!フレア・バースト!」
その瞬間、フレアは炎の結界を張り俺は魔法の炎の直撃を受けた。
どうやら俺は漢探知、もとい、漢盾にされたようだ。
それにしても、それなら最初から言って欲しい。
一瞬見えたアリシアの頬がお多福さんの様に膨らんでいたのが目に入った。
恐らく原因はフレアが俺の頬にキスしたからだろう。
後で何を言われるかがとても心配だ。
そして俺は炎の中でまったくダメージを受けていない。
咄嗟に魔装で体を覆たが服すら燃えていなかった。
どうやら魔装の外殻も無効の対象内に含まれているらしい。
俺は普通に歩いて敵の前まで行くと結界に拳を叩きつけた。
どうやらこの結界は熱を防ぐための物の様で衝撃には弱いみたいで拳の一撃を受けた部分に『ピシリ』と罅が入る。
それと同時に中から悲鳴が上がり炎が消えていった。
どうやらこの炎を出し続ける為には魔力を使い続けなければならないようだ。
結界が損傷したので慌てて魔力の供給を止めたのだろう。
そして次第に弱まっていく炎は最後には消え去り結界も消えていった。
するとそこには13人の暗部の男が残されている。
「た、頼む、助けてくれ!俺達にはもう戦う意思はない!」
「戦う意志か?でもお前たちは戦う意思のない。ただ帰って来たアリシアに攻撃を加えたよな。それについてどう思ってるのかな?もしかしてそれは自分たちとは関係が無いと思ってるのか?」
すると彼らは一斉に黙り込み声を出す者は居なくなった。
しかし、今度は俺の後ろから話しかける者が現れる。
「ユウさん。その人たちの事は許せませんが戦意が無いなら捕らえて国の法律に任せましょう。私は別に無抵抗の者まで倒して欲しいとは思いません。」
そしてアリシアは前に出ると彼らに投降を促した。
優し過ぎる気もするが、それこそが彼女の魅力であり良い所だろう。
もし彼女がこの国の王女になれば沢山の人を救う事が出来るかもしれない。
「それで良いなら武器を捨てて拘束を受け入れなさい。そうすれば今は命までは取りません。どのみち私は少しすればこの国を去ります。その後どうなるかは興味がありません。」
すると全員が一斉に手の武器を捨て投降した。
俺は更に略奪スキルで相手のアイテムボックスから危険な物を発見するとそれを奪い部屋の隅に投げ捨てて行く。
しかし、意外にも危険物と呼べる物は少なく殆どが食料や宝石等の金品だった。
それに比べれば毒と解毒剤などは一人が小瓶1つ持っていれば良い方だった。
俺は食料や金品には手を付けず、それらだけ回収すると毒と解毒剤だけは俺のアイテムボックスに保管する。
毒に関しては後で何処か安全な所に廃棄する必要があるだろう。
フレアあたりが安全に焼き尽くしてくれないだろうか。
もしもの時は我らが知恵袋、ライラさんにお願いしよう。
きっと良いアイデアをお持ちのはずだ。
そして俺達が彼らを拘束していると扉の向こうから悲鳴が聞こえて来た。
「ぎゃあああーーーーー。だ、誰か助けてくれーーーー。」
これはおそらくこいつらの指揮を執っていた男の声だ。
まるで何かに襲われているような声に俺達の前にいる者たちは恐怖に顔を引き攣らせる。
「もしかしてあれってあの事件の・・・。」
「あああーーー。きっとそうだ。今助かっても俺達はどうせ死ぬんだーーー!」
男たちは恐慌状態に陥ると力なく肩を落としその場に蹲った。
そして俺は事情を聞こうと男達に声を掛ける。
「お前ら何かあったのか?」
「俺達にも分からないんだ。ただ何かが居て一人になった時に襲って来るんだ。襲われた奴は枯れ木の様になって死んでいるのを派遣されるからきっと隊長もその犠牲に・・・。」
すると今度は後ろにいたフレアが不機嫌そうに鼻息を吐いた。
どうやら男たちの知らない情報を掴んでいる様だ。
しかし佇まいは凛々しいが鼻息と同時に火が噴き出すのはどうなんだろうか。
精霊なのでないと思うが風邪や花粉症になったら大惨事が起こりそうだな。
「あなた達、気付いてないのね。誰かが呪いの便箋を使って呪いを掛けたでしょ。それが返されてあなた達全てに呪が掛かっているのよ。」
すると俺とアリシアはフレアの言葉に「「ハッ!」」とある事を思い出した。
俺達の家に届いた手紙をメノウが拾った時に彼女はこう言っていた。
『その割には手紙を最初に受け取った者に死の呪いを掛けるのですか?私だから簡単に返せましたが貴方だと死んでましたよ。』
すなわち彼女は呪いを消したのではなく陰陽師の呪詛返しの様に相手に跳ね返したのだ。
その呪いが今もこの城の中で彼らの命を狙っているということか。
しかし彼らの話からすると、隊長の声がしたと言う事は逃げた二人は別行動を取っていたのかもしれない。
どういう流れでそうなったかは分からないが、どちらかがどちらかを切り捨てて逃げたのだろう。
そうなると今はセドリアスも一人で逃げていると言う事になる。
その呪いが奴の許に届くのが先か、それともアクアが見つけるのが先か。
そう考えていると今度はセドリアスの声が聞こえて来た。
「精霊の分際で俺を殺そうなど片腹痛いわ。私の力を思い知れーーー!・・・ぎゃーーー私の魔法が・・・。なぜだ。私はこの国の支配者に・・・。」
そして、声が消えると今度は遠くから何かを引き摺る音が聞こえて来た。
ハッキリ言ってホラーな展開だが今は呪いや怪物が実在する世界だ。
男たちも恐怖に腰を抜かして床に腰を付き、出口の方から目が離せなくなっている。
『ズズー・・・ズズー・・・ズズー・・・』
しかし俺達の方は何が起きたのか予想が付いているのであまり怖くない。
別に強がっている訳では無いがちょっと後ろに下がってアリシアの傍に移動した
(うん、怖くない。しばらくトイレに行っていないのでそろそろトイレに行きたいだけだ。決して怖くてトイレが近くなったわけではない。)
そして、出口の淵に白魚の様に白く綺麗な手が現れた。
それは決して仄暗い所から現れた手ではなく、清らかな水の乙女の手だ。
・・・きっと。
そして現れたのはやはりアクアだった。
彼女は片手に溺れた姿のセドリアスを持って引き摺っている。
どうやら彼女は復讐を果たしたが殺すまではしなかった様だ。
その証拠に苦しそうだがまだ息はしている。
そして、俺は先ほどの気配から呪いの存在を感知していた。
呪いは何故か上に向かい移動している。
そして何処かの部屋に到着するとその気配を増大させた。
それと同時に俺のマップから光点が一つ消える。
恐らくこの瞬間に誰かが死んだのだろう。
そして呪いは再び地下に戻り俺達の近くに、そう出入り口の傍に停止している。
するとアクアはセドリアスを一瞥するとそれを通路の先に投げ捨てた。
その途端、呪いは動き出してセドリアスに襲い掛かるとその体を覆い尽くす。
俺はそれを部屋の中からそっと覗こうとしたが後ろから来たフレアに肩を掴まれ止められてしまった。
「呪いを貰うかもしれないから見ない方が良いわ。」
「俺には呪い耐性があるが?」
「あれは周りも巻き込むタイプよ。あなただけならともかく、大事な人が傍に居るでしょ。」
そう言われると弱い所だ。
俺を含め数人は大丈夫だがアヤネやアリシア辺りはかなり心配だ。
俺はフレアの言葉に頷いて部屋の出口から離れた。
すると彼女は部屋から手だけを出すとセドリアスに向かい巨大な火炎を放った。
それはセドリアスごと通路を埋め尽くし、呪いは燃え尽きたのか気配は消え去ってしまう。
どうやらもうこの城に呪は存在しないようで生き残ったこの13人も大丈夫だろう。
再び何者かの激しい怒りをかわない限りは。
そして今度こそ部屋を出て通路の先を見るとそこには何も見当たらなかった。
恐らく襲われた時点でセドリアスはミイラにされてしまったのだろう。
それが先程の炎によって綺麗に燃え尽きた様だ。
後で上の被害者も確認しなければならないだろうな。
するとアクアはフレアの隣に移動し声を掛けた。
「助かったわ。あの呪いは私とは相性が悪かったから。」
「知っていました。最初ここに召喚された時に気付きましたから。あれは過去の魔王、カオスエントの残滓。あなたとは相性が悪過ぎます。逆に私とは相性はとても良いのでちょうど良い餌があってよかったわ。」
どうやらセドリアスを生かしていたのは呪いを消滅させるための生餌に使う為だった様だ。
その見た目とは裏腹に怒らせると怖そうだな。
今後もなるべく怒らせない様に気を付けよう。
そして、とりあえず事件は解決したはずだ。
俺は名探偵ではないので真実は分からないし他に黒幕が居るのかもわからない。
しかし、これでアリシアの危機は一旦去ったと見て良いだろう。
すると再び俺の頭に声が届いた。
『予知か推理のスキルを取りますか。Yes/No』
(Noで。今はそれほど切迫していない。)
『了解しました。』
俺は大きな溜息をつくとアリシアに視線を向けた。
すると彼女はトコトコ俺に駆け寄り首に飛び付くと左の頬に軽いキスをする。
「フレアだけ狡いので私もです。」
どうやらさっきの事は忘れていなかった様だ。
俺は苦笑を浮かべてアリシアを見るとお返しに頬にキスをし返す。
するとアリシアの顔は真っ赤になり顔を俯けてしまった。
もしかしてアリシアはするのは良いがされるのに免疫が無いのかもしれない。
これで少しは大人しくなると良いけどな。
すると何故かアクアが俺に近寄ると再び頬にキスをされてしまった。
『水の精霊王の加護が寵愛に進化しました。』
「色々助けてくれたからお礼です。他の人には内緒ですよ。」
そう言って彼女は口に手を当てて笑顔でウインクをする。
どうやら精霊は思いのほか感情表現が豊かなようだ。
先程まで怒っていたのに今はそんな事を微塵も感じさせない。
その後、俺達は暗部の者を連れて移動を始め、部屋を出て行ったのだった。




