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189 龍の魔王

俺がオメガの体内に侵入した時、

そこにはドゥームエネルギーが満ちていた。

そんな存在で俺が知るのはデーモンくらいだ。

しかし、もう一つ似たような存在と以前に戦った記憶がある。

それはディスニア王国で戦った魔王。

あの時は闇のブレスを真正面から受け止め、死を覚悟した経験があるのでよく覚えている。

しかし、俺にとってそれはどうでも良い事だ。

これで正当な理由を持ってコイツを殺す事が出来る。

リリの事に加えてライラの事もあり、いくら俺の堪忍袋の緒が強靭だからと言ってもさすがに限界だ。


「お前は魔王を名乗る意味を知っているな。冗談じゃあ済まないぞ。」


たとえ冗談と言っても聞こえないフリをするつもりだが、感じる気配から嘘でもそんな事は言わないだろうと確信できる。

するとオメガは体から黒いオーラを立ち昇らせながら周囲に咆哮を放ち言葉を発した。

やはり今回の魔王は以前と違い高い知能があるようだ。


「愚かで矮小な劣等種ども。我は破壊の体現者である。全ての屍の上こそ我が支配するに相応しい。貴様は我が魔王として生まれ変わった最初の贄にしてくれる。」


するとそのオーラを受けてヒイラギ達は恐怖に体を硬直させてしまった。

どうやら、この激しい重圧の中で動けるのは俺の仲間と、眷族となっているリアとリリだけの様だ。


「リア、ワカバを連れて下がれ。リリはヒイラギと他の九尾を連れて遠くに避難しろ。」

「分かったわ。ワカバは任せて。」


やはり姉としての自覚はあるのかリアは恐怖に震えて泣いているワカバを抱き上げると低空で飛翔し後方へと下がって行った。

その状況判断の良さに俺は先日の事があって良かったと胸を撫で下ろす。

あの時、サツキさんに叱られてなければ僅かな時間でも食い下がっていたかもしれない。

しかし、今の状況でその一瞬が危険に繋がる可能性もある。

手出しをさせるつもりは無いがあれなら安心して任せられるだろう。


「私はヒイラギ達を連れて逃げるわ。こちらは任せて。」


彼女は冷静に状況を把握して判断を下せる女性だ。

今回は感情が暴走してドラゴンの縄張りに入るという暴挙に出たが今なら大丈夫だろう。

少し乱暴だが口で咥えたヒイラギを背中に放り投げる様に乗せると家の壁を破壊して他の九尾達を回収して行く。

家など後で直せばいいので命と時間を最優先にしたようだ。

迷いのない良い判断だと思う。

あちらは二人に任せれば問題は無さそうだ。

後は彼女らが距離を稼ぎブレスの攻撃範囲から出るまで後ろに攻撃を通さなければ良いだけだ。


しかしこの状況だと確実にブレスは俺が防ぐ事になるだろう。

コイツも魔王ならそのブレスは受けるだけでも弱体化をする厄介な代物だ。

俺以外だと死ぬか、一撃で戦線離脱となる。

それが分かっているのかゲンさんとサツキさんも的にならない様に今は龍ではなく人の姿で剣を構えている。

しかし、今回は都合が良い事に魔王の標的は俺のようで先程から一向に視線を逸らさず睨みつけて来る。

俺の何が奴の気を引いたのか知らないがこちらとしては好都合だ

そして次の瞬間、その口からは夜よりも暗い闇色のブレスが放たれた。


「全員散開。ブレスは俺がどうにかする。隙を見て各個攻撃。ゲンさんサツキさん、後の指示は任せます。」


俺はブレスに飛び込み後の指揮は二人に任せた。

ハッキリ言って二人は熟練の戦士なので俺などよりも戦いながら明確な指示を出してくれる。

恐らく、このブレスは俺にしか防げないので今回の役目は完全な囮役だ。


俺は手を突き出すとそのブレスにドレインを使用した。


(ク、凄い力の濁流だな。コイツはドラドのブレスよりも厄介かもしれない。)


このブレスは確実に先の魔王を遥かに上回る。

しかもドゥームエネルギーの塊の為、先日の事で俺もこの力を扱えるようになっていなければかなり危なかった。

今ではツインエンジンによって純粋なエネルギーへと変換できるが、もしこれ程の呪詛の塊の様なエネルギーが地表に落ちればそこの浄化だけでもかなり苦労するだろう。


「おのれー!我がブレスを受け止めるとは生意気な。ならばこれはどうだ。」


オメガはそう叫ぶとブレスに思念の様なモノが混ざり始める。

すると俺の耳に人の悲鳴や怨嗟の声が届き始めた。

さらにそこにはある光景までが目に飛び込んでくる。

そして、その光景に集中するとそれはどうやらこいつが今まで食って来た霊獣たちの様だ。

全員がリリと同じように体を溶かされながら激痛をその身に受け、苦しみの声を上げいる。

しかし、その中から俺は幾つかの言葉を拾いそちらに耳を傾けた。


「ヒイラギ・・・幼いあなたを残して死んでしまう私を許して。」

「リリ、もう少し傍であなたの成長を見ていたかったわ。」


『上位スキル、思念伝達を習得しました。』

(思念伝達?これには意思が宿っているのか!)

『はい、この者たちはいまだにオメガの中で魂となっても囚われています。』


そして意識を向ければそこには多くの麒麟たちの姿もある。

俺は思念伝達を使いそこにクオーツの姿を送ると反応が返された。

その間にもスキルのレベルは上がり大量の思念を一度に受けている為、瞬く間にレベルは10へと上がった。


「我が群れの最後の娘。立派に成長したようだな。」

「ああ、あのお転婆だった娘がこんなに成長して。」


どうやらこいつは俺にとって倒すべき敵から仇に格上げしないといけないようだ。

それと見たところ、オメガの力の源は今までに喰って来た霊獣たちの様だ。

人間と違い遥かに強い力をもった霊獣たちの絶望はさぞ効率のいいエネルギー源だろう。

しかもいまだに奴の中で苦しみ続けているのだから、このままだと無尽蔵にエネルギーを得ている状態になる。


(まずはあの魂の解放が最優先だな。)


今も皆は俺がブレスを防いでいる間にもオメガを攻撃しているが有効打になっていないようだ。

その巨体も原因だが傷を負わせても瞬時に回復してしまっている。

恐らく奴の中にある魂たちから霊力と負のエネルギーを吸収して回復に充てているのだろう。

そしてようやくブレスが収まり始め声も遠のき始めた。

流石にこれだけの力の放出を永遠に続けられるほど、出鱈目な存在ではないらしい。


(スピカ、皆に力を貸してくれるように申請してくれ。)

『分かりました。・・・全ての者から了解を頂きました。ナトメアのみ明確な思念を受信。』

(何が届いた。)

『読み上げます。「私何も聞いてないからね!ご飯減らさないで!」だそうです。』

(ならアイツにもガストロフ帝国の調査をするように伝えておいてくれ。今回の事でキナ臭さが増した。)

『了解です。・・・送信完了。』


もし、先日聞いた商人たちの話が本当なら、奴らはデーモンを従えている可能性がある。

今回の事でナトメアが知らないのなら心当たりはあそこだけだ。

調査は身軽な者に任せるとして俺は目の前の敵に集中する。

コイツを倒さなければこの大陸が滅ぶかもしれない。

すると俺の中でスピカが何やら唱え始めた。


『我が名のもとに聖剣の能力を限定解除する。』


その途端、聖剣が光に包まれ急激に力が増大した。

そして俺の中にオリジンたちが宿り力を貸してくれた時の様に聖剣から巨大な力が流れ込んでくる。


(それにしても、そんな機能は初めて聞いたぞ。)


しかも限定解除って事は他にもまだ何らかの機能があると言う事だ。

この剣に説明書の様な物は無いのだろうか。

俺は少し困りながらもアドバイザーであるスピカに問いかけた。


「聖剣にこんな機能があったのか。」

『ありますよ。だから聖剣なんです。さあ、一緒に唱えてください。』


すると俺の頭に唱えるべき言葉が浮かび上がる。

どうやら先程習得した思念伝達の応用のようだ。

見ると何やら中二っぽくて恥ずかしいが、説明書が手元にない以上は唱えるしかないだろう。

するとゲンさん達は俺の動きに気付いた様でオメガから距離を取り始める。

それと同時に分散していた意識が再び俺に集中し咆哮と共に向かって来た。

どうやらブレスの効果が無い事に気付き肉弾戦で挑んでくる様だ。

俺はみんなが十分な距離まで離れるのを確認すると頭に浮かんだ言葉を口にする。


『「炎よ、全ての穢れを焼き尽くせ。」』


すると聖剣から炎が吹き出し、まるで生き物の様に蠢きながらオメガに襲い掛かった。


「愚かな人間め!我には炎に対する無効スキルがある。そのようなモノは通用せ・・・ギャアアーーー!」


しかし、オメガの言葉とは裏腹にその体は炎に焼かれ強靭なはずの鱗さえも焼き尽くされていく。

しかし、俺は火達磨になっているオメガを観察して首を捻った。


(あの炎って熱くないよな。)

『はい、あれは炎の形をした浄化の力ですから熱はありません。ただし、穢れの塊である魔王にとってはまさに身を焼かれる様な痛みを感じているはずです。さあ、次々行きましょう。』


しばらくすると炎は消え去り全身の鱗が殆ど剥げ落ちたオメガが姿を現した。

しかし、やはり回復に秀でているのか爛れた体が逆再生の様に回復していく。


『「水よ、その清らかなる流れで目の前の不浄を浄化せよ。」』


すると今度は空が曇りオメガの上に巨大な積乱雲が発生する。

そしてバケツをひっくり返した様な豪雨が雷と共に降り注いだ。


「グオアアーーー!なんだこの雨は!体が溶ける!」


オメガは雨を受けた所がまるで濃硫酸を浴びたかの様に煙を発生させながら溶け崩れていく。

恐らく、すでに炎でダメージを受けていたので追い打ちで大ダメージを受けたのだろう。

やはり魔王でも防御の要はあの鱗の様だ。

しかし、オメガは溶けているがやはり周囲に影響は見られない。

激しい集中豪雨で地上は洪水になり、九尾達の住んでいた町に被害は出ているがそれくらいだ。


(後で許してくれるかな・・・。)

『ユウさん、そんな事より次に行きますよ。』

(そんな事って怒られるのは俺なんだけどな。)


しかし、魔王相手に手加減していては何が起きるか分からない。

ここはスピカが言う様に次々に手を打って畳み掛けるのが一番被害を出さない方法だろう。


『「風よ、その者を地に落とせ。」』


すると、今度は雲を突き破り巨大なダウンバーストが襲い掛かる。

しかし、かなりの高空から吹き下りて来たのか空にあった雲は無数の氷柱へと変わりオメガに襲い掛かった。

しかもその体は次第に凍り付き、激しい風はその巨体を地面に叩き落し動きを封じる。


(町が壊滅したんだけど・・・。)

『魔王が相手なら些細な被害なのでは?』

(スピカはさらりと言っているがこれを見たヒイラギにどう説明すれば良いんだよ。)


こうなれば目撃者であるゲンさん達にも協力してもらい説得してもらうしかない。


『虚言のスキルをレベル10にしておきますか?Yes/No』

(本気で悩むからこういう時は止めてくれ。一応Noで頼む。)


もしもの時はレベルを上げて切り抜けよう。


『それでは次に行きますよ。』

『「大地よ、その者に逃れられぬ戒めを。」』


すると地面が隆起してオメガの体の節々を拘束する。

しかし所詮は土で拘束してもドラゴンならそこから抜け出すのは容易いなはずだ。

そう思って見ているがオメガは全く動く気配がない。

不審に思いよく見ると土に覆われているだけでその下には何やら黒光りする物が見える。

鑑定して見ると驚く事にその黒い物体はオリハルコンの塊だった。

たしかかなりの希少金属で地下深くかダンジョンの深い階層にしか無いと聞いていたが。


『希少金属は土の精霊が生み出しています。テラの力をもってすればこの程度は容易い事です。』


そう言えば以前にダイヤモンドを貰った時にも鉱物を作るのは得意だと言っていた。

あのオリハルコンは後で回収して半分はクラウドにプレゼントしておこう。

きっと喜んでくれるはずだし、武器を作ってくれるだろうから良い代金代わりになる。

まさに一石二鳥だな。


俺はダメージと拘束で動けなくなっているオメガの上に移動すると探知を使って霊獣たちの魂がどの部分に囚われているかを探した。

どうやら魂は奴の下腹部に集中している様で、俺はその近くの背中に下りるとその真上に足を付ける。

するとオメガはそれが気に食わないのか必死に動こうと体を捩り始めた。


「下等生物如きが我の背に足を付けるとは・・・。」

「黙れ!乗られるのが嫌ならこれならどうだ!」

「グホアッ!」


俺は打撃強化や鎧通しなどのスキルを使ってオメガを踏みつけた。

手加減をまったく考えずに踏みつけたので衝撃が突き抜け地面まで大きく抉ってしまう。


(今ので下からでも魂が排出されれば良かったんだがな。)

『それは彼らが可哀相ではないですか?』

(それもそうか。なら今できる方法は一つだけだな。)


打撃でダメなら斬るしかない。

聖剣のおかげでスピカとアティルを切り離した時と同様に力が振るえる。

そして以前に放ったのは全てを断ち切る破壊の力だった。

しかし、今回はそれを放つと魂の状態の霊獣たちも消滅してしまう。

なら、今回放つのはツクヨミの様に全てを浄化し、見えない呪縛から解放する技だ。

名を付ければ以前がイザナギなので今回はイザナミだろうか。


(スピカ、全力で行くぞ。)

『了解しました。オール・エナジー・エンジンをフル稼働。先ほどのオメガとシータのブレスエネルギーも使ってしまいましょう。全エネルギーをエンジンへと注入。』


これだけの力があれば十分にイザナミを放てそうだ。

それにハッキリ言えばオメガは強大な魔王ではあるが、あの時に切ったラインに比べれば小さな存在に感じる。

これなら確実にこいつを倒し、魂の解放も出来そうだ。


するとオメガは俺が何をするつもりなのかに気付いた様で先程までとは明らかに違い焦りを滲ませながら暴れ始めた。

しかも、先程までと違いその体は筋肉が再生し、力を取り戻しつつある。

拘束も軋みを上げ、今にも破壊されそうだ。

しかし、その足掻きがオメガの最後となった。


「せっかく魔王になたのに残念だったな。その体ごと全てを浄化してやる。鱗一枚、骨の欠片も残さないから安心して滅びろ。」

「クソー!こんな下等な人間などに負けてたまるかーーー!」


そしてとうとう拘束は破壊されオメガは自由を取り戻した。

しかし、それと同時に魔刃の様に延長させた白く輝く刀身でオメガを切り裂いた


「くらえ!イザナミーーー!」

「グオァーーー!!」


そして俺は飛び上って空に上がるとそこからオメガを見下ろした

するとオメガは咆哮を上げるが目立ったダメージが無い事に気が付くと俺と同じ高度まで飛び上がって来る。

そして口角をあげると嘲笑うように俺をその目に映し込んだ。


「何をしたか知らんが無駄な事だったようだな。俺には貴様の技など通用せん!」


しかしどうやらオメガは気付いてない様だが先程とは大きな違いがある。

それは奴の再生が完全に止まっている事だ。

体は殆ど回復してしまっている様だがいたる所の鱗は剥げたままでその下の肉を覗かせている。

しかも、背中を切ったので気付けないのだろうが斬撃を放った場所はいまだに光を放ち、その光は背中から次第に広がりを見せていた。

そして、その光は背中から横腹に広がり胸へと届いたところでオメガはようやくその異常に気付いたようだ。


「な、何だこれは!」


オメガはダメージを無視して自分の光る部分を爪で引っ掻いたり殴りつけたりして暴れ始める。

しかし、傷を負ってもその下の肉も光を放ち次第に体全体へと広がっている

それにどうやら痛みは無い様で苦しんでいるのも自分で自分を傷つけているからだ。

すると背中の斬撃を放った部分に変化が現れた。

光が次第に膨らみ大きな球体へと変わっていく。

そしてオメガから分離すると突然弾け、その中から霊獣の魂があふれ出した。


「貴様らは俺が喰った!おのれー戻って来い!さもなくば貴様らの家族も食い尽くすぞ!」


しかし、その声に従う者は無くオメガの周囲を丸く囲んでいく。

そしてそれぞれその身に霊力を漲らせると一斉に浄化の光を放った。


「ガアーーー!おのれ、許さんぞ貴様らーーー!」


しかし力の源を失い再生も侭ならない状態ではオメガに抗う術はない。

俺が負わせた傷も霊獣たちの攻撃と呼応するように浸食の速度を増している。

その後、光に包まれた部分が砕け始め、砂の様な粒子となって風に消え始めた。


「あ・・あああ。我が、我が消えていく。世界の王となる我が・・・この様なゴミ共に打ち砕かれるとは・・・。」


そしてオメガは最後まで傲慢な言葉を残して光となり消えていった。

あの様子ではもし助かったとしても改心する事は無かっただろう。

するとそれと同時に周りの魂たちも未練が無くなったのか自らの意思で消え始めた。

そして消える際に彼らからは「ありがとう」という感謝の思念が伝わって来る。


そして最後に二人の女性と複数の麒麟たちの魂が残った。

女性はどうやら九尾と白老虎の様でもしかするとこの二人がヒイラギとリリの親なのかもしれない。

麒麟たちはクオーツが居た群れの者達だろう。

彼らはクオーツの前まで行くとその姿に微笑んで次第にその姿を消えていく。

どうやら一目見た事で心残りが解消されたようだ。

彼らも俺に感謝の思念を伝え大きな魔石を残して消えていった。

クオーツを見ればその目からは一筋の涙が流れている。

やはり日頃は気にしないと言ってはいても仲間たちの死は別なのだろう。


(あの様子なら今夜も添い寝は確定だろうな。)


そして少しすると遠くからリリに乗ったヒイラギがやって来た。

他の者達は見当たらないので戻って来たのは二人だけなのだろう。

そして、二人は最後に残った魂の前にならび泣き出しそうな顔を向けた。


「母さん!」

「ママ・・・!」


そう言ってヒイラギとリリは手を伸ばしてそれぞれに触れようとするがその手はすり抜け触れる事も出来ない。

やはり魂となった者には触れられない様で肉体が無いため声も出す事は出来ない。

その為、口は動いているが声も出せないようだ。

すると九尾の方の魂が俺の方をじっと見詰めて来る。

そして俺が視線を向けると次にヒイラギ達が普段住んでいた家に視線を移した。


『私達の大事な家だったのですが・・・。』


そう言ってチラチラとこちらを見て来るが、どうやらかなり良い性格をしているらしい。

俺は溜息をつくとヒイラギとリリに声を掛けた。


「少し待ってろ。何か方法が無いか考えてみる。」

「・・・はい。」

「ありがとう。」


どうやらこれは最後に魔王よりも厄介な問題が残ったようだ。

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