表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/225

134 龍化と竜化

オリジンが消えてすぐに入って来たのはゲンさん達だった。

彼らも体を洗うと湯船に入って来る。

それににホロがいる事は完全にスルーされているようだ。

するとゲンさんが頭にタオルを乗せて真剣な顔で話しかけて来た。


「先程オリジンがいた気がしたが?」


どうやらゲンさんは気付いていたようだ。

俺はスキルが進化するまで一切分からなかったのに凄い察知能力だな。

それならと加護についてをみんなに説明しておく事にした。

後でオリジンから貰えると思うが先に話しておけば説明も省けるだろう。


「先程オリジンから加護を貰いました。後で皆にも加護をくれるそうですよ。これからの相手の事を考えて気を利かせてくれたみたいです。」

「そうか、またお礼の品を考えておかなくてはな。」


そう言ってゲンさんは肩まで湯に浸かり息を吐いた。

ゲンさんもリバイアサンと顔を合わせているので今日は疲れているのだろう。

気配を探れば女湯の方では他のメンバーの力の高まりを感じる。

どうやらあちらではオリジンから加護を受けている様だ。

オリジンから加護を受けるとかなり安定するので未だに精霊力が使えていない者も使える様になるだろう。


そして、オリジンから加護を、まあ俺は寵愛だが、を貰って思ったがもしかすると精霊王の加護は5つで一つの加護なのかもしれない。

こんな強大な加護を一つ貰うだけでも制御するのは難しいだろう。

しかし、オリジンの加護が制御をしてくれるようになった事で今までの激流がまるで湖の様に静かになった。

もしかすると本当は精霊王から加護を受けるには何か試練の様な物が必要なのかもしれない。

俺達は流れで受け取る事が出来たが、それはそれで運が良かっただけな気がする。

それに、最初にオリジンから加護が欲しいかと聞かれた時に何か嫌な予感がした。

受け取るには何か決定的なモノが不足している気がしたのだ。

でも今回はそれが無かった。

これから更に強い敵が現れるかもという危機感もあったが今回は貰っても問題がない気がした。

その勘が当たっているかどうかは分からないが、こうして無事に皆が加護を受け取っているので間違った選択ではないと信じたい。


そして、俺達はしばらく温泉に浸かると部屋に戻って行った。

今回は疲れを癒すために来ているので夜の営みは無しとしている。

ヴェリルとのデートも結局できなかったので数日後にお預けだ。

ハッキリ言って良くも悪くもリバイアサンのおかげで二人の時間が無かったからだ。

それはライラから皆に説明がされて全員が納得している。


そして食事を取り終えると俺はライラ、ヴェリル、カーミラ、ゲンさん、サツキさんと一緒に出掛けて行った。

殆どは竜化、又は龍化を試すためだ。

カーミラは貰った精霊力を使いこなす訓練のために連れて来た。

俺達の中で一番弱いのはカーミラだ。

彼女は出会ってからレベル上げをしていないのでレベルが20にも届いていない。

すなわち授かった加護に対して、その扱いが最も危険なのはカーミラなのだ。

レベルが低いと体の強度も低く、スキルによる強化や補助も少ない。

そのため力を使って失敗した時に一番ダメージが大きいのは彼女になる。

まあ、失敗すると俺やアキトでも体が弾けるので関係ないかもしれないが。


「あの、私は生き残れますか?」


カーミラは心配そうに周りに問いかけている。

出かけに俺とアキトの失敗談を話しておいたので少し怯えているのだろう。

しかし、安定したとはいえ巨大すぎる力は危険でしかない。

カーミラにはゲンさんとサツキさんにしっかり指導をしてもらう必要がある。

二人も未成年には優しいので心配はないだろう。

最悪、手足ぐらいなら秘薬で治療が出来る。

存分に頑張ってもらおう。


「大丈夫だカーミラ。死なない限り治せるから。」


しかし、そんな俺の励ましは逆効果だったようだ。

彼女は震えを全身に広げ顔色を悪している。

すると俺の頭を何かが「スパーン」と軽快な音をたてて殴りつけた。

見ればいつの間にかライラが手にハリセンを持って立っている。


「ユウ、脅しすぎよ。萎縮しすぎると失敗するからあんまり言ってあげないで。まずは魔法を発動する前段階からゆっくり覚えていけば良いんだから。そうよね。」


そう言ってライラはゲンさんとサツキさんに視線を移す。

しかし、二人は「「え!そうなの?」」と言う顔を浮かべて返した。

どうやらこの二人にライラの様な優しさは端からないようだ。

恐らくは無理をさせないのだろうが相手の能力に合わせて限界ギリギリで教えて行くつもりだったのだろう。

俺達に対しては限界を超えた指導だったので彼らにしてはそれでも優しいのかもしれない。

するとライラはカーミラを見て笑顔を浮かべた。


「貴方には私が教えてあげるからゆっくり覚えましょうね。」

「は、はい。お願いします。先生!」


するとカーミラは目に涙を浮かべ、ライラの手を取った。

彼女も辛い経験から危険に対する察知能力と回避能力に優れているのだろう。

ライラを先生と呼ぶことで、どうやらゲンさんとサツキさんからの指導も回避できたようだ。

なので二人は残念そうにカーミラに視線を向けている。

しかし、彼らも今から初めての試みをするので気は抜けない。

人の身で龍となるため、どんな危険があるか分からないのだ。

それはライラとヴェリルも一緒だがやはり一番危険なのは先の二人だろう。


「仕方ないのう。今日は自分の事に集中するか。」

「そうね。どうなるか分からないものね。まずは私から試してみるわ。」


どうやらまずはサツキさんが試すようだ。

ゲンさんはお告げによりまだ総理を続けなくてはならない。

そのため、まずはサツキさんが危険が無いかをその身で試すのだろう。


そしてサツキさんは俺達から離れると数回、深呼吸を行った。

ホロやヴェリルの話では変身はイメージが大事らしい。

成りたいモノをイメージするとスキルがその姿に変えてくれるそうだ。

スキルがイメージの補助もしてくれるのでかなりリアルなイメージが可能らしい。


そして、どうやらサツキさんのイメージが固まったようだ。

イメージ自体は一瞬で出来るそうだが今回は慎重を期すために時間をかけている。

するとサツキさんは光に包まれその身を巨大化させていった。

そして光が消えるとそこには白い鱗に包まれた西洋に登場するような竜が現れ、こちらを見詰めている。

その目には理性が感じられ暴れる心配もなさそうだ。

そして大きさは10メートルほどだろうか。

手足は少し長めで体は細めだが鋭い爪に牙も生えている。

背中に蝙蝠の様な大きな翼もあるが、あの体型なら剣を持っても戦えそうだ。

するとサツキさんは龍の姿で話しかけて来た。


「なんだか急に大きくなると変な感じね。凄い力が湧いてくるけどリバイアサンには遠く及ばないわ。確かにこの力を生まれた時から持っているなら少しは傲慢に育ってもおかしくないわね。」


そう言ってサツキさんは再び光に包まれ人へと戻って行った。

しかし、姿が戻っても変わらないものがある。

それは額に集まる霊力の大きさだ。

変身する前までは俺とそれほど変わらなかったのに今は遥かに大きくなっている。

それに気付いた様でサツキさんも感覚を確かめる様に額に手を当てて目を閉じた。


「もしかしたら龍化した事で霊力の総量が跳ね上がったのかもしれないわね。加護を貰った時も何倍にもなったけど、今はまたその何倍にもなってるみたい。精霊力も安定してるから上手く使えば戦略の幅が広がるわね。」


そう言って分析した事をゲンさんにも伝える。

次はゲンさんの番なので彼は俺達から離れるとスキルを発動させた。

するとその姿は黒く巨大になっていく。

その姿はサツキさんに似ているが色は闇の様に真っ黒だ。

それでもその目にはちゃんと理性が感じ取れるので問題は無いだろう。


「皆下がっておれ。ブレスとやらを試してみる。」


そう言ってゲンさんは空に向けて口を開けた。

するとその腔内に力が収束し次第に巨大な力となっていく。

そして数秒後、その口からは天を貫くような白く輝く光線が発射された。

それは上空にあった雲を貫き更にその先へと飛んで消えていく。

成層圏までは届いていないだろうが数キロは飛んで行ったのは確実だろう。

すなわち射程がそれだけあると言う事だ。

あれでも手加減していたようなので本気になればもっと射程は伸びるだろう。

そう考えるとリバイアサンの攻撃範囲がどれ程長いのかが気になる。

もし、力に比例して距離が延びるのならその射程は数十キロはありそうだ。


そして、ブレスを撃ち終わるとゲンさんも無事に人の姿へと戻った。


「ブレスは強力だがかなり疲れるな。あまり多用はせん方が良さそうじゃ。」


そう言っているゲンさんは少し息が乱れている。

急激な力の消費は自身に大きな負担を掛けると言う事だろう。


そして次に前に出たのはライラだ。

彼女はイメージするのは慣れているのでスキルの発動は早い。

ライラはその姿を龍へと変えるが、その姿はゲンさん達と比べると少し太い。

逞しいと言っていいのか分からないが俺の持つイメージと同じドラゴンが目の前に現れた。


体の色はライラの髪と同じ黒に近い青。

大きさはゲンさん達よりも小さく5メートルほどだ。

そしてライラは変身できることを確認するとすぐに姿を人に戻した。


「変じゃなかった?」

「格好良かったと思うぞ。あの姿はライラの父親と似た姿なのか?」

「ええ、お父様はもっと大きいけどね。あまり見た事ないけどあの20倍以上はあるはずよ。」


単純に100メートル以上か。

それはまた巨大だな。

町に来るだけで大騒ぎかもな。

そう言えばリバイアサンは何かで報道されたのかな?

テレビを見てないから知らないが後で確認してみよう。


そして最後がヴェリルだ。

彼女は龍ではなく竜になるという。

どんな姿になるのか、とても楽しみだが心配でもある。

彼女は何度も深呼吸をして心を落ち着かせスキルを使用した。

するとその姿はライラたちとは異なった形態へと変わっていく。

その体はリバイアサンの様に長く伸びて行き太さで言えばライラには及ばないがその全長は大きく凌ぐ。

恐らく50メートルはあるだろうか。

その姿に俺達以上にヴェリルが仰天して声を上げた。


「ちょっと。なんでこんなに大きいのよ~!?」


そう言えばリバイアサンはヴェリルを特別に眷属にしたと言っていた。

すなわちそれは加護とは異なり更に巨大な力を与えるのかもしれない。

その証拠に彼女の体から放たれる気配はかなり大きい。

感じる力もメガロドンを凌駕している。

恐らくは次に出会えば食われる前に相手を食い殺す事が出来るだろう。

もしかするとノーダメージで倒してしまうかもしれない。


それに理性は今の言葉から確実にありそうなので俺の心配は杞憂に終わったようだ。

そしてヴェリルは驚きながらもすぐに人の姿へと戻り俺達の前に戻って来た。


「なんか・・・私だけみんなと違う。」


どうやら形態の違いを気にしている様だ。

しかし、日本ではあの形態が一般的なので親しみを持ちやすい。

その事を伝えるとヴェリルの顔に笑顔が戻った。


「それなら良いかも。ユウが嫌いじゃないなら姿なんて二の次で良いわ。」

「それにしても竜は龍よりも下の存在のはずなのにライラを上回ってたな。」


その事をライラに聞くとやはり眷属になった事が大きいらしい。

世界最高峰の霊獣にして龍種の眷属なので普通の龍では太刀打ちできないとの事だ。

そしてライラは気付いた事を追加で教えてくれる。


「きっとスキルに慣れればもっとサイズも調整出来るわ。人間に近い姿にもなれるはずよ。」

「それなら刀の扱いも出来そうね。」

「そうじゃな。巨大な刀を作らなければと悩んでおったがなんとかなりそうじゃ。」


そう言って二人は笑顔で喜んでいる。

人の姿でも化け物の様に強い二人なのにそうなれば本当の化け物になってしまうだろう。

もう、この二人が勇者で良いのではないだろうか。

そして話を聞いていると4人ともスキルで飛翔を習得したそうだ。

ドラゴンは空を飛ぶがやはり物理法則を突破するためにスキルを使っているのだろう。

そのため、ライラを除く3人は現在、空を飛ぶ練習中だ。

遊んでいるとも言えるが空を飛ぶのはいまだに俺も楽しいので仕方ない。


それにライラはそちらよりも生徒であるカーミラの訓練を優先させたようだ。

これに関しては命に係わる可能性もあるので早いほど良い。

今までは精霊力が安定していなかったので使わせる事その物を禁止していた。

誰も17歳の少女の肉体が吹き飛ぶのは見たくないからな。

ライラは俺と同じようにまずは体内にある精霊力を感じさせるところから始めるようだ。


「ここに力があるのを感じる?」


そう言ってライラは優しくカーミラのお腹をさすり意識を向けさせる。

それに対しカーミラも真剣な顔でそこに意識を集中させているようだ。


「何となく分かります。これが精霊力なのですか?」

「そうよ。落ち着いてここを意識しながら風の魔法を使おうとしてみて。ここから力の補助が受けられるはずよ。」

「分かりました。」


そう言ってカーミラは慎重に魔力を高めていく。

すると加護が反応して少しずつ力が染み出すようにカーミラへと流れ始めた。

どうやらライラは指導者としての才能もあったようだ。

ライラは所々で注意や修正を加えながら確実にカーミラの実力を伸ばしていく。


(そう言えばアヤネや、東京で案内をしてくれたクミに教えた時も一晩で育て上げてたな。そう考えると出会った時から人を育てるのが上手だったんだな。)


俺は感心しながらカーミラの成長を見守った。

どうやらもう少しでコツを掴みそうだ。

コツさえ掴んでしまえばカーミラは定期的に町で魔物狩りをしている。

魔物という練習相手は居るのですぐに上達するだろう。


そしてゲンさん達は先に帰ってもらい俺達は遅れてホテルに帰った。

少し遅くなったがまだ風呂は空いている時間だ。

俺はタオル片手に予定通り露天風呂へと向かって行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ