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191 スフィア再び

家に帰るとそこには知らない老婆が一人と同じく知らない女が3人。

それと以前に出会い、再会を約束したエルフのスフィアが椅子に座って美味しそうにお菓子を食べていた。

しかし、俺に気付くとスフィアは椅子から立ち上がり、笑顔を浮かべてこちらへとやって来る。

目を覚ましていたのは知っていたが、その後も元気なようで安心した。

しかし、足を止めるかと思っていたのだがそのままの勢いで俺の体に抱き付いてきた。

なんだか最近は良くある光景だがこちらの世界でもハグがちょっとした挨拶に使われる事もある。

この程度の事を気にしていると異世界側の国なんて度が出来ない。

ただ、男性からはこんな風に抱き着かれた事が無いので女性特有の挨拶なのかもしれないが・・・。


「お久しぶりです。あの時はありがとうございました。」

「ああ、スフィアの笑顔が見れて満足だよ。アキトにも挨拶はしたのか?」


あの時戦ったのは主にアキトだ。

俺はスフィアを庇っただけで他には殆ど手を出していない。

まあ、そのおかげでアキトはカエデと出会えたんだけどな。


「はい。アキトお兄ちゃんにはもうお礼を言いました。」

「そうか。それで、そこの4人は知り合いか?」


俺は今も椅子に座る4人に視線を向けてスフィアに問いかけた。

そして見れば老婆は目が見えない様で、顔には酷い傷があり両目が潰れている。

その横には3人の二十歳前後と思われる女が3人座り、先程からスフィアを睨みつけている様だ。

威圧は感じないが何がそんなに気に食わないのかが分からない。

すると老婆の横に居る一番偉そうにしている女が立ち上がった。


「スフィア!あなたは巫女としての自覚が無いの!男に抱き付いたりなんかして身が穢れたらどうするの。」


そう言えばスフィアは先見の巫女の所で修業をしていると言っていたな。

しかし、穢れるとは流石に傷つく言葉だ。

こう見えてもこまめな浄化は欠かしたことは無いんだけどな。

ある意味で、俺はこの国で一番穢れていない男だと断言できる。

それに我が家のローカル・ルールでは大声で怒鳴るのは禁則事項だ。

しかし、俺が何か言う前にスフィアは俺から手を離してその女に対して声を荒げた。


美咲ミサキさん。ユウお兄ちゃんにそんな事言わないでください。それに私は巫女にはならないと何度も言っています。巫女はあなた達がなれば良いじゃないですか。」


そして俺は初めて見るスフィアの怒った姿に目を丸くした。

スフィアは巫女の修行を頑張っているのかと思っていたが、どうやら俺の勘違いだったようだ。

何やら雲行きが怪しくなってきたので俺は老婆に声を掛けた。


「俺は部外者だから知らないんだがアンタはどう思ってるんだ?」

「私かい?まず名乗っとくけど私は時見トキミだよ。それと、この3人には巫女は任せられないね。才能は有るけど気位ばかりで覚悟が足りてない。」


確かに、見た目からそんな感じだ。

それに、もう一つ言える事はこの5人でステータスを持っているのはスフィアだけな気がする。

明確な確証はないが直感がそう告げていた。

それでもこの老婆からはゲンさんやサツキさんの様いタダ者でない気配が漂って来る。

斬りかかっても目が見えないはずなのに普通に躱された上に反撃をされそうだ。

その為か、トキミさんの言葉に一切の反論はなくミサキは悔しそうに椅子に座り直した。


「それならどうして役立たずのその3人を連れて来たんだ?」

「役立たずって何よ!予知夢を習得するのがどれだけ大変か知らないくせに!」

「確かに大変だろうな。俺も持ってるから知ってるけど。それが何か?」

「な・・・!」


俺はいつの間にか習得していたから良く知らないし、レベルも上げていないのであれ以来予知夢を見ていない。

それにあのスキルは本人にとって本当に大切なモノが危険な目に合う事を知らせてくれるスキルだ。

だから、それを見ないと言う事は今のところそれに該当する危機は無いと言う事でもある。

もしかするとレベルを上げるともっと先の未来や小さな危険でも見る事は出来るのかもしれないが、そうなると安眠出来なくなってしまう。


それに我が家に住むメンバーでトラックに轢かれる様な事態になってもで怪我をする様な者は殆ど居ない。

今日来たばかりのワカバと家から出ると弱体化する座敷童のツボミくらいだ。

しかし、ツボミは闘えるので相手が普通自動車なら余裕で躱すだろう。

それに二人とも死ぬのではなくあくまで怪我をする程度だ。

そう言う事もあり、俺の護りたい者の範囲はかなり狭い。

そのため予知夢を見る可能性は当然、低くなるという事だ。


「絶句してるところ悪いが用が無いなら帰ってくれないか。これから新しいメンバーの歓迎会やスフィアの快気祝いをしたいんだ。」


ハッキリ言ってこいつらはここにいるだけで邪魔以外の何者でもない。

スフィアも巫女になる気が無いなら彼女たちと関わる必要もないだろう。

もし、親が眠ったままならスフィアならこの家に住んでもらっても構わない。

彼女はエルフなのでアリシアと一緒に家の家庭菜園を任せても良いし、学校に通わせるのも良いだろう。

スフィア一人を安全圏までレベルを上げる程度の事なら俺達にとっては簡単な事だ。

するとミサキは椅子に腰を落とすと足の上で拳を握りしめて何やらブツブツ言い始めた。


「・・・どうして。」

「は?」

「どうして私に力が宿らないのよ!そんな何処の馬の骨とも知れない人外やあんたみたいな男に宿るのにどうして私じゃダメなの!」


ミサキはヒステリックに喚き散らし俺とスフィアを憎しみすら感じそうな程の顔で睨みつけて来た。

しかし、俺とスフィアはその程度は柳に風だ。

だが、俺の事は良いとしてスフィアに対する態度が気に入らない。

何故ならここに住んでいる者でミサキの定義である人は殆ど居ないからだ。

それにその言葉は俺の家族を侮辱しているに等しい。

つい気が高ぶって殺気を放ってもしかたない事だろう。


「ヒッ!な、何よ。本当のこ『バキ』・・・。」


しかし、言葉は途中で強制的に止められた。

別に俺達は誰も手を出していない。

スフィアも俺の横でその光景を見ているし、他の女2人は椅子に座ったまま動けずにいる。

そうなると殴ったのは唯一人。

ミサキの横に座るトキミさんしか居ない。

しかもその手は平手ではなく拳が握られ、殴られたミサキは一撃で気を失っている様だ。

見れば彼女の拳には多くの傷があり、まるで戦士のそれに近い。

そして、彼女は殴った拳で湯呑を持つとのんびりと茶を啜った。


「この子が失礼な事を言ってすまないね。」


そして、何も無かったかのように笑顔を浮かべ、迷いなく手を伸ばすと茶菓子を手にする。

まるで見えている様なその正確さに先程の暴言を忘れて感嘆と共に溜息が零れた。


「俺が殴ると首から上が無くなっていたかもしれませんから今は感謝してますよ。それで、要件は何ですか?そんなのを連れて来たって事は何か理由があるんでしょ?」

「フッ、察しの良いボウヤだね。正確にはアンタじゃなくてアンタと付き合いのあるデーモンにお願いがあるんだよ。ちょっと顔繫ぎをしてくれないかい。」


俺はすぐにゲンさんとサツキさんに視線を向け確認をとるが二人はトキミさんに何も話していないという。

そうなるとこれがこの日本を陰で動かす夢見の巫女の力の一端と言う事だ。

恐らくはまだ俺達が知らない能力を隠しているかもしれない。

それを思わせる程にこの見た目は老婆であるはずのトキミさんからは、一種の異様な気配を感じる。

そうなると俺が何を言っても無駄だろう。

この人には既に多くの事を知られていて下手をすると俺達の知らないこの先の事まで知っているかもしれない。


「メノウ、ナトメアはいつ来るんだ?」

「不定期ですが状況から考えて今日くらいに来るでしょうね。早ければそろそろ来る時間です。」


どうやら、俺が居ない間にも何度か来ている様だ。

昨夜のメールの事から考えて確実に飯が目当てだろう。

すると予想通り、リビングの扉を開けてナトメアが現れた。


「ただいま~。今日のご飯は何?」

「ここは何時からお前の家になったんだ?」

「あらユウお帰り。細かい事は気にしないで。それよりもお客さんなんて珍しいわね。それに何で一人倒れてるの?」


ナトメアは床に倒れているミサキを指差して指摘して来る。

すると他の二人もやっと動き出すと駆け寄ってミサキを介抱しはじめた。

俺はそれを無視してナトメアにトキミさんを紹介する。


「お前に用のあるトキミさんだ。おそらく予知夢関係で手を借りたいんだろう。スフィアがスキルに目覚めた経緯はお前の方が詳しいだろうから可能なら協力してやってくれ。」

「そこまで話してないのに気が利くボウヤだね。」


そう言ってトキミさんは笑うがそれくらいは今までの会話の流れで何となく分かる。

それに気付かせるためのワードも幾つか提示されていたしな。

そうじゃないと逆にこの三人を連れて来た意味が分からなくなる。

ナトメアは少し悩んだがミサキたちを見て厳しい答えを返した。


「別に良いけどその子たちだど恐らく死ぬわよ。」

「その子にできる様な事が私達に出来ないと言うの!?」

「出来ないわね。」


そしてナトメアは笑顔のままで一切の容赦なく言い捨てた。

それが更に気に障ったのか女は立ち上がるとナトメアに詰め寄っていく。

しかし、その瞬間にナトメアは人差し指で女の額に触れ目を細めた。

ちなみに俺やオリジンからすればナトメアの戦闘能力は低いが一般人が反応できる領域は軽く超えている。

そして女は一切の反応が出来ずその精神をナトメアに支配された。


「あ、ああ・・・ぎゃああーーー!」


そして数秒後には絶叫が上がり体中から体液を噴出してその場に倒れた。

既に現実に戻って来ているはずだが悲鳴は消えず、頭を抱えて悶え苦しみ最後は壁に全力で激突して自殺を図った。

俺は直前で意識を刈り取ると周りを綺麗にしてからメノウに後を任せる。


「適当に記憶を消してその辺に置いといてくれ。」

「分かりました。」


ハッキリ言ってミサキ達はスフィアの事を舐め過ぎだ。

コイツがあの時に受けた苦しみは常人の耐えられるレベルを超えている。

ステータスも無くあれに耐えられるとすれば無痛症の人間くらいだ。

それを何週間も絶望の中で味わうのだから数秒で今の様になってもおかしくない。

それよりも問題はトキミだ。

彼女ならこうなる事は分かっていたはず。

それなのに何故止めなかったんだ。


「脱落者1名だね。それで、お前はどうするね?」


するとトキミはそう言ってもう一人の女に視線を向ける。

しかし、今ので完全に心が折れてしまったのか目に涙を浮かべて首を横に振り辞退して来た。


「脱落者2名。」


どうやら、トキミが言っていたように覚悟が足りないのは本当の様だ。

後はその横で寝ているミサキに期待するしかないだろう。


俺はミサキを回復させて足で刺激を与えて意識の覚醒を促す。

コイツに対して丁寧に扱う必要はまったくない。

そして、少しするとミサキは意識を取り戻し目を開けると俺を見て飛び起きた。


「何をしてるの!?」


怪我を治して起こしてやったのに酷い言われようだ。

こんな奴が巫女の後釜で大丈夫なのだろうか。

しかし、トキミさんがそんな事を分かっていないはずはない。

今は巫女の力を信じて動くしかないだろう。

するとナトメアは容赦なくミサキとの距離を詰めるとその額に触れた。


「あ、が・・・。」

「あら、結構耐えるわね。これなら期待できそう。でも心がダメね。」


その瞬間、ナトメアはその頭を掴み笑みを深めた。

するとミサキは異常に暴れ始め、まるで軟体動物の様に関節を無視した動きを始める。


「ギャアアーーー!ゴアグレガ・・カ!」


そして、口から奇声をあげながら床を盛大に汚し始めた。

そこには糞尿の他に血や肉なども垂れ落ち、その分だけミサキの姿は変わっていく。

しかしかなり酷い光景だがここに居る者でこれを直視出来ない者は居ない。

出来れば外でしてもらいたかったが庭が汚れてしまうので同じ事だろう。


「ナトメア、家はそういう事をする所じゃないから後で綺麗にしろよ。」

「あら、ごめんなさい。久しぶりだからつい。」


そう言ってナトメアは楽しそうに笑うと視線をミサキに戻した。

するとミサキの姿は小さくなり、まるで子供に戻った様な姿になっている。

ナトメアはその体に張り付く色々な物で汚れた服を破り捨てるとまるで作品をチェックするように見回して大きく頷いて納得を示した。

ちなみに先ほど辞退した巫女は、そのあまりの光景に嘔吐して意識を失っている。

こちらも床が汚れるので気絶だけにして欲しかった。


(あれも後でナトメアに綺麗にさせよう。)

「完成ね。見てよこれ。完璧な出来よ。」


そう言って見せて来るが俺だと見ただけでは何も分からない。

分かるのは見た目が子供に戻っているくらいだ。

それはそれで凄いが何が完璧なのだろうか?


「俺には分からないから説明プリーズ。」

「もう、しょうがないわね~。」


するとナトメアはミサキを操りまずはステータスを表示させた。

俺の勘ではステータスは持っていないと思ったが勘違いだったのだろうか。


「この子には夢の中で夢魔を殺させておいたのよ。あなたもスフィアの夢の中で見たでしょ。あのスライムが人の形をして拷問してた奴。」

「ああ、あれは夢魔と言うのか。あの時は急いでいたから気付かなかった。」


あの時は本当に余裕が無かった。

攻撃が通用せず、俺もかなり背中を焼かれた。

おかげで幾つか重要なスキルを得たのは今になっては良い思い出だ。


「それにちゃんと予知夢のスキルも覚えたわよ。夢の中で時間を早送りして2ヶ月ほど掛かったけど。」


そこはさすが人を苦しめるのに長けたデーモンと言う事か。

メノウでは記憶は消せてもそこまではしない。

出来ないわけではないが彼女が言うには天使としてかなり負担が掛かるそうだ。

そんな事の為に力を使わせる必要はないのでやって貰った事は無い。

逆に今はそれによって力を得る事の出来るデーモンが居るのでそちらに任せれるのが最善だ。


「それで、なんで子供になってるんだ?」

「この娘は心が腐ってるのよね。下位のデーモンが取り付くには良いのだけどそう言う訳にはいかないでしょ。だから純粋だった頃まで戻してあげたのよ。スキルはあるのだから後は育て方だけでしょ。」


確かに、先程までのミサキに国は任せられない。

他種族に対する理解があの様に無いのでは、これからの世界では通用しないだろう。

最悪、嘘を言って鎖国とか言い出したら面倒だ。


そうなるとその影響は確実に家にもやって来る。

最悪、日本を捨てて何処かに移住する必要もあるかもしれない。

長年住んできた家も大事だが今は家族の方が大事だ。


そして、トキミさんに顔を向けると彼女は何かを美味しそうに食べていた。

何かのソテーだと思うが鑑定すると蛇肉のようだ。

しかもその横にはいつの間にか湯呑ではなくポーション瓶が3本も置いてある。

すると彼女は瞬く間に蛇肉を食べ切るとポーションを一気に飲み干した。

そして、その効果は劇的な効果をその身に与え始める。


「フッフッフ!これは良いねー。忘れていた力が戻って来るみたいだよ。」

(きっと『みたい』ではなく確実に戻っています。)


すると、まずは癒着して開かなくなっていた瞼が修復され、閉ざされていた瞳が露わになる。

そして、眼球も修復された様で次第に若返って行く姿を見て、その瞳に力が宿った。

しかし、可笑しなことにその体には女性にしては引き締まった筋肉が盛り上がり、まるでゲンさんの様だ。

手にあった傷は修復された様だがその拳はまるで男の様でとても逞しい。

そして若返った直後に拳を合わせるとまるで岩同士をぶつけた様な音が響き渡った。

どうやら彼女は巫女ではなく戦闘民族だった様だ。

するとトキミさんはニヤリと笑い俺に視線を向けてきた。


「もう一度自己紹介をしておこうかね。私の名前は神楽坂 トキミ。そこで遊び惚けてるゲンとサツキの師匠だよ。」


そして衝撃の真実を聞いて多くの者が二人に視線を向けた。

するといつも元気はつらつとしている二人に顔に珍しく疲れの色が見てとれる。

それに言っている事を否定しないとなると、今の言葉が真実で間違いなさそうだ。

しかし、もしかしてこれはやってしまったのではないだろうか。

トキミさんが神楽坂家なら、何か異能を持っているはずだ。

そして、あの二人の師匠と言う事は予知夢以外にも戦闘面でその力を発揮できるかもしれない。


(誰だ、この人を若返らせたのは!)


そして、キッチンを見れば逃げる様に動くメノウの後姿を発見した。

どうやら犯人は確定の様だがお仕置きは後回しにしておこう。

それに先程から嫌な予感がしており、何かデジャブの様な感覚が俺に逃げろと告げている。

そして、その感覚は間違ってはいなかった。


「よーし!いい感じに全盛期に戻った所でダンジョンに行くよ。」


そう言って彼女は何故か俺の肩を掴んだ。

しかし、振り解こうとするが完全に先読みされており一向に手が離れない。

力もスピードも俺の方が遥かに早いのにこうなると言う事は彼女もまた達人と言う事だろう。

もしかするとゲンさんとサツキさんよりも上かもしれない。


「どうして俺なんですか?」

「そんなの、危機が迫ってるからに決まってるだろ。次の相手は少し厄介だからねえ。このままだとアンタの大事なモノは全て蹂躙されるよ。」


俺はその瞬間に表情を変えると考えも改め抵抗を止める。

おそらく彼女は夢見の巫女として俺に大きなアドバイスをくれている。

そして、次の相手とはガストロフ帝国の事だろう。

それに調査は任せているとは言え、俺が遊んでいても良いと言う訳ではない。

ならば、今のこの時間を最大に生かせる場所に行く必要がありそうだ。


「それなら、ドワーフ王国へ行きましょう。あそこには巨大ダンジョンがあります。あそこなら伸び悩んでいるレベルも上げられるはずです。」

「そうだねえ。それなら私もついでに装備を整えようか。紹介も頼むよ。」


恐らくクラウドを紹介しろと言う事だろう。

一体、夢によりどこまで俺達の情報を持っているのやら。

無駄に説明が要らないので楽が出来るが今は気にするのを止めておこう。


俺のレベルもそろそろ本格的に上げなければいけない。

先日のオメガを倒したおかげでレベルが7上がって70まで上げる事が出来た。

経験値を分配してこれなのでかなり美味しい相手だったと言えるだろう。

一瞬、竜狩りをすればレベルアップが早まるかと考えてしまったがライラの家族を根絶やしにする訳にはいかない。

俺の心は痛まないがライラは悲しむだろう。


そして、俺は新たに家に来たメンバーにも指輪を渡しておく。

俺達のダンジョンでの殲滅速度は速いので経験値を分配しておかなければレベルアップに感覚が付いて行かない。


「リリ達にはこれを渡しておくからな。」

「これは指輪ね。何かの魔道具?」

「これを付けていれば遠くに居ても経験値が得られるんだ。」

「分かったわ。」


そう言ってリリ達は指輪をはめてその指を笑顔で眺めている。

どうやら気に入ってもくれた様で良かった。


「ユウを近くに感じられる気がする。大事にするわね。」


その後、今夜は家で休み明日から出かける事に決まった。

ミサキは意識が戻らないのでしばらくは家で預かり、他の二人の女は意識が戻ると同時に逃げる様に帰って行った。

薄情な者達だと思わないでもないがあんな経験をすれば当然かもしれない。

そして、要らない客が帰ったので明日からの予定を夕食を食べながら決める事になった。

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