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114 魔王戦

俺は挑発を使い魔王の意識ををこちらに向けさせようとした。

しかし、なぜか肝心の魔王はこちらに目もくれず、別の方向に視線を向けている。

そしてその視線の先を追うと、どうやらライラを見ているようだ。

すると魔王は人よりも大きな玉座をつかみ取るとそれを勢いよくライラに投げつけた。

それをクオーツは素早く躱すと額から伸びている角から白い雷を放つ。


「これでも喰らいなさい!」

「グオーーー!」


魔王はその電撃に体を震わせると焦げた臭いを辺りに振りまくが、膝を一瞬折っただけで直ぐに態勢を立て直した。

体には火傷の跡が見えるがそれはまるで映像を巻き戻すように治っていく。

そして、その間にライラ達はロープを外してクオーツから下りると俺へと駆け寄って来た。


「ユウ!よくも置いて行ったわね!」

「お仕置は後でしっかりメニューを組みますから。」

「これは体で払ってもらいます。」


そう言ってライラ、アヤネ、アリシアは俺に忘れていたい現実を突き付けてくる。

俺は苦笑を浮かべるが彼女達の厳しい視線は変わらなかった。

どうやら本気で心配を掛けさせてしまった様だがそれはここを生き残ってからだ。


「私はメイドの身なのでお手伝いだけで。」

「私は奴隷なので・・・。ちょっとだけ。」

(おい!)


クリスはともかくカーミラも最近になって俺の扱いが酷くなっている。

これもライラ達の影響だろうか。

普通に接してくれるようになったのは良いが家長としてもう少し敬ってもらいたい。


「私は体でもいいけど二人っきりでデートがしたいわね。」

「私は皆で山に行きたいです。」


すると今度はヘザーとヴェリルが便乗してくる。

そしてその後ろではクオーツが盛大に嘶いていた。


(すまんクオーツ。俺には馬語は理解できん。)


「私はケーキバイキングに行ってみたい。」

「私は満漢全席を食べてみたいです。」


(ホロはともかくメノウはハードル高いな。そんなの何処に行けば食べさせて貰えるんだ?)


しかし、二人は花より団子を取ったようだ。

二人らしいと言えばらしい提案だが今度ゲンさんに相談してみよう。

サツキさんだと交換条件に厳しい訓練を受けないといけなくなりそうなので可能な限り相談は控えておきたい。


しかしそんな会話にアキトが割って入って来た。


「そろそろ話を終えて集中しろ。」


そうだった。

今も魔王はゲンさん達が足止めしてくれているがそのターゲットはライラから外れていない。

俺は気合を入れてメノウに確認を行った。


「あれは真の魔王か?」

「そうだと言えばそうです。しかし、急激に魔王化させたようで完全な魔王ではありません。理性が無いのがその証拠です。」


そうなると俺達が聞いた話では勇者にしか倒せない存在だ言う事になる。

ここは、いったん引いた方が良いのではないだろうか。


「真の魔王は勇者にしか倒せないと聞いたが俺達に倒せるのか。」

「ユウさん達なら倒せます。」


するとメノウは真剣な顔で首を縦に振って頷いた。

もしかすると不完全だからかもしれないがこれ以上に事態が悪化すると俺達でも手に負えなくなる。

俺はメノウのその言葉を信じて頷きを返し魔王に視線を戻した。


「お前が言うなら信じるぞ。みんなはサポートを頼む!」

「「「はい!」」」


そして俺も剣を手に魔王に向かって行った。

魔王は今もゲンさん達と戦いながら少しずつライラに迫って来ている。


そしてここは広いと言っても所詮は室内だ。

俺は剣に魔力を込めるとゲンさん達に声を掛けた。


「みんな離れろ!」


すると俺の声を聞き周囲で魔王に攻撃を加えていた者達が一斉に離れる。

それを確認し俺は全力で剣を振るった。

今回は魔力でなく風の精霊力を剣に込めている。

そして風の魔剣は精霊力を基にして巨大な風の刃を作り出した。

だが、この刃で魔王を倒せるとは俺も最から考えてはいない。

俺の目的は魔王をこの部屋から外に突き落とす事だ。


「でやーーー!」


そして俺が裂帛の気合と共に放った風の刃は見事に魔王に命中した。

更にその体を深く切り裂きながらその巨体を大きく吹き飛ばし、窓を突き破って下に落とす事に成功する


「ゴアアアーーー!」


そして魔王は雄叫びと共に地上へと落ちて行った。

どうやら奴は飛べない様で空中で手足をバタつかせ何でも良いから掴もうとしている。

しかし、その超重量な体が仇となり掴んだ壁は崩れ、しがみ付く事さえできない。

俺達はそんな魔王を追って窓から下へと飛び降り追って行った。

すると自衛隊組の4人はテラスに出ると銃を構え、距離が開いた事で出来た優位性を利用して遠距離射撃を開始する。

そのため俺達は射線を開けて降下し、着地と同時に魔王へと斬撃を振り下ろした。

魔王はそれを傷だらけの体で受け止め更に深い傷を体に刻む。


それにしても、この魔王は理性が無いので戦い方が滅茶苦茶だが、高い再生能力を持っているのでダメージを気にする事無く戦っている。

その為、いまだに致命傷は与えられないが次第に傷の治りが遅くなってきているようにも感じる。

特に俺が先ほど与えたダメージの治りが遅い。


(もしかして・・・。)


「ゲンさん、刀に精霊力を込めて攻撃すると効果が高いのかもしれません。」


俺はいまだに仮説だが確かめる価値があると思いゲンさんに声を掛ける。

彼はスサノオで魔王にダメージを与えているがその傷の治りは俺のものより遥かに速い。

それに、精霊力を込めていれば攻撃に何かしらの属性が付いているはずだ。

それが見えないので今はおそらくは魔力だけで戦っているのだろう。

それでもゲンさんの怒りで高められた技の威力は十分なダメージを魔王に与えている。


「いい所に目を付けたのう。儂もちょうど試そうと思っておったところだ。」


そう言ってゲンさんは精霊力を小太刀に込め始める。

すると小太刀は炎に包まれ、大剣ほどのサイズへと変わった。

そして、ゲンさんはそのまま魔王へと接近し容赦ない斬撃を浴びせ掛ける。


「ギャアアーーー!」


すると魔王は先程までと違い痛みに悲鳴を上げた。

そしてその傷は治り始めてはいるが速度は今までに比べてかなり遅い。

先程のクオーツの雷撃で負った火傷も見る間に回復していたので炎だからと言う事も無いだろう。

やはり精霊力による攻撃が弱点のようだ。


俺はすぐに上を向いてアリシアに声を掛けた。

彼女は他の皆と一緒にクオーツの背に乗り降下のタイミングを窺っている。


「アリシア、精霊王に力を借りられるか!?」

「さきほど呼ぼうとしましたが今回は加護のみに集中するそうです。」


どうやら精霊王で一気に勝負を付ける訳にはいかないようだ。

精霊王との契約は対等なので一方的にこちらの都合で呼び出す事は出来ない様になっている。

それでも、加護を通じて力は貸してくれているので十分に有難い。

若干オリジンがサボっている印象を受けるが彼女はいつもの事なので仕方ないだろう。

俺は精霊王の助けを諦めゲンさん達と共に魔王へと攻撃を仕掛けた。

しかし魔王の肉体を切り裂くのは初めてだがこの剣ですらまるで巨大なゴムを切っているような感触だ。

筋肉の鎧に阻まれて深く切り裂くことが出来ない。

それに比べ、ゲンさんとサツキさんは相手の筋繊維に沿って小太刀を走らせ深く切り裂いている。

しかし俺には模倣のスキルがあるのでゲンさん達の技術をコピーし攻撃の質を上げて行く。


すると魔王の視線が再び俺達から外れ上空を飛ぶクオーツに向けられた。

正確にはその背に乗るライラだが魔王は俺達を無視して視線を固定させると大きく口を開いた。

そして、その口には途轍もない力が凝縮し始めそれを感じ取ったゲンさんが声を荒げた。


「やばいぞユウ!こ奴は何かするつもりじゃ!」


ゲンさんはそう言って自分から注意が外れた事を利用し本気の攻撃に移った。


「サツキ、アスカ。オロチガリをするぞ。込める属性はアスカが水、サツキが炎、儂が地じゃ。」


そして魔王に攻撃を加えながら周りで同じように戦っている二人へと指示を飛ばす。

そして二人が頷くと同時に距離を開け構えをとった。


「行くぞ。」


そして以前と同じようにアスカはツクヨミを魔王の首に放った。

しかし、それは以前とは違い浄化の力を持つ水の精霊王アクアの力が宿っている。

そのため月読を受けた魔王の肉体は浄化され斬られた場所の禍々しいオーラが完全に消滅した。


そして、そこにゲンさんとサツキさんがそれぞれに天照とスサノオを放つ。

するとこちらはそれぞれの属性が交互に高め合い以前とは比べ物にならない威力は発揮する。

それにより二人の攻撃は魔王の首を通過し、高々と斬り飛ばして見せた。


しかし、俺はそれを見てもライラ達の前に飛び込んで聖装を体に纏う。

以前の蛇もだがこういう奴は最後までしぶとい。

それを示すようにいまだに魔王の口には力が収束し続けている。

そして、俺がライラ達の前に飛び出した瞬間、魔王はその口からドス黒いブレスを吐き出した。


「「「ユウ!」」」


俺は体を盾にしてそのブレスからライラ達を守る。

しかし、その威力はすさまじく俺の聖装は今にも剥がれ落ちそうな程の衝撃を受けた。

それにブレス自体は防いでいるがその余波は俺の背後にも拡散し、これではライラ達は逃げられない。

俺はこの場に足を止めて盾になり続けるしかなかった。

しかし、そんな時にも俺のスキルはこのピンチを生き残ろうと成長を始めた。


『貫通耐性が貫通無効に進化しました。』

『麻痺耐性が麻痺無効に進化しました。』

『呪い耐性が呪い無効に進化しました。』

『腐食耐性が腐食無効に進化しました。』

『石化耐性が石化無効に進化しました。』

『闇属性耐性を習得しました。』

『闇属性耐性のレベルが2に上昇しました。』

『闇属性耐性のレベルが3に上昇しました。』

『闇属性耐性のレベルが4に上昇しました。』

『闇属性耐性のレベルが5に上昇しました。』

『闇属性耐性のレベルが6に上昇しました。』

『闇属性耐性のレベルが7に上昇しました。』

『闇属性耐性のレベルが8に上昇しました。』

『闇属性耐性のレベルが9に上昇しました。』

『闇属性耐性のレベルが10に上昇しました。』

『闇属性耐性が闇属性無効に進化しました。』


(闇属性?・・・初めて・・聞いたぞ。)

『魔王専用の属性と思われます。』


ブレスを受け止め瞬時に耐性が無効へと進化していく。

もしこれをライラ達が受けたとすれば一瞬で死んでいただろう。

しかし、これだけ無効スキルを得ても力の本流までは防ぎきれない。

今も四肢が千切れて飛んで行きそうな程の衝撃が俺を襲って来る。

骨が折れ、皮膚が剥がれ落ちてブレスに呑まれて消えていくのを感じる。

そんな状況で俺の中にフとある言葉が浮かんだ。


(これは・・・少し・・キツイか・・・。)


しかし、そう思った瞬間、俺のすぐ後ろから声が掛けられた。

俺はそちらに顔を向け彼女達に視線を向ける。

そこには俺の諦めを吹き飛ばすような表情の仲間たちが、すぐ傍で必死に声を掛けてくれていた。


「ユウ、頑張って。あなたなら耐えられる。」

(ライラそんな泣きそうな顔をするよ。)


「まだお仕置も残ているんです。こんな所で死なないで。」

(アヤネ、今それを言うか。)


「ヒヒーン」

(すまんがやっぱり分からん。今度言語スキル上げとくから。)


「今度ホロのご飯分けてあげるから負けないで。」

(それは嬉しいな。なら次は一緒に食べような。)


「私を未亡人にする気ですか?」

(まだ結婚してないがもう似た様なものか。そろそろ結婚式場でも予約するかな。)


俺は背中からの応援に心の中で答え体と心に力を籠める。


「それじゃあ、全力で生き残ってみるか!」


『本人の強い生への渇望を感知しました。』

『それと同時にメノウより天使の寵愛を受信。』

『彼女を通じて新たなる力の流入を感知しました。』

『エネルギー名はホープ(希望)。』

『ユウさんに注がれる希望が一定以上に達しました。』

『ホープエンジン始動。希望を力に変えて聖装を強化します。』


スピカが俺の中で目まぐるしく言葉を並べる。

言っている事の半分は分からないが、先日の修行の際に感じた胸の所にあったエネルギーが急激に高まっていく。

しかし、そのエネルギーは暴走する様子もなく、血液の様に俺の全身を駆け巡る。

そしてそれは精霊力と霊力も巻き込み、更に勢いを増し始めた。

まるで最後のピースが揃ったかのように俺な中の力は自然と循環を始め、まるで今までが嘘だったかの様に自在に力を扱えるようになった。


その瞬間、剥がれかけていた聖装は完全に修復され、それは新たな力へと変わって行く。


『剣聖に続き剣魔を習得。』

『それと同時に特殊スキル、聖魔融合を習得しました。』

『聖魔融合が特殊進化しオール・エナジー・フュージョン(全ての力の融合)を獲得しました。』

『スキル聖装と魔装が融合変化しました。オール・エナジー・クロスを獲得しました。』


そしてブレスを受けているが一切の衝撃が消え、俺は魔王の頭部に視線を向けた。


「これなら生き残れそうだな。」


俺は剣を構えると力を流し上段に構えて刃を伸ばす。

そして一気に振り下ろしてブレスごと魔王の頭部を両断した。


「ギャアアーーーー・・・。」


魔王の首は俺の斬撃を受けると切り取られていた体と共に激しい光に包まれた。

そして魔王の叫びと光が消えた後には魔王がいたという痕跡すら残されずに消え去っている。

これが魔王に落ちた者の末路だとすればあまりにも辛い仕打ちだ。

だが、魔王はその身に強力な呪いを宿す。

肉片1つ、血の一滴まで危険な存在なのでこれでよかったのだ。

俺は決着が付いたので後ろを振り向き仲間たちにいつもの笑顔を浮かべる。


「これでまた、家でのんびり出来そうだな。」


そしていつものセリフを口にして一緒に下へと降りて行った。

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