10 招待状
自警団の集会所は俺の家から300メートル程離れた場所にある。
だが時刻は既に夕方で危険を避けるために歩いている人は誰もいない。
しかし俺は周りを警戒しながらゆっくりと歩いていた。
その理由は俺のマップには周囲を取り囲むように青い光点が10個ほどあるからだ。
それらはこちらの歩く速度に合わせて俺の死角を移動し尾行しているのが分かる。
俺は仕方なく立ち止まると監視がいる方向に視線を向けた。
するとようやく建物の影から一人の男が現れ俺に姿を晒した。
「アナタが最上 ユウさんですね。」
すると男からは既に断定している言葉が発せられる。
ここ最近俺達を尾行していたようなので身元がバレていても仕方が無いが、危険察知が反応していないのでライラとアヤネには不安にさせない為に黙っている。
(相手の出方次第ではそろそろ話さないといけないだろうな。)
「隠しても意味がなさそうだな。アンタが言うように俺がユウだ。敬称も何も要らない。それで何が目的だ?」
すると男は懐から封筒を取り出して俺に差し出して来た。
俺はそれを受け取ると裏と表を確認しアイテムボックスの中へと放り込んでおく。
「一週間後の日曜日にここへ来てください。ある方々がお会いしたいそうです。」
「これは招待状と言う事か。誰かは会ってからのお楽しみか?」
「そういう事です。来なかった場合は強制連行になるので必ず来るように。」
どうやらこちらに拒否権は無いらしい。
そうなるとこれは招待状と言うよりも召喚状と言った方が正しいかもしれないな。
おそらく結界石の事だと思うがこの様子なら皆に伝える必要がありそうだ。
それと幾つか保険も掛けておいた方が良いだろう。
それにスキルには反応は無いがいまだに不明な事ばかりの相手なので油断は出来ない。
そして俺は男と別れるとそのまま家に帰り封筒を開けて内容を確認する。
するとそこには航空チケットと住所だけが書かれていた。
場所は東京都千代田区永田町1丁目7-1
俺はすぐにネットで住所を確認すると意外な事実が分かった。
(国会議事堂か。政府もやっと動いたのか。)
ハッキリ言ってこの地域の政治家では話にならない。
言っても信じないだろうし今は魔物が出現した事で仕事で忙しいだろう。
近所の行政機関には連日人が殺到し、今では事前予約が必須となっている。
土日まで開けて対応しそれでもひっきりなしに人が来て戦場のような有様だった。
そして、夕飯の席で俺はこれをみんなに見せ、分かっている事を伝えておく。
「やっと政府からコンタクトがあった。来週は皆で旅行に行こう。」
「やったー。旅行大好き。」
するとホロは旅行と聞いて大喜びではしゃいでいる。
きっと以前に宿泊した時に食べた犬用の料理を思い出しているのだろう。
しかし笑顔を浮かべているホロだが飛行機に乗った経験が無い。
怖がりなので初めての飛行機は大丈夫か心配だ。
「旅行ですか?何処に行くのですか?」
「国会議事堂だから東京だな。」
「・・・・。」(ポロリ)
するとアヤネは場所を聞いて固まってしまい箸を手から落としてしまった
それに話す事と言ったら確実に結界石の事になるだろう。
そうなればメインとなるのは俺ではなくライラとアヤネになるのでこうなるのも頷ける。
「国からの呼び出し・・・。私はあまりいい思い出が無いんだけど・・・。」
ライラはかなり渋い思い出があるのか顔を顰めて嫌そうにしている。
だが第一人者なので彼女は絶対に必要だ
「俺がちゃんと2人を守るから安心してくれ。やばくなったら全力で逃げるしな。」
「そ、そう。ならしっかり守ってよね。」
「それなら私は足が遅いので逃げる時は御姫様スタイルで抱えて逃げてください。」
「あ、狡いわよアヤネ。」
(まあ、2人ぐらいは抱えて逃げられるかな。)
二人は真っ赤な顔でそんな事を俺に言って来るがこんな冗談が言えるのだから意外と余裕みたいだな。
それに二人を見た感じ仲が良さそうなので関係も良好そうだ。
一応は師弟と言う事で上下関係が出来ているんじゃないかとも思っていたが、仲が深まってなんだか親友みたいな感じになっている。
するとホロがキラキラした目をこちらに向けている事に気付いた。
どうやら抱えて逃げるのは2人ではなく3人になりそうだな。
(それなら二人を両手で抱えてホロは犬の姿で背中にしがみ付かせるか・・・。凄い絵面だな。)
自分で考えておいて少し笑えて来る。
そしてそんな楽しい時間を過ごした俺達は時間になったので狩りに出かけた。
政府がどう対応するかが不明なので可能な限りレベルを上げて自身を強化する事にしたのだ。
それに最近現れたコボルトならまだまだ効率の良いレベルアップも出来る。
特にホロはこれからのレベルアップで急速に成長が見込める。
俺はマップを頼りに町中を徘徊する魔物を片っ端から狩り経験値を稼いでいった。
途中で自警団にも会ったので事情を話し伝言をお願いして了承を貰っておく。
彼らは数日だけだが危険が減るので喜んで魔物を譲ってくれる。
(今日会った相手からは誰にも言うなとは言われて無いからな。)
そして俺達は魔物を狩り尽くす勢いで狩りを行い町を歩き回った。
その途中、個人で狩りをする人にも会ったりしたが友好的な人たちばかりだ。
どの人も家族や恋人、友人を守るのに必死なようで魔物を倒すのが目的ではなく安全を得るのが目的だと言っていた。
彼らにも結界石の存在を教え近日中に購入する事に決まった。
これでこの町のかなりの範囲に結界石が知れ渡る事になるだろう。
知名度も順調に拡大中で県外からの注文も少しずつ増えている。
情報は光の速さというが既に大手企業や財政界のお金持ちからもそれなりに注文が来始めている。
ここまで来て政府が下手な事をしようものなら彼らからのクレームは免れないだろう。
この国は結局のところ政治家だけでは歯車は回せない様に作られているのだから。
そして次の日、とうとう待ち望んだ時が来た。
「きゃーーーーーーー!」
ちなみに悲鳴を上げたのは今までずっと今に寝かせていた耳の長い女だ。
東京に向かうまでに目を覚まさなかったらどうしようかと思っていたが起きてくれて本当に助かった。
アイツの世話は他の者には頼めないので最悪な時は移動を車にしないといけなくなる所だった。
そして俺達が悲鳴の上がった部屋に向かうと、そこには部屋の隅で獣の様な鋭い目をした女が俺を睨みつけていた。
どうやらゴブリンの巣での事もあり錯乱しているようだ。
そして俺が部屋に入ると女は拳を握り雄叫びを上げながら俺に殴り掛かって来る。
それ程早くはないがさすがに殴り返す訳にはいかない。
俺は拳を受け止めたり逸らしたりしながら女が疲れるのを待ち続ける。
ずっと眠っていたので体力はそれ程ないはずで、元々のレベルも高くはないと想像できる。
ホブがいたとは言ってもゴブリンに捕まるくらいなのだからな俺よりも強いとは思えない。
すると案の定、女はしばらくすると疲れて荒い息を吐き、肩を上下させながら膝をついた。
そして俺を見上げるとそのラピスラズリの様な青い瞳に大粒の涙を浮かべて泣き出してしまう。
そこには先ほどまでの獣の様な荒々しさはなく、ただの少女の姿があるだけだ。
それにあれだけ酷い目に合わされたのだからこうなっても当然だろう。
恐らく俺達が来なければゴブリンの子を産む道具になっていたか耐えきれずに死んでいたに違いない。
今の状況が女にとって望んだ事かは分からないが生き残った事に後悔していないと信じたい。
そして俺は女に毛布を被せるとその上から優しく抱きしめた。
俺自身に優しさはあまりないが人の体温とは意外に落ち着くものだ。
そのまま10分もすると女は少しは落ち着いたのか涙を拭いて毛布から顔を出した。
「申し訳ありませんでした。良ければお名前を教えてください。」
すると顔を出した女は丁寧な口調で謝罪し名前を聞いて来た。
俺はなるべく優しい感じを装って自分と仲間を紹介していく。
「俺は最上 ユウ。ユウと呼んでくれ。後ろの3人は右からライラ、アヤネ、ホロだ。俺達はゴブリンの巣でお前を見つけて保護したんだ。」
すると女は俯いて俺の名前だけを何度も唱えると再び顔を上げた。
その時には少しは顔色もマシになっており、ぎこちないが笑顔を浮かべてくれる。
「名乗りが遅れましたが私の名前はアリシア・エアフルトです。不快でない様ならアリシアと呼んでください。それと助けてもらいありがとうございました。」
しかしその名を聞いたライラは驚きの顔をアリシアに向けた。
どうやら何か知っているようでアリシアに確認する様に問いかけた。
「エアフルトってもしかしてエルフの国の王族が確かそんな名前だったわよね。」
「ご存知でしたか。でもゴブリンに辱められた私に帰る場所はありません。それに箱入りの私が生きるにはこの体を売る以外に方法はないでしょう。」
アリシアはそう言って悲しそうに顔を伏るがきっとゴブリンに襲われて自暴自棄になっているのだろう。
もしかしたら時期的に二つの世界が融合した事も知らないのかもしれない。
詳しい事は追々話すとして、まずはこの陰気な空気をどうにかしよう。
そうしないとホロがストレスでお腹を壊してしまいそうだ。
「もし、行く当てがないならしばらくこの家に居るといい。既に行く当てのない人間を二人も住まわせてるからな。一人増えてもそんなに変わらない。その代わり自分の食事代は自分で稼いでもらうから覚悟してくれ。」
「良いのですか?その・・私のような者がここにいても。」
「そう言ったつもりだ。」
「あ・・ありがとう・・・ございます。」
するとアリシアは俯けていた顔を上げると俺の顔を見つめ返し涙を浮かべる。
きっと何処とも知れない場所で知らない者に囲まれて不安や恐怖で一杯だったのだろう。
それに誰しも体を好きで売りたくはないだろうし、それが不特定多数ならなおさらだ。
帰る場所が無いのも不安の一つだったのだろう。
これで最低限の衣食住は保障されたので彼女にはゆっくりとこれからの事を決めてもらいたい。
そして話し合いの結果、彼女にも俺達と共に行動しレベルを上げてもらう事になった。
それと彼女が得意なのは弓と精霊魔法というものらしい。
しかし弓は何処となくわかるが精霊魔法とは何だろうか?
「精霊魔法は精霊と契約する事で発動が可能になる召喚魔法の一種よ。契約した精霊を召喚して力を借りたり自分の代わりに戦わせるのが一般的ね。だからエルフは弓が得意な人が多いのよ。」
「よくご存じですね。まさにその通りです。そのためエルフはレベルが低くても戦えるのですが森を散策中に100を超えるゴブリンに襲われてしまい捕らえられてしまったのです。」
「アイツ等はエルフが色々な意味で大好物だから偶然私達が来たから良かったわね。」
「はい。あのままだと私は心が壊されてゴブリンを増やすための道具にされていたでしょう。助けて頂き本当に感謝しています。」
しかし、あんな事があった後だからか俺の方に時々視線を向けては逸らすを繰り返している。
酷い経験がトラウマになり体や精神が似たものを受け付けなる事があると聞いた事があるので男性恐怖症にでもなってしまったのだろうか。
もしそうならしばらくは適度な距離感を持って接して少しずつ治るのを待つか、無理なら慣れてもらうしかないだろう。
ちなみに現在の彼女のレベルは5らしいのでアヤネと大して変わらない。
それに後衛なら直接戦わないし拾った鞄には大量の矢が入っていた。
それを使えれば彼女には後衛を任せても大丈夫だろう。
それと彼女の耳は特徴的なので今はフードが付いたパーカーで隠してもらっている。
これなら綺麗な顔は隠せないが耳は隠せるだろう。
それから時間はあっという間に過ぎて行き、俺達はテレビ局の前に来ていた。
ここを最後の保険に使用するためで俺達は受付に行くと声を掛けた。
「電話をした最上ですが。」
「はい聞いております。こちらにどうぞ。」
俺達は声を掛けた女性に案内されて上の階にある部屋に入った。
するとそこには会議室のような場所になっており、スーツを着た見るからにお偉いさんという顔ぶれが並んでいる。
そして俺達がここに来たのは彼らに保険になってもらう為だ。
テレビ局は国の意向を考慮する立場にはあるが彼らにも家族や大切な人がいる。
だから確信がある訳では無かったがこうして彼らが集まり、俺達が呼ばれている時点でその考えが間違いでなかったと示してくれた。
そして俺達が抱えている結界石の知識は時間を割いてでも聞く価値があると認識されているのだ。
そして、俺達が部屋に入り席に着くと彼らの中から代表して真中に居る男性が話を切り出した。
「君が例の・・・。」
「そうなりますね。あなた達も国から圧力が掛かればなかなか動けないのでしょうがこれは一部の人間が勝手にして良い案件ではない事は既に理解していると思います。」
「ウ~ン・・・。」
『ザワザワザワ。』
すると彼らは腕を組み俺に鋭い視線を向け小声で横の者と会話を始めた。
そして聞き取れる声にはあまり友好的とは思えない内容も含まれ、こちらとしても気分が良いものではない。
それに法律でパワハラやセクハラが禁止されたと言ってもそれでやっていた人の人間性が変わる訳でもないくこうした自覚の無い行動も多い。
なので場所にもよるだろうが俺の様な若造が堂々と話し掛ければ生意気と取られても仕方がないことだ。
(ならここで少し威圧しておくか。威圧レベル2くらいで十分かな。)
そして俺が威圧を周囲へと放つと「うっ!」という呻き声が聞こえて来た。
どうやら先日から魔物で練習して慣れたつもりだったがそうでもないらしい。
それともゴブリンでも耐えられる程度の威圧でも人にとっては厳しいのだろうか。
(・・・少し強すぎたのかもな。次回からレベル1で試してみよう。)
しかし、そんな中にも威圧を受け流して顔色を変えない人が混ざっていたようだ。
その人は最初に声を掛けて来た人で顔の前で手を組み司令官スタイルでこちらを見ている。
「君の言いたい事は分かった。それで私達にどうしろと。」
「もし俺達が政府に拘束された場合、こちらに結界石の製作方法を記した資料が届きます。それを公表してください。」
すると彼らは全員が目を見開き何人かは立ち上がって俺達を見て来る。
ここに来た事情は大まかにしか話していないがこんな事を言われるとは思っていなかったのだろう
しかし別に隠したい訳ではないし利益を独占したい訳でもない。
ただいきなり魔物を寄せ付けない結界石が有りますよと言っても信用が無ければ誰も買わないので仕方なく今の状況になっているだけだ。
最初から誰も疑わないのならもっと大々的に広げようと動いている。
人は都合の良い物を信じようとはするが良すぎる物は自然と疑ってしまうからな。
すると先程の男性が鋭い目で俺を見ると周りとは違い至って普通の態度で言葉を返して来た。
どうやら威圧に負けない程の胆力があるのは彼一人しか居ないようだ。
「本気かね。」
「本気です。」
そして少しの沈黙が続き男は閉じていた目を開くと確かな動きで頷いた。
「分かった君の意見を採用しよう。政府から何か言って来るかもしれんが、それこそ無視する事にする。それでいいな」
「ありがとうございます。」
その後、俺達は席を立って部屋から退出するとテレビ局から出て行った。
と見せかけて俺は密かに先ほどの部屋に侵入しその後の話を盗み聞ぎしていた。
「社長、本気ですか!?」
「当然だ。その結果、社長の座を退いても儂はやる。」
「・・・分かりました。それだけの覚悟があるなら準備だけは整えておきます。」
「頼んだぞ。」
そう言って周りの者たちは部屋を出て行き社長は一人になると溜息を零した。
しかしどうやら俺の威圧に耐えて話をしていた男性はこのテレビ局の社長さんだったらしい。
只者ではないとは思っていたがトップまで出席してくれているとは思わなかったな。
そして社長の隣に並ぶように移動するとスキルを解除して姿を現した。
「先ほどぶりです。」
「!?っとお主か・・・。どうやってここまで来た?」
「スキルを使ってとだけ。」
「なら聞いていただろう。儂はやると言ったらやる。」
「ならこれを。」
俺はデータが入っているメモリーカードを取り出すとそれを社長へと渡した。
彼らが信用に足りるかは分からないので後で届けると言ったが途中で横槍が入り奪われる可能性もある。
更に言えばあの中に政府へと内通する者が現れるとも限らない。
なのでこうして信用できそうな人に直接渡しておくのが一番確実で安全な方法だ。
社長は俺の差し出したメモリーカード受け取るとそれを見詰め僅かに息を呑んでこちらに視線だけを向けて来る。
「これはもしや?」
「データが入っています。当日妨害が入る可能性もありますから。」
「そうか。慎重なのは良い事だ。」
そう言って社長はメモリーをポケットに入れると視線を外へと向ける。
これはここに居る二人だけが知っていれば良い事で、俺は彼の目を見て信じる事に決めた。
しかし、今の時点では他の者までは信用できない。
彼らの中に裏切り者が紛れていると今日の事が意味をなさなくなってしまう。
「今までの政府の動きが遅すぎるのでね。あなたや俺ほど危機感を抱いていないみたいです。」
「まあな。奴らはここしばらく議事堂に立て籠ってあまり外に出ない様にしているらしいからな。それと君の所で買った結界石は役に立っているよ。息子夫婦も安心して眠れると喜んでいたぞ。」
「そうですか。お買い上げありがとうございます。」
どうやら彼は既にアヤネのお客さんだったらしく、結界石を複数購入してくれているようだった。
あれは使っている人にしか分からない安心感があるので俺達の持ち込んだ荒唐無稽な話もすぐに信じてくれたのだろう。
今の世の中、あの金額で安全が買えるなら確実に喜んでくれるはずだ。
すると社長は真剣な顔で俺を見ると右手を差し出してきたのでその手を握り握手と同時にその掌の感触を確認する。
どうやら、この人は俺が思っている以上に変わり者のようだ。
「社長なんてしてるのに皮は厚くてしなやかなんですね。」
すると社長は口角を吊り上げて笑うと更に手を強く握ってくる。
ステータスを持っているかは分からないが予想以上に強い力を持っている。
「フッ、儂も昔はカメラを持って世界中を飛び回ったものだ。そして何があったとしても執念でこの地に帰って来た。だから君も無事に帰ってきなさい。」
「はい、そうします。」
この人は今の俺では思いもつかない様な修羅場を経験してここに立っているようだ。
どうりで他の人に比べて胆力があり、今回の件でも俺に協力してくれるわけだな。
そして俺はその手を放すと軽く挨拶を済ませると手を伸ばして傍にある窓を開いた。
すると心地よい風が吹き込み髪をなでるとそこに向かって一気に飛び込んで下へと飛び降りる。
「な!!!」
だがここはビルの6階なので普通に見れば身投げにしか見えない。
しかし今の俺には問題はなくスキルで体を強化し無事に地面に降り立った。
そして上を見れば社長が窓から顔を突き出し無事を確認して苦笑を浮かべている。
俺は軽く手を振って別れの挨拶とすると傍で待機している仲間の許へと戻って行った。
これで準備は整ったので俺達はそのまま車を走らせ空港へと向かう。
指定日は明後日だが早めに行ってあちらの状況も確認しておきたい。
政府が情報を流さないせいで地元以外本当に情報が無いのだ。
ネットでもある程度の情報は手に入るがかなり限定的で要領を得ない物が多い。
ただ、分かる範囲で見るとここ程には状況は良くなさそうなのが分かる。
(そろそろ人数も増えて来たからもっと大きな車に買い替えるか。)




