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223 避難勧告 ③

夜に話を整理するとどうやら他にも来る事が分かった。

予想通りだがゲンさんとサツキさんの他にもクオーツ、ヴェリル、リリも名乗りを上げたそうだ。

ホロと違い揃って来るとの事なので明日の昼には到着するだろうとの事だ。

その後、俺達はそのまま眠りに着いたが少しして気配を感じたので飛び起きた。

するとそこにはゲンさんとサツキさんが両側からアキトを担いで何やら割れ目の中に放り込んでいる。

錯覚かと思って目を擦るがどうやら二人は本物の様だ。

以前と比べ別人の様な気配を感じるが間違いない。

そして割れ目が塞がると二人はとても良い笑顔を浮かべて俺の傍までやって来た。


「修行してきたからのう。もう足手まといにはならんぞ。」

「アキトも朝までには戻って来るでしょうから寝て待ってましょう。体の調子は良いのだけど少し疲れたわ。」


二人はそう言って地面で毛布に包まり寝始めた。

そして殆ど説明が無いまま寝息を立て始めたので余程疲れているのだろう。

俺も再び毛布に包まるとホロと一緒に眠りへと落ちて行った。

これで俺も朝になれば新たな栄養素であるホロニウムが120パーセント充填完了するだろう。

そして朝になると二人が宣言した通りアキトが戻って来る。

二人が現れた時の様に空間の割れ目から現れたアキトは別人の様に強くなっていた。

話を聞けば神に修業を付けてもらい亜神ではなく英雄という存在になったそうだ。

俺は良く分からないが納得した事にしてそのまま次の目的地に向かって行った。

既にこの辺りは国の中央も近くなってきた。


昨日は残りの村を回ったがどこも似たようなものだ。

ただ、今回はホロが居たので獣人たちは全員がホロに忠誠を捧げた。

もしかするとホロは俺よりも信者が多いかもと思ったが神気は俺よりも小さい。

今や何千という獣人から力を得ているはずなのだが。


『それは質の問題でしょう。獣人数千よりもユウさんの信者は並外れて力のある者ばかりですから。』

(質って相手によって変わるのか?)

『ええ、ユウさんを信じる者は日増しに増えています。人間もいますが霊獣と精霊達が大きいですね。特にユウさんは精霊王達のおかげで多くの信頼を得ています。それに天使からの信頼もあるので亜神から神になる日も近いでしょう。それにこれは別に力を借りているのではなく思いが力に変わっているので相手に負担はありませんから気付かない者もいるでしょうね。』


どうやら俺は既に沢山の者に支えられている様だ。

そして俺はその相手に感謝しながら進んでいると一つの町に到着した。

村は昨日で終わっているので残りは町が1つだけだ。

ここが終われば残りは神都と呼ばれる中央の町だけになる。

しかし、ここまで来ると相手も俺達の事に気付いている様だ。

町の中では兵士たちが俺達を待ち構えているのが分かる。

その中にはレベルが50以上ある者も多く天使やデーモンで強化もしている者も居る。

数は500と少ないがそれ以外にも獣人や亜人に霊獣の相手をしないといけない様だ。

そちらの数は獣人が1000に亜人が200。

霊獣が100と言ったところか。

そして、敵はどうやら籠城はせずに打って出るようだ。

まあ、俺達からすればあの程度の城壁や城門は障害にもならないので正しい判断だろう。


「打って出るみたいですよ。」

「妥当な判断じゃな。」

「でも私達の相手って残るかしら。」

「無理だと思いますよ。」


そう話しているとこちらに兵士以外の者達が向かって来る。

手に武器が持てるのでしっかりと武装している様だ。

いつかの時は子供にナイフだけ持たせていた事もあったがそれを考えれば少しはマシな判断を下せるものが指揮をしているのだろう。

しかし、彼らがこちらと町との間に到達した辺りで空から3つの白い影が姿を現した。

そして。その内の一つは体から白い輝きを放ち、それはまるで雲から差し込む日差しの様に彼らに降り注いだ。

すると彼らの首についている首輪は霞の様に消え去り自由を取り戻した。


そして残りの二つの影の1つが飛び出し雄叫びを上げた。


『止まらないでそのまま駆け抜けるのよ。』


するとホロも前に飛び出し「ワン」と一声吠える。


『ここまで走って。』


その指示に足を止めかけていた者も全員がこちらまで走り抜けて来る。

そして空に残るもう一つの影から空を割るような巨大な咆哮が放たれた。

それは一条の光の帯となり敵の兵士たちを襲う。

そして、兵士たちは盾を掲げて防ごうとするがその程度の事ではドラゴンのブレスは防ぐ事は出来ない。

彼らは何も出来ないままに塵さえも残さずに消滅した。

兵士が存在していた場所を見ると俺の・オール・エナジー・ブレスを放った後の様に巨大な穴が大地を穿っている。

そして、覗いていると穴の底からは天使やデーモンたちが飛び出して来た。

デーモンたちは再び世界に散って行き、天使たちは俺達の前まで来ると地面に降り立ちこちらを見て来る。

どうやら首輪も取れて自由になったようだ。


そして先程現れた3人も人の姿で俺の許までやって来た。


「良いタイミングだったなクオーツ。」

「今ならあの程度の呪具の解除なんて楽々よ。」


そう言ってクオーツは胸を張るが、その横では少し不満そうな者も居た。

それは霊獣たちに声を掛け行動を起こさせたりリリだ。


「私はあまり出番が無かったわ。」

「そう言うな。霊獣に言う事を聞かせるにはリリが言うしかないだろ。」


するとその横からホロも主張を始めた。


「私も頑張った。」

「まさに犬の一声だったな。」

(((それを言うなら鶴の一声だろ。)))


「私のブレスはどうでしたか?」

「俺のと似てるから驚いたぞ。でも、これって後でオリジンに怒られないかな。」

「・・・秘密にしてれば大丈夫ですよ。」

「それだと勘違いして俺が怒られそうなんだが・・・。」


しかしここはまだ精霊を救出していないので何人かにはバッチリと見ているので証言は取れるかもしれない。

ただし、無数に居ると言われる目撃者を見つける事が出来たらの話だが。

しかし、これで全員が揃った事になる。

俺はオリジンにバレない様に密かに穴の表面を塞いで偽装しながら皆に声を掛けた。


「それじゃあ解放に向かいましょうか。」

「良いのか?まだ昼間だぞ。」


確かに今までは穏便に進めるために夜などを狙ったり密かに解放していった。

しかし、今回は今までと違い兵士が待ち構えていたので町の人間も敵である俺達が来た事は知っているだろう。

奴隷などは彼らが集めてくれていたので、後はあの街で解放するのは精霊達だけだ。

素早く済ませて本命といこう。

まだここで終わりではなく、本当の敵がまだ残ているのだから。


「獣人はホロが、霊獣はリリに頼む。全員で協力して北に逃げる様に言ってくれ。」


霊獣が居れば護衛は十分に足りるのでここの連中が一番安全に避難できるだろう。

俺達は二人にここを任せて町へと向かって行った。

それに出来れば馬車などを調達しておきたい。

恐らくは奪う形になるだろうが仕方ないだろう。

しかし、俺達が町に入るとそこには予想外の光景が広がっていた。

町の中には誰も歩いておらず家の中に引き籠っている様だ。

それだけなら異常とは思わないが町の人間にまったく動きが無い。

まるで眠っているかの様でマップに反応がなければゴーストタウンの様だ。

俺達は家の中に入りそこに居た住民を見て理解した。


「これは・・・肉の塊か?」

「ユウ、よく見ろ。ちゃんと呼吸をしている。」


見ると人の形をした脂肪の塊が呼吸をしている事に気が付いた。

周りを見ると人の代わりに仕事をしているのは沢山の精霊達だ。

彼らは掃除をして体を清潔に保たせ、食事を与えている。

それを見ているとここが牧場に見えて来た。

そして思念伝達を使うと目の前の人間からは神王に対する崇拝だけが伝わって来る。

まさに彼らは完全に飼いならされた家畜と言う事だ。

俺達がもし精霊達をここから解放すれば生きる事も出来ないだろう。

しかし、それは彼らが精霊を奴隷の様に扱っても良い理由にはならない。

俺達は堕落してしまった人間よりも精霊達の自由を選び彼らを解放していった。


「ありがとうございます。」

「もう捕まるなよ。」


そして、俺達は馬車や馬をかき集めて町から出て行った。

もうこの町に人と呼べる存在は誰も居ない。


「逃げる準備は出来たか?」

「大丈夫よ。霊獣たちも協力してくれるから。そっちはどうだったの。馬車はあった?」

「ああ、でも馬が足りなかったから霊獣たちの協力は助かる。可能な限り早く北に向かってくれ。」


この町はディスニア王国と神都との間にある。

数日もあれば国境は越えられるだろう。

そして、俺達は彼らを見送り、この国で最大の町である神都へと向かった。

しかし、そこに人と呼べる者がどれだけ残っているのか。

この町の様子から考えると一般市民は全てが肉の塊になっていそうだ。

しかし、これでブルテがなぜあれほど死を恐れたのか。

そして、あんな男でも何故、信仰を集める事が出来たのかが理解できた。

この様に人形の様にしてしまった人間では世代を重ねて覚えられている事はあり得ない。

俺は先程の光景を思い出し、日本人らしく自由に俺を信仰してもらおうと決めた。

その結果、いつか俺が忘れ去られて消え去るとしてもそれはそれで満足だ。


そして、神都に到着するとそこには一人の男が立っていた。

足の先から頭の頂上までを黒い鎧に覆われ門の前で仁王立ちしている。

背には同じく黒い大剣を背負っておりその様子からコイツが四天王であろうと予想を付けた。


「お前が3人目の四天王か?」

「否。我は4人目にして最強の四天王クロテだ。キイテは現在オリジンの姉であるアティルを捕らえに向かっている。」

「何!」


俺は驚きと焦りが胸に浮かぶがホロが何か言っていた事を思い出した。

そう言えばアティルの所には沢山の神が集まっていると言っていたな。

ホロはそれ以外は言っていなかったが元々喋るのが得意ではない。

多くの事を視線やボディランゲージで伝えて来るし俺もそれである程度は分かってしまう。

しかし、今回の事はそれでは知り様がない。

それにホロはこういう事には興味がないので聞いても覚えていないだろう。

俺は途中から来ているゲンさんとサツキさんに視線を向けてみた。


「そう言えば神々が何か言っておったな。」

「そうね。なんか金ピカの神モドキを倒したとか何か。」


するとクロテの口元が歪み苦笑が零れた。


「やはり最強の私が行くべきだったか。そうすれば今頃は神王様にアティルとかいう女を献上し、オリジンを誘き寄せる餌に出来ていたであろうに。」

「お前らは何でオリジンを狙っているんだ?」

「フハハハハ。冥途の土産に教えておいてやろう。神王様は新たな体を求めている。精霊の頂点であるオリジンに自分の子を産ませ。その体を新たな肉体とするためにな。」


すなわち、神であるが人の肉体では気に入らないと言う事か。

それでオリジンを使って新たな肉体を作ろうとしていると。


「それをオリジンが望むと思うのか?精霊は認めた相手でなければ子を産まないぞ。」

「その為のアティルなのだよ。それに神の力なら、たかが精霊の意思を曲げる事など容易い事よ。精霊の母が神の母となり快楽に悶える姿が目に浮かぶわ。」

「ああ、そうだな。」


俺は意識よりも先に体が動いていた。

拳を握り鎧に包まれているその顔面に容赦のない一撃をくらわせる。

かなり上等な鎧の様だがその一撃で罅が入りクロテはそのまま100メートル程横に吹き飛んだ。


「ぐおーーー!神王様から賜った無敵の鎧に罅が。貴様人間ではないのか。」

「人間は先日止めたばかりだよっ!」


俺は転移により距離を詰めると下から拳を突き上げクロテを空へと跳ね上げる。

今回は足場が無いのでそのまま300メートルは飛んで行った。


「おのれ、人間と思って油断したわ。ここからは本気で相手してやろう。」


そう言ってクロテは背中の大剣を抜き、空中で構えを取った。

しかし、その時には俺は既に地上には居ない。

俺は更に3000メートル上空から加速しクロテの後ろから飛び蹴りを放った。


「これが必殺のイカヅチキックだーーー!」

「があああーーー!」


俺は持てる全ての打撃系のスキルを使いクロテの兜を粉砕し、その下にある顔へと全力の蹴りをくらわせた。


「あのバカ者が!全員退避だ退避。隕石が降って来るぞー!」


俺はその勢いのままに地面でクロテを踏み砕いた。

スピカが咄嗟に地面をオリハルコンに変えてくれたので威力も十分だったようだ。

流石は俺の相棒だな。


『お褒めに預かり光栄です。』


しかし、やはり頭を砕いても亜神であるクロテは死んでいない様だ。

ここまでして死なない相手は初めてだが亜神で頭を砕いて死なないならこいつよりも強いであろう神王も死なない筈。

ここは今後の為の良いデータが取れたと思っておこう。


「神炎よコイツを焼き尽くせ。」

『ファイエル!』


俺の言葉と共にスピカも声を上げた。

しかし、何かノリノリなので何かの影響でも受けたのだろうか。


『最近は艦隊戦をするスマホゲームにも嵌ってまして。』

(コイツは既に俺よりも現代ゲームに詳しそうだ・・・。)


俺は小さな溜息をつくと少しだけスッキリしたのでそのまま神都へと向かって行った。

周囲は直径50メートル程のクレーターが出来ており、遠くから仲間たちが追い掛けて来る。

背後に般若が見えるが気のせいと思って進んでいるとどうやら気のせいではなかったようだ。

ホロに足を「ガウガウ!」と噛みつかれクオーツには蹄で殴られた。

リリには反対の足に噛みつかれヴェリルにはガントレット有で重い一撃をくらう。

どの攻撃も俺にしっかりダメージが入っているので皆の成長を実感出来る。


しかし、残りの3人が問題だった。

アキトの一撃は本当に重く拳骨で俺の体は首まで地面まで沈んだ。

天歩で踏ん張らなければ恐らく数メートルは地下に沈んだだろう。

そしてゲンさんはそんな俺の顔を小太刀でチクチク刺して来る。

その顔は笑っているが後ろに龍が見えるのでかなりお怒りの様だ。


そしてサツキさんは吸血丸と血喰丸を抜くと般若の様な顔で迫って来る。

これは絶対に寸止めでは済まない雰囲気だ。


そしてやはりサツキさんは容赦なく地面スレスレに出ている肩に剣先を突き刺した。


「サツキさん。痛いんですけど。」

「フフフ、神の血はこの子達も初めてみたいで喜んでるわ。」

「あの、なんだか貧血になった時みたいな感覚が・・・。」

「大丈夫よ。頭が無くてもさっきのは生きてたでしょ。貧血では死なないわ。」


クロテは俺だけでなくサツキさんにも十分な情報を与えてしまったようだ。

そして俺は、十分な血液を二本の小太刀に吸われフラフラな状態で解放された。


「決戦の前にこれは無いでしょう。」

「お前は決戦の前に仲間を全滅させかけてたぞ。」


俺は言い返す言葉を失い仕方なく古い秘薬を取り出した。

激マズタイプの秘薬だが仕方ない。

何気にこれが一番つらいがなんとか血が戻って来たので立ち上がった。

やはり、失ったのは亜神と言えども神の血だ。

完全に回復したとは言えないが自然回復も早い様でこれなら何とか歩けそうだ。


「そ、それじゃあ行きましょうか。」


決戦前にかなりハードな一幕だが城に着くまでには回復しそうだ。

俺は皆と一緒に先ほどの衝撃で崩れた門から中に入って行った。

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