44 二人目の精霊王
アスカの説明が始まりここのダンジョンがどういった物なのかが分かってきた。
ここのダンジョンは50階層まであり形状は逆円錐型らしい。
すなわち下層に行くにつれて1階層ごとの面積が狭くなる。
しかし、面積が狭くなるが魔物との遭遇率もそれに比例して上がるそうだ。
そしてダンジョンには洞窟タイプとフィールドタイプがあるがここのは洞窟タイプの様だ。
洞窟タイプは別名迷宮型とも呼ばれ幾つもの分かれ道があり蟻の巣の様なダンジョンになっている。
ちなみにフィールドタイプには分岐などはなく一つの大きな部屋の何処かに次の階層へ向かう階段がある。
道に迷わない代わりに魔物に発見される可能性も高く低ランクの冒険者では低層で命を落とす可能性も大きいらしい。
そして俺達はアスカから色々とダンジョンのレクチャーを受け、夜になると食事を取った。
しかし流石に食事までは再現できなかったのかこちらの世界らしい料理が並んでいる。
それでも昨日の宿よりは遥かに美味しく、パンは柔らかくてスープもミルクとチーズを使ったシチューだった。
ただ調味料よりも具材の味を生かした落ち着いた感じなので少し物足りない感じはする。
そして俺達は密かに結界石を設置すると次は風呂へと向かった。
中に入るとそこは岩で作られた内風呂でアスカの言う通り日本の岩風呂の様だ。
それに壁に書かれている大きな風景画が何処となく銭湯を思い出させてくれる。
それに日本から急にこの世界に来てしまった彼女がこの宿の常連になったのが理解できた。
きっと一人で何も分からないこの世界に来て寂しい思いをしたのだろう。
彼女は今年で二十歳だと言うが聞いた所だと行方不明になったのは3年も前の事らしい。
まだ17歳になったばかりの女の子だった彼女にはここは僅かでも故郷を感じさせてくれる場所だったのだろう。
もしかするとここを作った先代が日本人なら自分の為だけでなく、自分の様にこちら側に飛ばされて来た者が居れば少しでも心を休められる場所を作りたかったからかもしれない。
そして俺達はアスカに言われた通りにマナーを守り、持ち込んだシャンプーやボディーソープで体を洗い風呂から出た。
ここ最近は魔法で体は綺麗にしていたが風呂には入っていなかったのでとてもスッキリ出来て良かった。
すると丁度女湯からライラ達も出て来たので廊下でバッタリ顔を合わせた。
その中にはアスカも混ざっており今までで一番嬉しそうな笑顔を浮かべている。
どうやら皆とも上手くやれているようでとても楽しそうだ。
そして話の内容はシャンプーにリンス、ボディーソープの事を話している。
しかしこの世界には魔法があるので石鹸と言う物が存在しない。
作るにしても知識が無ければ無理なのでちゃんと体を洗えたのも3年ぶりなのだろう。
ただ、せっかく女性同士で会話を楽しんでいるので俺は声を掛けずに部屋に戻った。
そして朝になると俺達は朝食を取りにギルドへと向かう。
中に入ると昨日以上に人は居るが俺達の事は既に知られているのか誰も威圧してこない。
せっかく朝の挨拶をしようと構えていたのにとても残念だ。
そして受付に向かうとトリニアが笑顔で手招きをしている。
昨日の怯えていた彼女とはえらい違いだがきっと菓子折りの効果だろう。
横に居る他の受付嬢が揃って悔しそうな目を向けているが昨日一時的にでも逃げた彼女達には諦めてもらおう。
総理はトリニアの前に行くと今日は再び何かを取り出した。
「今日も頑張るお嬢さんに飴ちゃんをあげよう。」
トリニアは「飴ちゃん?」と首を傾げるが受け取るとその袋を自分で開けて口へと放り込んだ。
どうやらパッケージから見てミルク味の様だ。
そして飴を口に入れた途端にトリニアの頬は緩み、嬉しそうに口の中でコロコロ転がし始めた。
「凄く美味しいです!」
どうやら総理は本格的にトリニアを餌付けするつもりのようだ。
もしかすると引き抜くつもりなのかもしれないが今の見た目は幼い子にお菓子をあげて連れ去ってしまう変質者みたいだ。
それに日本へ来たら美味しい甘味は沢山あるので太らないかが心配だ。
その辺はよく考えておかないと彼女には悲惨な未来が待っているだろう。
そして飴を一つ舐めながらトリニアは笑顔でギルマスを呼びに向かった。
勤務態度で怒られないかが心配だがあの笑顔に怒鳴れる者が居るとは思えない。
きっと大丈夫だろうと待っていると頭を抱えたトレスが奥から出て来た。
「一応言っておくが規律が緩むからあまり食べ物をスタッフに与えないでくれ。」
「周りはそう言っていないようだが?」
すると周りの女性スタッフから「ブーブー!」と激しいブーイングが巻き起こった。
どうやらこちらでも不満のぶつけ方は同じの様だが職場で女性を怒らせると怖い事を俺は知っている。
それに彼の懸念は既に手遅れの様で見る限りでは既に規律などない様に見える。
トレスは頭を抱えながら肩を落とすとアイテムボックスからタグを取り出した。
「このタグは何階層まで下りたかを記録する魔道具だ。それと下りた階層の魔物の魔石を人数分回収できればそれに見合うランクまで上げてやる。Aを狙うなら40階層以上の魔石を持ってきてくれ。39階層まではBランクにする。」
「それならチョイっと行って来るかの。」
総理はそう言ってタグを受け取り首に掛けると散歩にでも行く気軽さで歩き出した。
俺達もそれに続き歩き出すが周りからは若干の呆れた視線が向けられている。
そして外に出るとアスカの案内に従ってダンジョンへと向かった。
場所はこの町から5キロほど離れた場所にある草原になる。
そこには旗が立っており、その周りにはダンジョンに関する商売をする者で溢れていた。
薬に鍛冶屋、買取所に回復屋。
人材紹介屋に奴隷屋まである。
俺達はそれを横目で見ながら歩いていると一人の幼い少女がテントから出て俺達に声を掛けて来た。
その少女は腰まである艶やかな黒い髪に金色の目、120センチ程の身長に肌は白っぽい。
しかもこの寒い中でも夏に着る様な丈の短い、黒く生地の薄いワンピースを着ている。
「お兄さん、お兄さん。私はオリジン。人を買わない?」
そのオリジンと名乗る少女のあどけない顔とは裏腹に、非人道的なセリフが口から飛び出した。
俺は少女に顔を向けると目線を合わせて首を横に振って答える。
「俺達には必要ない。他を当たってくれ。」
すると少女は標的を変えたのかアリシアに歩み寄った。
それを見て困ったような表情を浮かべ俺に助けを求める等に顔を向けて来る。
「お姉さん、お姉さん。精霊王は要らない?」
そしてアリシアはオリジンの急な申し出を冗談だと思い言葉を返そうとする。
しかし、その瞬間、彼女の出て来たテントから巨大な気配が立ち上り周囲を不快な気配で満たした。
するとオリジンはそちらを向いて「あらら」と呟き困った様に口元へと手を当てる。
「せっかく封印してたのにもう解けかけてる。」
そう言って少女は再び俺の前に来ると手を取って引っ張った。
しかし、見た目は小さいのに力が強く、それ以上に逆らえない何かを感じる。
「早く来て。そうしないとあの子、死んじゃうよ。」
俺は引かれるままにテントの前に行くとオリジンは天幕を開いた。
するとそこにはボロボロの少女が一人、檻に入れられ膝を抱えて座っていた。
その姿はまるで拷問を受けた後の様で状態は昨日のアスカよりも酷い。
耳は乱雑に切り取られ髪は至る所で皮膚ごと剥されている。
唇は無く見えるはずの歯が一本も見当たらない。
体中の皮膚は所々で爛れ、体液を流している。
何故この状態で生きていられるのかと思えるほどの姿だ。
しかし、俺の目の前で少女の足元から赤い水が湧き起こりその中へと取り込まれてしまう。
そして入れられていた檻を突き破るとそのまま周囲を薙ぎ払って人の形になり立ち上がった。
俺とオリジンは素早くバックステップを踏みながら後ろへと避け、周囲に撒き散らされた赤い水を回避する。
この水は俺のスキルに反応があるので触れるのも危険と判断したからだ。
「せっかく押さえてたのに。しょうがないから後はお兄さんにお任せするね。」
そう言っているオリジンの顔には何処か余裕がある。
俺は何か知っていそうな彼女に今度は真面目に声を掛けた
「あれが何か知っているにか!?」
「言ったじゃない。水の精霊王だよ。あ、属性までは言ってなかったかな。」
「アレが水の精霊王だと。先日見た風の精霊王はもっとマシな感じだったぞ。」
「馬鹿な王族が人の命と引き換えに呪詛に組み込んじゃったんだよね。だから今の彼女は再生を司る能力が反転して即死の力を持ってるの。あの赤い水は全て犠牲になった人たちの血で出来てるんだよ。」
話している最中にも赤い水は増え続け周囲を飲み込もうとその体を大きく膨らませている。
周りに人が居なかったので死人こそ出ていないが、このままではそれも時間の問題だろう。
「どうすれば止められる!?」
「核になってる精霊石を破壊すれば解決かな。その後は君の所の天使に聞くと良いよ。こういうのは得意だろからね。それよりも早くしないと依り代にされてる女の子も死んじゃうよ。」
そう言ってオリジンは微笑みを浮かべたまま薄れる様にして消えていった。
そしてその直後に俺の傍へアリシアとメノウがやって来る。
「ユウさん。あれは水の精霊王です。信じられませんが誰かに呪を掛けられて暴走しているようです。私達王族を憎む波動が伝わってきます。」
「あそこまで強力な呪いに成長すると私とユウさん以外は危険です。他の皆には既にその事を伝えて退避してもらいました。」
「分かった。アリシアは大丈夫なのか。」
「アリシアさんは風の精霊王を召喚してもらい離れた所からサポートをお願いします。ユウさん、あの少女は何と言っていましたか?」
どうやらメノウにはオリジンに心当たりがあるようだ。
しかし、今はそれを聞いている時間はなく先ほどの言葉をメノウへと伝えた。
「分かりました。ならアリシアさんは精霊王であの水を遠くに弾き飛ばしてください。ユウさんは核が見えたらそれの破壊を。その後は私が全力でどうにかします。」
するとアリシアは強く頷くと召喚に入った。
俺はそれを守る様に前に出て水が掛からない様に盾の役目を果たす。
メノウが言う様に俺には高い呪い耐性と即死耐性があるので水が掛かったとしても耐えられるようだ。
「風の精霊王よ私の許へ!苦しむ者を救うためその力を貸しください。」
すると前回と同じくアリシアに向かい風が収束して行く。
しかし、負担は少ない様で顔色も変わらず、魔力にも余裕がありそうだ。
そして彼女の前には以前見たままの風の精霊王が現れ慌てた顔で周囲へと視線を走らせた。
「よく呼んでくれたわ!状況はどうなっているの!?」
「あの呪いの水を風で飛ばせますか!?中にある核を破壊すれば精霊を解放できますが今のままではユウさんの攻撃が届きません。」
「そっちは任せなさい!それで、この呪いはどおするつもりなの!?」
「その後はメノウが呪いの対処をしてくれるそうです。」
「あの天使の子ね。分かったわ全力で行くからアナタは下がっていなさい。」
「お願いします。」
その掛け声と共にアリシアは下がり精霊王からはカマイタチが無数に放たれ赤い人型が切り刻んで行く。
そして更に竜巻の様な横の突風を発生させると水を弾き飛ばした。
するとそこには先ほどと違い一糸纏わぬ少女の姿が現れる。
そしてその胸には赤く穢れた精霊石が心臓の様に脈動し寄生する様に張り付いていた。
「ユウさん今です!」
俺はアリシアの合図に従い聖装、縮地、天歩、立体駆動のスキルを使い一気に駆け寄りその精霊石を一刀で斬り捨てた。
すると斬られた精霊石はその場で光を失うと砕け散り少女の胸から剥がれ落ちる。
しかし、その背後では再び赤い水が集まり始め人の姿へと変わっていった。
するとメノウは光り輝く5対の翼を広げて空に飛び上ると精霊王へ手を翳した。
その途端に水の精霊王は暴れ始めるとスライムの様に形を変えながら苦しみ始める。
「憎い!私をこんなにした王族が憎い!古の契約により今まで共い生きていたというのに!どうしてこのような仕打ちを受けるの!殺す・・・殺す殺す殺す殺す殺す全て死に絶えろーーー!!」
水の精霊王は呪詛を吐きながら苦しみもがき光を止めようとメノウへと手を伸ばす。
俺はそれを剣で切り裂き、風の精霊王も協力しメノウを守り手を出させない。
しかしそれと同時にメノウの白い翼が黒く染まり始めた。
しかも、それは急速に広がり黒く染まった翼は背中から消え数を減らして行く。
そして3枚の翼を失い水の精霊王の大きさが半分になった頃に俺達の後ろで動く者が現れた。
「加勢するぞメノウ!ここまで来れば儂らでも近寄れる!」
「ここは任せてください!」
そう言って動いたのは総理とその孫のアスカだ。
二人は小太刀をそれぞれ片手に構えて突撃して行く。
「「裏の秘剣・月読!」」
すると二人は同時に同じ技を放つと水の精霊王を切り裂いた。
しかし、切り裂いたはずだが何処にも切れた跡はない。
変わりに精霊王の赤い体が次第に青くなり始め澄み切った色へと変わっていく。
効果は分からないがメノウも翼がもう一つ消えた所で精霊王は清らかな体へと戻った。
するとメノウは支えを失った様に体をグラつかせ地面へと倒れる様に落ちて来る。
俺は急いで駆け出して落下点に移動すると見た目以上に軽いメノウを両手で抱き留めた。
すると嬉しそうに頬を赤く染め片手で服を握ると柔らかく微笑みを浮かべる。
「少し力を使いすぎました。すみませんがしばらくこのままでお願いします。」
「良くやったな。今はゆっくり休んでくれ。」
するとメノウはそのまま目を閉じると服を掴んだまま寝息を立て始めた。
どうやら俺はまた彼女に大きな負担を掛けさせてしまったようだ。
俺はメノウを抱えたまま精霊王の前に行くと会話が可能かは分からないが声を掛けた。
今の彼女は水ではなく青い髪で人と同じ姿をしている。
それに風の精霊王とは普通に話が出来るので恐らく問題は無いだろう。
「大丈夫か?」
「何とかと言った所です。それと私を止めてくれてありがとうございます。おかげで世界を滅ぼさなくて済みました。あのままでは世界中の水が腐り果て、飲めなくなっていたでしょう。何かお礼をしなければなりませんね。」
そう言って下を向いていた水の精霊王は顔を上げて俺の顔を見ると驚いた様な表情を浮かべる。
しかし、それも一瞬の事で彼女の前に風の精霊王がやって来て心配そうに顔を覗き込んだ。
「大丈夫だった?」
「ええ、それにしてもあなたがいるとは驚きですが少し納得もできます。そちらがあなたの契約者ですか?」
「そうだよ。王家の血を引いてる従者。『加護』もみんなに与えたのよ。それでどうするの?」
風の精霊王は加護の部分を強調し水の精霊王に問いかけた。
お礼がどうのと言っていたのでお願いするつもりだったが、精霊王同士で知り合いの様なので交渉は任せよう。
こちらから言うと弱味に付け込んでいる様で気分があまり良くないからな。
結果としては助けてはいるが、話を整理すると彼女も犠牲者で間違い無さそうだ。
「なら私も皆さんに加護を与え、そちらの彼女とは『個人的』に契約しましょう。王家との契約は今をもって破棄します。あの様な行いをする者と血筋で契約していると碌な事になりません。」
それに水の精霊王はかなりお怒りの様だ。
しかも個人的にと強調した事で風の精霊王も反応を返した。
「なら私もそうしようかな。アリシア。」
「何ですか?」
「私の真名を教えてあげる。私はシルフィー、これからもよろしくね。」
「は、はい!」
するとアリシアとシルフィーのパスが強固になりその手の甲に菱形の形をした緑の文様が浮かんだ。
その大きさは2センチ程でまだあと4つは入りそうだ。
そして今度は水の精霊王がアリシアに近寄りその手の甲に軽く口を付けた。
するとそこに今度は青い菱形の文様が浮かび上がる。
「私はアクアです。これからよろしくお願いしますね。」
「よろしくお願いします!」
そしてアリシアの魔力が再び跳ね上がりこの大陸に来る前の何倍にもなっている。
どうやら精霊王と契約すると魔力が急激に増大するようだ。
「それとあなた達には私の加護を。」
するとアリシアのアイテムボックスから勝手に精霊石が二つ現れ光に変わる。
そしてアクアはシルフィーの加護を持つ者へと加護を与えた。
「は~・・少し疲れました。今日の所はこれで帰ります。何かあれば遠慮なく呼んでください。」
「ゆっくりお休みください。」
「そうさせてもらいます。」
そしてアクアは水が零れる様にその場から去って行った。
残ったのは足元を濡らす僅かな水だけで周囲を濡らしていた赤い水も全て消えている。
どうやら、自分の不始末として綺麗に片付けてくれたようだ。
「それなら私も帰るね。アクアを助けてくれてありがと。」
「こちらこそ助けられて良かったです。」
「フフ、アナタとは良い関係が築けそうで良かったわ。」
そしてシルフィーも軽く言葉を交わすと風に溶ける様に消えていった。
しかし、あちらの問題は解決したがここにはもう1つの問題が残っている。
俺達は後ろに倒れている少女と思われる人物の許へと向かうとその横に膝をついた。
見ればその傷は酷く今にも死にそうな程弱り切っていて手で触れるだけでも心臓が止まってしまいそうだ。
もう目も既に見えていないのか浅い呼吸の中で青い空を見上げ、ガラス玉の様に何も映していないようにみえる。
もし、ここで助けたとしても精神が、心が無事かは分からない状況だろう。
しかし、アリシアの手には既にポーションが握られているので助ける選択を選んだようだ。
そして唇も歯も無い少女の口元にポーションを流し込むと反射的に嚥下した少女はそのまま瞼を瞑り意識を手放した。
だが、心臓は次第に力強さを増していき呼吸も深く安定してきた。
きっとこれで死ぬことは無いだろうがポーションで体は治せても心までは癒せない。
もしかすると一生目覚めない可能性もあるがしばらくは様子を見るしかなさそうだ。
それにしても京都でポーションの材料になるレコベリーの種を貰えたのは本当に助かった。
ここに来るまでの村で薬草は沢山貰っているがそれだけは入っていなかったのでアスカやこの子を助けられたのはあの村の人達のおかげだ。
そして俺達は周りの状況を見回し溜息をついた。
これだけ騒いでしまい荒らしてしまったのでギルドへの説明が必要だろう。
原因の10割が俺達の責任ではないが、事情を知る当事者が俺達しか居ない。
俺はそう考えると総理にこれからの予定を相談する事にした。
「それは必要だろうな。しかし宿代だけは稼がねば帰るに帰れないだろう。付けとは言っても借金に違いはないからな。数日分は稼いでおかないとまた同じような事があった場合に対応できん。」
「それもそうですね。サッと言って戻って来ますか。」
「そうだな。」
そして俺達は宿泊費を稼ぐために少しだけダンジョンに入る事に決めた。
犠牲者が居るなら予定も違っただろうが、今のところは逃げる時にコケて怪我をした者が数人居る程度だ。
これなら放置していても自分達でどうにか出来るだろう。
即死の効果があった赤い水も全て消えているので間違って触れて犠牲者が出る心配も無い。
ただ水が広がった地面には草が1本も生えていないので周りは誰も警戒してこちらへは入って来ない。
そして同時にそれを引き起こした存在と戦った俺達にも言える事だ。
そのため誰も近付いては来ず、歩けば逃げる様に離れて行くのでダンジョンに入るのも簡単だった。
ただ出て来る頃には周りの人達も少しは冷静な判断が出来る様になっているだろう。




