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135 【オリジン】

今代の勇者はとても変わり者。

私は世界が融合してからそいつを見てたけどまるで勇者っぽくない。

自分勝手だし、飼ってる犬が生活の中心だし。

なんでこんな奴が勇者に選ばれたんだろう。

もしかすると今期の魔王はかなりの被害を出すかもしれない。

まあ、それならそれでも良い。

私は世界の管理者の1人としてそれを見守るだけ。

別に私達精霊は人間の味方という訳ではないのだから。


でも、見てると次第に興味が湧いてくる。

龍王の姫が現れたりエルフの姫を拾ったり。

自分勝手に人を助けて魔物を狩りまくってるけどそれが結果としてアイツの運命を好転させてる。

しまいにはデーモンを倒して真の勇者にまでなってしまった。

そして気がつけば私はその人間を見続けていた。


するとしばらくしてエルフが大きな過ちをやらかした。

水の精霊王アクアを愚かにも呪いに組み込んでいる。

依り代ごと奪還したけど私には救う術はない。

あそこまで呪いと一体になっていると私の力では一緒にアクアも消してしまう。


私は僅かな希望を胸にあの男にアクアを任せた。

久しぶりに人前に出たから上手く話せなかったけど結果としてアイツは仲間と一緒にアクアを救ってくれた。

世界を管理する者として何かお礼はしないといけない。

シルフィーの話では面白そうな人間と言う話だし見て来た私もそれは知っている。

話した感じだとやっぱり変わっているというか嘘のつけないタイプに感じた。

なんかこう・・・、顔に出やすい?

心も凄いオープンでいくらでも思考が読める。

ここまでの人間は滅多にいない。

もしかして凄い正直者かバカなのかもしれない。

それともその両方か。


そして、あの男は最終的に3人もの精霊王から加護を受け取ったみたい。

しかも精霊王たちはアイツを気に入っているようで滅多に与えない寵愛を送ってる。

私の記憶でも3人もの精霊王が寵愛を送った記憶はない。


それにアイツの横にいるエルフの姫。

アリシアと言ったかしら。

あの子はかなり使えそうね。

素養もあるし資格もある。

あれならきっといい苗床になってくれるはず。

それにあの時に取れた種はこれが最後。

もう失敗は出来ないわ。

何十回と試したけどこれが最後のチャンス。

だから今回は万全の体制で行う。


そのためには彼らと縁を結ばないと。

私はそう思い、城で戦うアイツらの許に向かった。

どことなく分かってたけどやっぱりトゥルニクスにはデーモンが取りついてる。

しかも魔王候補にされてるみたいね。

アリシアにあまり精神的な負荷はかけたくないからあとで交渉して他を当たってもらいましょう。

デーモンたちは魔王候補を同時に何人も選んでるから予備は居るはず。

そして、話を付けるとテラもやっぱり男に寵愛を与えていた。

この男の何処にその価値があるのか分からない。

見た目は平凡だし・・・。

まあ、ちょっと見てて面白いけど・・・。

でも、私の仕掛けたトラップを簡単に回避したのは驚いた。

まさか私の加護を断る人間がいるとは思わなかったから。

でも今、私の加護を受けたとしてもその力につぶされて遠くない未来に消滅していたでしょうね。


それと私も慈善家じゃないから報酬はいただくわ。

ハニービーの蜂蜜は久しぶり。

良い物持ってるじゃない。

しかも今まで食べた中で最高の味がする。


その後、デーモンと交渉して少し・・・いえ、凄く疲れたけどなんとか交渉は成功したわ。

もしトゥルニクスが普通の人間ならもっと難航してたわね。

その代わり私の精神がガリガリ削られたけど・・・ハァーーー。

私の本当の姿はもっと知的に素敵ですんごいんだから。


そして精霊界に戻ってアイツを見ると私が苦労している間に何か宴会を始めたみたい。

これは参加するしかないわね。


すると今回は凄く失礼な事を考えてたからお仕置をしておいた。

だから私の真の姿は凄いんだからね。

その後はそいつが美味しいミードやイチゴミルクを作ってくれたから許してやったわ。

寛大な私に感謝しなさい。


でもアイツらが帰って少しすると私に転機が訪れた。

何やらとても美味しそうな、甘くて柔らかそうな物が並んでる。

その瞬間、私の直感が大声を上げたの。

すぐに向かえって。

そして、私の勘が間違っていなかった事が証明されたわ。

それは今まで食べたモノを大きく上回る、私を幸せに導いてくれる物だった。

きっと私はこのケーキと言う物を食べるために生きて来たのね。


でもアイツはいつもガミガミうるさいし、私に恥を掻かせたわ。

だからアイツの嫌いな物で復讐してやろうと思ってダンジョンを調整したら計画は大成功。

でも、おかしいわね。

私こんなに笑った事ってあったかな?


その直後に精霊王たちの裏切りでアイツの家に連行されていったわ。

でも私は悪くないもん。

謝らないもんね。


でもこいつは怒るどころかもっと甘くて美味しいケーキを沢山食べさせてくれたの。

こ、こいつは神か・・・。

いや、神はこんなに優しくない。

もっと残忍で飽きっぽくて・・・。

もしかして私も何時か飽きられて相手にされなくなるのかな?


・・・何考えてるの。

人の一生なんて精霊に比べれば一瞬の事。

相手が忘れなくても必ず去って行くんだから。

それに私だって人間に永遠の命を与えられないのよ。

そんな事が出来るのは・・・。

でも、計画が成功すればもしかすると・・・。

・・・な、悩むの禁止。

こんなの私じゃない。

私は賢くて立派な精霊の母。

恋なんてしないんだから。

ん!?恋・・・。


そしてしばらくすると私はクリスマスとかいう行事のパーティーに参加したわ。

なんだかソワソワするけど参加すると沢山の人がいて美味しい料理にケーキが置いてあった。

それにケーキ屋のメンバーを呼んでおいたから追加も十分。

人間の子供たちと奪い合いになったけどメノウとホロで鍛えた私の実力ならこのくらいへでもないわ。

それに最近この二人とは仲良くなってるからここにも頻繁に顔を出すようになったわね。

なんだか大勢で食べるご飯はとても美味しく感じる。

前までは食べても一人だったから余計に楽しいわ。

それにユ・・ユウがマフラーとかいう物をくれた。

作るのをずっと見てたから知ってる。

そして、これが義理だって事も。


あれ、・・・ちょっと胸が痛いかも。

気のせいかな?


でも首に巻くと、とても暖かい。

しかも他の娘達と同じでちゃんと付与もしてある。

そう考えるとなんだかとても嬉しい。

それに色はユウとお揃い・・・。


そしてしばらくすると今度はメガロドンと戦ってるわね。

本人は釣ったって言い張ってるけど凄く微妙だわ。

先日見た本だと人間には血液型とか言うのがあってそれで性格が分かるみたい。

それによればB型は変な所に拘るらしいからユウは絶対にB型ね。

それに興味のない事には見向きもしないみたいだし。

そう考えると私の事をちゃんと構ってくれるから興味はあるのかしら。

・・・もう、最近こんな事ばっかり!


そしてとうとうメガロドンを食べる時が来たわ。

少し前まで甘い物しか興味なかったけど最近はメノウとクリスのおかげで食べ物の美味しさに目覚めたのよね。

だからこれは初めて食べるけどあの二人が進めてくれるなら絶対に美味しいはず。

そして、その予想は確実に当たってた。

途中で何か変なのが乱入してきた気がしたけどその間に残ってた肉を掻っ攫えたからまあ良いわ。


そして、この世界には年と言うのが存在して年末年始にはまた美味しい物がいっぱい食べれた。

蕎麦にイガ餅がおいしかったわ。

それにお餅がついた髪をユウが綺麗にしてくれたの。

時々こういう事を無造作にするからいけないのよ。

またお餅つけようかな・・・?


そして、新年になってからはまたみんなで集まったけど一人だけ浮かない顔をしてる。

そう言えば味を感じない娘がいたわね。

人間は寿命が短いのだからそんな勿体ない事したらダメよ。

きっかけがあれば治りそうだから私が力を貸してあげる。


その子はカーミラと言う名前だったけどその後は美味しそうに食べてるから良かったわ。

やっぱり食材への最大の感謝は美味しく食べる事よね。

少し前にユウから見せてもらった本にそう書いてあったもの。


そしてユウはディスニア王国に旅立ったけどその時に彼の心の声を聞いたわ。

どうもこの星はかなり人間に荒らされてるみたいね。

精霊達からも報告を受けてるけどこれは本格的な治療が必要そうだわ。


私は精霊王たちにも言ってこの星の環境調整を命じた。

普通にやってるとこのままじゃ100年は掛かりそうだもの。

空気、水、大地の浄化に気温の調整。

私達がいなかったらこの星は滅んでたわね。


・・・もしかして世界融合が成功したのって。

私が知る限りライラが行った術は完成してたけど力不足だった。

2つの世界を一つにするにはそれだけ強大な力が必要になる。

でもそれを解消する手段が一つだけある。

それは世界そのものが望んだ場合。

世界には意思があるから世界が承認すれば小さな力でも切っ掛けさえあれば可能になる。

逆に切っ掛けがなければそんな事は出来ない。

もしかして、今のこの状況は世界が望んだこと・・・?


まあ、これはまだ伝えなくても良いわね。

この世界のどこかにいる意思とまずは会わないと。

でもなかなか見つからないのよね。

いったい何処にいるのかしら。

いない筈は絶対にないんだけど。


そしてユウが帰ってきてみんなと楽しく過ごしてるのを見てるとなんだか羨ましくなった。

だからホロを誘ってお風呂に向かったわ。

凄く恥ずかしくて心臓があんなに激しく動くとは思わなかった。

そしてお湯に浸かろうとするとユウが急に触れて来たわ。

驚いたけど理由を聞いて仕方なく従ったの。

でも本当は心臓の音がバレないかが心配だった。

今にも破裂しそうな程激しく動いてたから。


そして裸で入れって言われたときは流石に止まるかと思ったわ。

でも決心を決めて入るとユウも隣に入って来た。

少し緊張したけどいつも通りだし何も反応をしないのを見て少しムカッとしたから大人の姿を見せてあげたの。

でもそれでも反応が無いから彼の言う様に絆が足りないのね。

私も彼と旅が出来れば少しは変わるのかな?

でも、少しの時間だけどじゃれたり本音で言葉を交わせて凄く楽しかった。

なんだかいつもより気持ちがフワフワしてたからかもしれないわね。

でも最後の去り際にユウは私にちゃんと反応してるって言ってくれた。

彼が私を女と見てくれている。

それはとても嬉しくて、とても幸せで・・・。

だから私は決意したわ。

もう一度だけ素直になろおって。

それでダメなら私は昔の私に戻る。

誰の味方でもない。

只の管理者に・・・。

読んで頂けるだけで嬉しいのですが評価もしていただきありがとうございます。

この作品は以前に多大なご迷惑をおかけしてしまった物になりますが意見も頂けてとても嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] もしや、主人公のスキルをサポートしてるスピカが何か知ってる? おそらく体内に居るから見つけられないとか? 〉まあ、これはまだ伝えなくても良いわね。 この世界のどこかにいる意思とまずは会わない…
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