第四話:朝ごはん
「……朝か……」
スマホのアラームで目を覚ます。
はあ、とため息ひとつ。それから、大きく伸びをすれば、大きなあくびも一緒に出た。
仕事柄、身だしなみだけは整えないといけないので、寝汗を流すために朝風呂。この時間を睡眠に使いたい。
着替えてアパートを出て、最寄りのコンビニへ。
ここで、朝昼の糧を調達する。
近所のスーパーの半額総菜なんかあれば食べてから出勤するんだが、あそこは魔窟だ。鬼より恐ろしいナニカの片鱗を見た気がする。
それ以来、半額は諦めた。三割引きでいいじゃない。待ってる時間が何より無駄ということに気付いたから。
今日のラインナップを拝ませてもらう。
パンの棚を冷やかしてから、麺類へ。
『1日分の野菜が摂れるじゃじゃ麺』
……うん? そこはビーフンとか焼きうどんとかじゃないのかな?
なんとも気になったので、購入。ピリ辛らしい。
通勤途中の公園で、朝食。腹が減っては、仕事という名の戦は出来ないからな。
しばし、無心で食事をする。すると、昨日のことなどまるで無かったような気分に……
朝っぱらから着信音。
チッと舌打ち。どこのバカだよと思いながらディスプレイを見ると……
( ^ω^ )
あー、また顔文字だよ。朝から機嫌良さそうだな。
『もしもし、わたし、メリーさん』
はいはい、おはようさん。お兄さん(おじさんではない断じて違う)への独り言は楽しいのかい?
『昨日は新しいパパの上で寝たの。中々の寝心地だったの』
いきなりデッドボール投げ込んできやがった!
危うく吹きそうになって、なんとか耐える。
二段ベッドの上の方な!? 下の方が肉屋の店主だったってことな!? もしくは二階で寝たのか?
『今日の朝食は、トースト、目玉焼き、厚切りベーコンのソテー、生野菜サラダ、そして味噌汁だったの。なんで味噌汁? 意味不明なの』
味噌は発酵食品だから体にいいって言うからな。
しかし、俺もトーストならコンソメスープか野菜スープを食べたい。ポタージュ系のやつでもいいな。
せっかく生野菜サラダがあるんだから、それそのまま煮て塩とコショウで野菜スープにすれば良かったろ?
なんで味噌汁にしたんだろうな?
理由聞いてないの? メリーさん?
『焼きたてのトースト、半熟トロトロの目玉焼き、肉汁滴る厚切りベーコン。どれも絶品だったの』
いきなり詳しくなったが、生野菜サラダと味噌汁はどうしたよ?
お残しは許しませんぜ?
『……野菜は嫌いなの……。でも、頑張って食べたの。それと、悔しいことに味噌汁は大変美味だったの』
悔しいかよ? 美味しい朝食、結構なことじゃないか。
……俺も、作ってくれる嫁さんが欲しいと思ったことはあるよ。
『腹ごなしに、中央公園辺りに散歩にいくの。また電話するの』
がちゃ、つー、つー、つー。
「中央公園か……」
この町、中心部にある中央西公園と、住宅地の西中央公園があって、どっちも中央公園っていうから紛らわしいんだよな。
……行ってみるか。
好奇心は猫も殺す、とはいうけれどな。
人物紹介
・俺:主人公。男性。
……備考:職業・会社員。朝昼は大体コンビニ飯。彼女募集はしていない。
・メリーさん:謎の存在。女性(推定)
……備考:出されたものには文句を言わずに完食する主義。食べた後に文句を言わないとは言ってない。ソーセージが大好き。