夏、君を待つ理由 (短編)
この、自粛期間に何かやってみようって事で書いてみました!
未熟な身ですので、おかしな点、改善出来る点等々あると思います。
何かありましたら、感想などで教えて頂けたらなと思います。m(_ _)m
夏、燃やすかのように太陽が一帯を照らす。
私の周りには、青い簡易ベンチが2つと、萩ヶ岡町田んぼ前と書かれたバス停の看板、そしてベンチの横にずんっと生えている電柱だけだ。
いつも私は、この電柱の影に隠れて太陽の陽から隠れている。
けれど、陽は隠れても隠れても電柱を回折し心を照らす。
「夏葉!まだ教室にいたのか?」
春樹が忘れ物か何かを取りに来たのだろう。机で教科書とにらめっこして気づかなかった私に声をかけてくれた。
「うん、ちょっとだけ残って復習したくって。春樹はどしたの?やっと勉強する気になったの?」
「流石真面目、学年1位だわ。いつも通りまたお世話になるに決まってるだろ!俺は部活の練習着取りに来た。」
私と春樹はこんな感じで軽口を叩き合うくらいの仲だ。
いつも通りのやり取り、関係。テスト前になると春樹に勉強を教る。私にとって、かけがえのないもの、時間であり思い出だ。
言い換えれば、二人だけの時間を存分に過ごすことが出来る。確かに、放課後の教室も私は好きだ。だけど、お互いの部屋で勉強する方が私はしっくりくる。
だから、勉強を春樹に教えるのは楽しい。けどそんなことは絶対にバレては行けない。
「えー、めんどくさい。ちゃんと春樹が普段からコツコツやってればいいんでしょ」
ちょうど私が話した瞬間に、私の席は太陽が壁で隠れて暗くなった。春樹のいる場所は反対に太陽に照らされてオレンジ色に包まれる。
「うお!眩し!」
そう言って、手を掲げて太陽の、陽を遮る。それでも目元だけが暗くなるだけで全体は変わらない。
「俺は、今は部活が忙しいからいいの。新チーム始動してすぐだしな。あと少しで夏休みだし、そしたら大会もあるし、練習試合もあるし合宿もあるしで忙しいんだよ!」
「全く、それだったらはやく練習戻りなさいよ」
本当なら、春樹と話していたいし、一緒にいたい。
けど、今の春樹は輝いている。だから、私が背中を見守り続けるんだ。
「それもそうだな。まぁ、自主練習だけどな。じゃあ行ってくるよ。」
そう言って、最後にテストもよろしく!って捨て台詞を残して行った。
そして、再び太陽が私を照らし始めた。
教室は陽光でオレンジ色に輝いている。きっと私もそうだ。さっきの春樹と同じようにオレンジ色に輝いている。手鏡を見て、髪の毛を確認し、少しだけ直す。
「あれ?私、こんなに顔赤くなってる?嘘!?もしかして、この顔で話してたの!?最悪!」
余計に顔が紅潮しているのが分かる。
「ふぅ、落ち着け、落ち着け。よし!勉強、勉強」
軽口頬を叩いて気持ちを入れ直す。教科書に顔を向ける。
けれどやっぱり、さっきの春樹の笑顔は脳裏からは消えることは無かった。
「どうしよう、まだ忘れられない・・・・・・」
場面変わって、私は今、家路に着いているところである。家に帰るためにバス停でバスを待っている。
学校の、最寄りの駅ではない。学校から少し外れた周りには田んぼと山の裾が広がってるバス停だ。
この景色を求めて、わざわざ学校から25分程歩いている。
ただ、この景色だけが理由ではない。もちろんこの景色も好きだが、このバス停はいつも私が春樹と帰り?に使っていたバス停だ。私が、数年前に春樹に教えたのが始まりだ。
それ以来、たまにこうして足を運んでいる。もしかしたら、春樹に出会えるかも、と思いながら。
バスが車ではあと20分はある。その間は、春樹の、ことをら考えながら陽に照らされたり、遠くで聴こえる虫の鳴き声をBGMにして授業の復習をしている。
三角関数だとか、関係代名詞だとか、運動エネルギー、世界の政治体制、国語の文章等、頭の中で何度も何度も繰り返す。
すると、一瞬虫の声が止んで、一際強い風が吹き抜けて田んぼを凪いだ。風が稲穂を駆け抜けて言った。
髪を抑えて、風が流れた方を見ると遠くに誰かが歩いていた。ただ、逆光のせいで誰かがこっちに向かって歩いているということしか分からない。性別、身長、そんな事すらも分からなかった。
少しだけ、気になったがそんな事を気にしても無駄な事だと思い、再び頭の中で復習をはじめた。
それから、1分から2分程がたった頃だろうか。足音が左の方から聞こえてくる。ただ、電柱に隠れて、少し動かないと見えなかった。そして、少しだけ体を、動かすとそこには、いつも田んぼ仕事をしてるおじちゃんがいた。
「おお、なっちゃんか。学校帰りかい」
「はい、そうです。徳持さんもお疲れ様です。」
「ありがとうね、気をつけて帰るんだよ」
そう言って、徳持さんはまた歩いていった。
少しだけ、私は期待していたんだ。もしかしたら春樹かも。そんな。
けど、現実はそんなに上手くは行かなかった。
少し下を向いた時、左の方から電柱に、隠れていた太陽が顔を出した。あと少しで地平線にかかりそうな位置だ。教室の時と同じように私とその周り一帯をオレンジが再び包む。
その時だった。
「夏葉?」
右上からかけられた聞き慣れた声。
「春樹!?どうして!」
「ああー、いやー、たまにはこっちから帰ろっかなって思って。」
思っても見なかった幸運。必死にニヤけそうになる顔を整えようとする。携帯で時間を確認するついでに反射で、顔を確かめた。
「えーと、あと5分位でバス来る」
「オケ」
そう言って、隣の電柱に体重を預ける。さりげなく私に陽光がかかっていたのを見て遮っていた。
春樹はこんな風に、さりげなく気遣える。
だから私は彼を好きになったんだ。
けど、好きになってもう何年経つだろう。未だに気持ちを伝えられていない。それどころか、昔よりも素っ気ない対応をしてしまっている気すらする。
2人に沈黙が続いていた。それを破ったのは春樹の思いがけない話題だった。
「そう言えばさ、うちの部活のマネが部長と付き合い始めたらしい」
「ええ!?つゆちゃんが!部長って誰だっけ?」
驚いた。まさか、つゆちゃんが付き合ってたなんて。
「部長は長谷川。こないだに遊びに行ったんだって、その時に」
「そうだったんだ」
私は、ずっと足踏みしている間に周りの人は付き合い始めている。私も何とかして春樹に気持ちを伝えたい。そんなに焦りが生まれる。けど、なかなかに言い出せない。
少し考えこんでいるふうに見えたのだろう。
「どしたの?夏葉?大丈夫?」
「うん大丈夫」
今、伝えてみようか?伝えてみてもいいんじゃないか?
「あのね、春樹」
「うん、どうしたの?」
「あのね」
「うん」
「私!」
ちょうどそこへ空気を読まずバスが到着する。
「あ、バスきた。で、どうしたの?夏葉」
冷静になった。やっぱり今は違うのだろうか?分からない。けど、
「ううん、忘れ物学校にしちゃったの思い出して」
「え?じゃあ」
春樹が言おうとしたのを静止するように。
「大丈夫!先に帰ってて」
「そ、そうか。分かった。けど、何かあったら連絡はしろよ?」
そう言って春樹がバスへ乗り込んでいた。
多分これで良かったんだ。まだ今じゃない。
君に気持ちを伝えるのは。証拠にバスが来た瞬間に太陽が地平線に潜り込んで一気に暗くなってしまったから。
これは、私のタイミングていいんだ。焦らなくても、私と春樹の関係が無くなることは無い。私らしく、ゆっくり足踏みしながら行けばいいんだ。
こうして、また夏に君をここでこうして待とう。
思い出のバス停で。
そうしたら、きっと伝えるんだ。
これはその時の練習。
「君のことが好きです!」
「それって俺の事?」
「ええ!なんで後ろにいるの!」
「やっぱり気になってバス降りてきた」
「ちゃんと伝えるつもりだったのに。もういいや」
「大丈夫だよ、俺も君が好きだったから」
「これからもよろしくお願いします」
「こちらこそ」
二人とも顔は赤色に染まっていた。
夏、君を待つ理由が出来ました。このバス停で。
太陽はこれからも私達を照らしてくれる。
今回の短編はいかがでしたでしょうか?
ほんの少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです!
また、前書きにもら記した通り、感想などもしよろしければ、書いていただけたりするととても喜んだりします。
このような駄作に貴重な時間を割いていただき本当にありがとうございましたm(_ _)m
このコロナ騒動がいつ終息するのか、全く予測が出来ませんが、今1度皆さんでこの危機を乗り越えることが出来なと思います!是非、一緒に頑張りましょう!