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18 京都④

種を無事に貰うことが出来てアリシアはお礼を言うと後ろへと下がった。

すると今度はライラがこちらに来てドンと足元に結界石を取り出して置き堂々とした態度で腕を組んでみせる。

その姿は先程のジェネミーとそっくりで二人が並ぶと笑える方向で絵になりそうだ。


「良い物を貰ったからこれを代わりにあげるわ。それに等価交換って大切よね。」


すると今度は取り出された結界石を見てエルフたちが驚きに顔を染めた。

どうやら彼らにはこれが何なのか分かるようで同時にその価値も知っているようだ。


「こ、これは、百年以上前に壊れて使えなくなった結界石!まさか本物なのか!?」


そして、この口振りだと里長は100年以上生きているようで、それはエルフが見た目通りの年齢でないことが分かる。

しかし、そうなると・・・。


(それならもしかしてアリシアもかな?)


そんな事を思い視線を向けるとアリシアはその意味が正確に受け取ったようで慌てた顔を向けて来た。


「私はまだ26歳です!人から見たらそれなりの齢ですがエルフでは若輩者です。」


アリシアはまだまだ若いみたいだ。

年齢を女性に聞くのは失礼だが教えてくれたのなら問題ないだろう。

微妙にミズキとフウカの目か痛い気がするが不可抗力という奴なので気にしない事にしておこう。

そしてこうしている間にもライラ達の話は続いていて性能の説明へと移っていた。


「本物よ。私が作ってるオリジナルだけど従来の結界石よりも性能が高いはずよ。」

「前の結界石はオーククラスで1日結界が張れておった。これはどの程度の魔石が必要なのだ?」

「ゴブリンで1日よ。」


すると村長は急に空を見上げ首を回し耳を掃除して同じ質問をまたして来た。

どうやらあまりの性能の高さに聞き間違いかと思っているらしい。


「ははは、冗談がきついな。それで本当はどうなんだ?」

「だからゴブリンの魔石で1日結界が張れるわ。疑うなら試してみなさい。範囲は半径500メートルよ。」


すると村長は今度は目元を押さえて考え出した。

一体何を悩んでいるのだろうか?


「それが本当なら等価交換どころか貰いすぎだろ。俺達には払える物なんてないぞ。」


どうやらこの村長はライラの結界石を正しく評価してくれているようだ。

しかし、如何なる傷も治すことが出来る植物の種なら十分に対価になると俺は思う。

もしかして互いに簡単に手に入る物を渡しているのでそこに理解が行かないのかもしれない。


例えばの話だが観光地に行けば素晴らしい景色を見る事が出来る。

しかし、そこに住んでいる人たちにとってはいつも見ている景色なのでそれに感動を覚える事は少ない。

しかし、他から来た人は滅多に見られない美しい景色に感動を覚えるだろう。

それと同じような事が起きているのかもしれない。

俺はその例えを彼らに伝えると何処となくだが納得してくれた。


「それならこの結界石はありがたく頂いておこう。それと捕らえた者達はそちらに返そう。捕まえていても食料が減るだけで困っておったのだ。毎夜、魔物が出現する森に捨てる訳にもいかなかったからな。」

「その善意に感謝します。」


するとアキトは村長に向かって頭を下げた。

怒りの感情で動かず、捕まえた人々を丁重に扱ってくれたからだろう。

それに俺達は国際条約で捕虜は丁寧に扱い、同盟国に対しては特に寛容な対応をする。

しかし、相手は異世界の住人なのでそういう事は知らず、殺されていてもおかしくはなかった。

それを捕まえて生かすだけでなくここが何処なのかを聞き出すための拷問もせず、面倒まで見てくれていたのだからアキトの丁寧な対応にも頷ける。


そして俺達はその後、行方不明だった人たちと共に森を抜けた。

森の出口まではエルフたちが協力してくれたので後はアキトが呼んだ者達に任せよう。

今日だけで20人近く運んだので病院も救急隊員も大変だっただろうがもう少しだけ頑張ってもらいたい。


俺達は事件が解決したので旅館へと帰るとまだ大浴場が使用可能な時間だったので入らせてもらう事にした。

そして疲れを癒すためにのんびりと湯船に浸かっていると少し遅れてアキトたちもやって来た。

その顔は出る時のしかめっ面とは違い予想以上の収穫のおかげでとても満足そうだ。

ここを出る時には半数以上の生存者は諦めていたので全員が無事だった事が嬉しいのだろう。

何だかんだ言って普段は一番厳しいアキトも今回の事では口元が緩んでいる。

そして湯に浸かっているとヒムロが俺に声を掛けてきた。


「そう言えばなんか手馴れてたが、いつもあんな事をしてるのか?」

「いつもではないな。無理だと判断すれば撤退もする。俺は他人を見捨てる事に躊躇や戸惑いは無いからな。」


するとその顔には少しの呆れが見て取れるが一般人としてなら危険な行為だと言うのは分かっている。

しかしそれで助けられる命は多く、今の状況に困っている人はもっと多い。

それに無理だと判断すれば相手が助けを求めていても即座に撤退するつもりだ。

俺は何でも出来ると己惚れてはおらず、そこに大切な人や仲間の命が掛かっていれば猶更だ。


「その割にはお前の周りには人が集まってるな。あいつらも助けたんだろ。」

「みんな物好きなんだよ。ライラもアヤネも出て行っても一人で生活できるのにこうして留まってくれてる。まあライラは先日恋人になったけどな。」


するとヒムロは溜息を吐きアキトとチヒロは苦笑を浮かべた。


(俺は何か問題になる事を言っただろうか?)

「お前分かってて言ってんのか?じゃあ聞くが、もし変な奴があいつらを襲ったらどうするんだ?」

「そりゃ半殺しにして夜の町に放置するに決まってるだろ。・・・ああ、そういう事か。」


ヒムロは俺の言葉にニヤリと笑い「やっと気付いたのか。」と言って来る。


(ああ、気付いたとも。)

「一カ所に固まっていた方が安全と言う事か。これは盲点だった。確かに今は結界石を作れる人間は限られる。それにアリシアはこれからポーションの原料を栽培するなら危険は大きくなるな。すまない。俺は考えが甘かったようだ。」


しかし、ヒムロはガックリと俯き肩を震わせた。

俺は次の言葉で大事な事に気付かせてくれたヒムロに礼を言うつもりだったのだがなんだか言い難い流れが出来てしまっている。


「そうじゃねえだろこの鈍感男がーーー!」


そう言いながらヒムロは両手を前で構えると掌の間から水鉄砲を飛ばして来る。

しかも手を動かしていないのに水が飛んで来るので魔法を使っているんだろう。

かなり器用な事だがもしかすると俺よりも魔法制御が上手いかもしれない。


(そいえばこうして攻撃魔法を受けるのは初めてな気がする。)


『黒魔法耐性を習得しました。』


そう思っていると早速耐性を獲得できた。

喜べばいいのか微妙な状態だが炎に焼かれて覚えるよりはいいだろう。

後でスキルポイントを振っておこう。

今日出会ったキャタピラーですら魔法を吐くと言っていたからそろそろ必要になるだろうからな。

そして俺達は体が温まったので風呂を出て部屋へと戻って行った。


(そう言えば5人部屋だった・・・。)


するとそこには既に布団が綺麗に敷かれ、左右には女性陣が布団に入って陣取っていた。

そのため空いているのは真ん中の布団だけで俺に選択肢は残されていない。

別に嫌ではないが微妙に危険察知が働いているのはなぜだろうか・・・。

俺は仕方なく電気を消して真ん中の布団に潜り込んだ。


すると左右から少しずつ気配が近づいて来るのでこの後の展開が予想できた。

別に本人達がそうしたいなら拒む事はしないので好きにさせる。

そして俺の左右に来たのはおそらくライラとホロだろう。

昨日の事を考えると喧嘩にならないように交代したようだ。

それに彼女達はみんなそれぞれ匂いが違うのですぐに分かる。


『嗅覚強化がレベル2に上がりました。』


何故こんな事でスキルが上昇するのだろうか?

これではなんだか俺が女性の匂いで興奮する変態に思えて来る。


(いや、人間にはもともと異性のフェロモンに反応する器官が備わっているはずだ。嗅覚が強化される事でそれが強く反応しているのかもしれない。)


そして俺と手を重ねて来る彼女たちの肌はとてもスベスベした触り心地をしていた。

まるで服を殆ど着ていないような・・・。


(いやいや、そんな事はないはずだ。昨日はしっかりパジャマを着ていたじゃないか。)


そして今度は腕に柔らかい感触が伝わってくる。

そこまで近づけば俺の顔の横には彼女たちがすぐ傍に来ており吐息が聞こえる様な気がして来る。


『聴覚強化を習得しました。』


(おい、今はそんなの要らんから。)


しかし、スキルを使わなければいいのだが一度気になるとなかなか抗えない物がある。

最低限、部屋が暗いのが唯一の救いだ。


『夜目を習得しました。』

『夜目のレベルが2に上がりました。』

『夜目のレベルが3に上がりました。』

『夜目のレベルが4に上がりました。』


(ちょっと待て。いきなり上がりすぎだ。作為的すぎるのも大概にしろよ!)


そう思いながらも男の習性として一瞬!

ほんの一瞬だけ彼女達に視線を向ける。

するとそこにはパジャマではなく極薄のネグリジェを着た彼女達が寝ており視線が逸らせなくなってしまった。

しかも夜目のせいでその顔が赤くなっている所まで良く見える。


『夜目のレベルが5に上がりました。』


(そ、そろそろ視線を外して寝ないと本当にやばい。)


俺は覚悟を決めて全てのスキルを切ると目を瞑った。

ありがたい事にホロは俺の横に来るとすぐに寝息を立て始めている。

ライラも寝てはいないが諦めたようで攻めてはこない。

しかし、こんな事が何日も続けばさすがに理性の堤防が決壊しそうだ。

あと2年足らずで賢者になりそうだった俺にとってはかなりの苦行である。

以前は都市伝説というよりも冗句の部類だったが今では本当にならないだろうか?

そんな馬鹿な事を考えていると俺も眠気が再度訪れ眠りに就いた。


そして次の日の朝。

俺が目を覚ますとライラが魔法を使って布団を綺麗にしていた。

また何かやらかしたのかもしれないが周りも赤い顔をしている。

いつも通りなのは俺の足元で犬の姿で寝ているホロだけだ。

今が何度寝か分からないが腹を上に向けて足を開き、尻尾で股間だけ隠して今も寝息を立てている。

俺は今日も何も見なかった風を装って立ち上がると浴室で着替えを済ませて急いで部屋を出て行く。

あまり見ないようにはしているが昨日の夜に見たように彼女たちは今も煽情的な服のままだ。

目のやり場に困るし男が一人いても居場所がない。

そして、しばらくすると俺の所にアヤネから電話が届いた。


『もう戻って来ても大丈夫ですよ。』

「ホントだな?」

『嘘だったらキスしても良いですよ。』


俺は不安に駆られながら溜息をつくと部屋に戻る事にした。

するとそこにはいつも通りの姿で彼女たちが待っていたのでホッと胸を撫で下ろす。

今はホロも人の姿に戻ってオヤツを食べているようだ。

そして部屋に備え付けのテレビでは朝一番に昨日助けた人々の事をやっていた。

彼らは無事に目を覚まし病院で検査を受けているようだ。

しかし、行方不明になる前後の記憶はほとんどなく原因も分からず仕舞いだと言っている。


きっとマンイーターの被害者は毒に犯されていたので意識が混濁していたのだろう。

エルフの方はドライアドが何かしたのは確かだがちゃんと記憶が消えているようだ。

そうしないと日本の国民からエルフが敵視されかねない。

みんな無事に家に帰れると言っても今は通常と違う状況なので変な事を言いだして難癖を付ける者が現れるかもしれない。

そのため互いが平和的に歩み寄る為に今回の事は無かった事にするのが正解だろう。

もしかすると後になって一部の情報が洩れるかもしれないがその時はその時だ。

エルフたちは他に移住しているだろうし俺達もここにはいない。

マスコミは少し騒ぐかもしれないが結界石で既に騒がれているので今更だ。

ポーション製造が軌道に乗りさえすればエルフを無理やり排除しようとする者は誰もいなくなるだろう。


それと俺達が国会議事堂に行った時に意識を失った者の中で数名の議員が辞職している。

おそらくこれは反対勢力に対する見せしめだろう。

それを示すように今見ているニュースで政府が結界石を作り始める事が発表されている。

だが、広範囲の物はまだ作成が困難なためそちらは外注とする事が伝えられていた。

恐らく発注先はライラになるだろう。

ライラはこれから国からの依頼を受けて仕事をする事になる。

前のように稼げなくなるだろうが今は既に十分な収入を得た後なので問題はない。

それにこれで結界石を作る事の出来るライラとアヤネは国が守ってくれる立場になったはずだ。

以前の個人で売っていた時に比べれば格段に安全になった。

政府は今からスキル所持者の中から条件に合った者を選抜して育成して行くだろう。

これが軌道に乗ればステータスが更に広まり個人の安全にもつながる。

そうすれば日本国内での動きも加速してくるはずだ。

法の整備に新しい施設の追加、意識改革に産業の変化。

俺達だけでは不可能な事が国家なら出来る。

これでようやく次の動きに移れそうだ。


そう考えていると早速、昨日の飲み屋から電話が掛かって来た。

時間的に会議にはかなりの時間を使ったようだ。


「おはようございます。話は纏まりましたか?」

『ええ、それでちょっと聞きたいのだけど、今テレビでしてた外注ってあなた達の事でしょ?』

「まだ何も聞いていませんがそうでしょうね。」


すると今度は部屋をノックする者が現れた。

しかし今は手が離せないのでライラに視線を向けて扉をあけもらう。

ただ外に居たのはアキトである事は既にマップで確認済みだ。

そしてアキトの方も電話を掛けながら部屋に入って来た。

どうやらあちらも急な要件でここに来た様だ。


「少しいいか。結界石の件で総理から電話だ。」

「分かった。すみませんが少し待ってください。」

『分かりました。』


俺は女将さんに少し待ってもらい総理からの電話を優先させた。

どんな用件で掛けてきたにしても、ここで聞いておけば女将さんの疑問にも答えられるだろう。


「結界石の件ですか?」

『話が早くて助かるよ。それで集めた資料から君たちは500万で売っていたそうだね。政府はそれをどう値段設定しようかと悩んでいるのだが。』


俺はそれを聞いて総理からの用件をすぐにライラにも伝えた。

今の値段設定はゴウダさんと話した時に決めた値段が元になっている。

それに対して範囲が100メートルだと100万円と単純に割引、家が1軒分の物は個人で買いやすい様に5万円と設定してある。

それに作るのはライラなので値段を変更するなら俺が勝手に決めるよりも彼女に判断してもらった方が良いと思う。

そして電話を受け取るとライラは自分の考えを総理に伝えた。


「管理を任せて良いのなら半々でどう。税はそっち持ちで。今後値段を下げるにしてもこれなら互いに計算が楽でしょ。」


すると電話の向こうから総理の喜びの声が聞こえて来た。

どうやらあちらとしても十分に納得のいく条件だったようだ。


『それは助かるよ。良くてもこっちの取り分は2割がいい所だと思ってたからね。』

「でもちゃんと契約書を書いてね。後で何か言われるのは嫌よ。」


こうして見ていると最近のライラもかなり逞しくなってきた。

それに今のところはまだ問題が起きていないが法律系のテレビ番組を頻繁に見て影響を受けたのかもしれない。

それに最近そういう番組が多く放送されていたので日本でどんな問題が起きてトラブルに発展したのかを学ぶには丁度良かったようだ。


『当然だよ。それでも十分な利益になる。今後も良い付き合いをお願いするよ。』

「そうね。こちらもそう願ってるわ。」


これで総理との打ち合わせは終わりだ。

値段も今の所は500万で固定になったので女将にも変更なく売り込める。

ただ違いがあるとすれば遅いか早いかくらいだろう。


「女将さん。今総理と話して値段は政府が売り出しても変わらない事が決まりました。今後どうなるかは不明ですが今なら即決で買えますよ。」

『分かったわ。今日の昼にもう一度集まる事になってるからその時に皆に伝えておくわね。』


そして電話が切れたので俺達は朝食を食べに近くの京都駅に向かって行った。

時刻は朝の9時だがネットで調べると駅のホテルにあるレストランではモーニングをしている事が分かった。

俺達はそこで朝食を取り、町へとくり出した。

この位置からならまずは漬物だろうか。

自分で作れれば良いのだが漬物は作るのも管理するのも結構大変だ。

皆が食べられたら一番だが異世界から来て日の浅いライラとアリシアにはどの漬物なら食べられるか分からない。

あそこなら試食もあるし種類も多いので食べながら決められそうだ。

後はそれをキロ単位で買って定期的に食卓に出せば良いだろう。


そして中に入るとこの店独特の酸味のある匂いが鼻へと届く。

まず問題なのはこの匂いだろうか。

この世界ではこんな匂いがしても食べれる物と食べれない物がある事が知られている。

しかし、あちらではそうでないかもしれない。

普通なら酸味や刺激臭は食べられない物を示すサインの1つだからだ。


そして反応を見る限り二人は問題なさそうだ。

ここでは匂いに負けてホロの方が「クシュン」と可愛らしいクシャミをしている。

犬の鼻にこの匂いはきつかったかな。


「ホロ、辛かったら外に出ててもいいぞ。」


しかしホロは駆け出したかと思うと外には行かず俺の服に顔を埋めた。

どうやら俺の服をマスク代わりにするようだが周りからは体臭を嗅いでいるように見える。

なんだか恥ずかしいがホロがそれで良いならこのままにしておこう。

売り子のおばちゃんが微笑ましいというか、暖かい視線を向けて来るが気にしたら負けだ。


そして、気を取られている間にライラは周囲の漬物を試食し始めていた。


「うん、酸っぱかったりしょっぱかったりするけど美味しいわね。引き籠ってた時に食べた腐りかけの野菜よりずっと美味しいわ。」


いったいどんな生活をしていたか知らないがその野菜は腐りかけではなく腐っていたのではないだろうか。

なんだかライラの私生活が気になって来る発言だ。

今度無理やりにでも彼女の部屋を掃除した方が良いのではないだろうか。


(茸とか生えてたら大変だからな。)


そしてもう一方のアリシアだが。


「冬などにはよく塩漬けや乾燥させたものを戻して食べてましたが、これは食材の味が生きてて美味しいですね。」


どうやらこちらは普通の事を言っているので心配は無いようだ。

しかも元が王族だけに腐った物ではない例えを使っている。

二人とも沢庵の古漬けや千枚漬けも食べられていたので好き嫌いや食べられない物は無さそうだ。

俺は一通りの漬物を10キロずつ袋に詰めてもらい会計をお願いした。


「あんたこんなに買って大丈夫なのかい?」

「大丈夫ですよ。」


実際に合わせると買った量は100キロを超えていた。

そこだけ見れば問題が大有りなのでおばちゃんが漬物の山を見て心配するのも頷ける

しかし、俺にはアイテムボックスがあるので大丈夫だ。


「最近いい能力を覚えたので食べ物が長期保存できるようになったんです。」


俺はそう言って山と積まれた漬物をアイテムボックスに仕舞った。

それだけでレジのおばちゃんから「あらまあ!」と驚きの声と歓声が上がる。

俺達は礼を言って店を出ると次の目的地に向かった。


次はアヤネの希望で安井金比羅宮へと向かう事になっている。

確かここは縁切りで有名な所でアヤネは会社をクビになっているので何かあるのだろう。

そしてこの宮の要である巨石の横にある台に行くと、数枚の硬貨を入れて何かを書き始めた。

しかし俺は見るのは良くないなと思い少し離れた所で待つ事にする。

するとアヤネに続く様にライラとアリシアも台に行ってお金を入れた。

しかも二人とも入れたのは1万円札だ。

1枚100円の形代なので一人100枚は書くつもりらしい。

二人は時間を掛けて全てに名前を書くとそれをもって表から一回、裏から一回、巨石を潜り形代を貼り始めた。

それだけで更に時間が掛かったが、ライラとアリシアはやり切った顔をしている。

まああれだけやれば当然だが今日が平日なため人が少なくてよかった。

ただ、周りで見ている巫女さんが心配そうな顔で3人を眺め、同時に俺へも視線を向けて来る。

なんだかこちらに向いている視線は冷たい気がするが、あそこに書かれている名前に俺の名は含まれていない・・・はずだ。

それに帰って来た3人にねぎらいの言葉を贈ると晴れやかな笑顔を返してくれた。


「ご苦労様。悪縁を切って良縁は結べそうか?」


すると3人は顔を見合わせると笑い声を洩らして俺に視線を戻した。

どうやら悪縁を切った実感か何かを実感できたようだ。

しかし、捨てる縁があれば新しい縁もある。

3人は揃って俺の手を取るとそのまま出口へ向かい走り出した。


「「「良縁はもうありました。」」」


すると俺達の後ろをホロが吠えながら追い駆け、更にその後ろをアキトたちがヤレヤレと苦笑しながら追って来る。

その後も幾つかの場所を周ると最後に赤福を買い込み女将さんの下へと向かった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の心理描写が面白い。ついでに多分この辺りでエロ判定があったのかもと感じました。 〉最低限、部屋が暗いのが唯一の救いだ。 『夜目を習得しました。』 『夜目のレベルが2に上がりました。』…
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