第二十四話:お礼
「……い、いやなの……。来ないでほしいの……」
目の前には、涙目のメリーさん。
俺の手には、お礼の品。
メリーさんは、首を横に振って拒否するが、彼女の後ろには先住犬たちが列を成し、壁となっている。
なあ、メリーさんや、そんなに嫌がるものではないぞ?
…………ほら、可愛くしてあげるから。
「急な話で申し訳ありません、マダム」
それほどゆっくりしていたつもりではないが、お礼の品を買った時には、日が傾き始めていた。
「いいえ。退院して何よりでした」
軽く挨拶を終えて、庭へ案内される。そこでは、金髪の少女が多くの犬たちと戯れていた。
近づく俺たちに最初に気付いたのは、大きな黒い犬。
伏せしていた状態から立ち上がると、中々の大きさだ。
「よう、くろすけ先輩」
よう、送り狼。前は世話になったな。
なんか普通の犬やってるっぽいから、黙っとくけどな。
俺が声をかければ、ふんふんと鼻をならして匂いを嗅いでいる? 後ろに回るのはなんでだろうな?
「メリーさん、こんにちは」
桜井さんが挨拶すれば、
「お姉さん、こんにちは! なの!」
メリーさんも元気よく返事していた。
元気な笑顔でたいへんよろしい。
「……あ、もう、いいの? 元気になったの?」
「おかげさまで。メリーさん、ありがとうな」
頭を撫でると、気持ち良さそうに目を閉じている。
かわええのう。
「で、そんなメリーさんに、感謝の気持ちと共に、お礼の品を買って来たんだ」
「……お礼の品、なの?」
「うん。これなんだけどな」
興味津々なメリーさん。
包装紙に包まれたプレゼントを受け取り、目を輝かせてこちらをうかがってくる。
大きく頷けば、包装紙を丁寧に開けていき、そして、
……表情が、凍り付いた。
さもありなん。
プレゼントの中味が、ネコミミカチューシャだったからな。それも、黒毛、白毛、茶虎毛の三種。
三種のカチューシャが、メリーさんの手からこぼれ落ちた。
俺は、落ちたうちの一つ、黒毛のネコミミカチューシャを拾い、メリーさんに近づく。
後ずさるメリーさん。
その後ろには、くろすけ先輩を始めとした先住犬たちが列を成し、壁となっている。
涙目になるメリーさん。
「あら、とても似合いそうね」
マダムはのほほんとした声をあげ、頬に手を添えている。止める様子はない。
最後の一人に目を向けるメリーさん。
固唾を飲んで見守る桜井さん。助けてくれそうにない。
ついに、逃げられなくなったメリーさんは、しゃがみこんできつく目を閉じてしまった。
あーあー、怖がらせるつもりはないんだけどな。
少し震えているようにも見えるメリーさんの頭を膝をついて撫でてあげると、段々落ち着いてきたようで。
んでまあ、その隙に、できるだけさりげなくカチューシャを頭に着けてあげた。
…………って、ヤバいな。メリーさんの太陽のような金髪に、黒毛のネコミミがヤバいくらい似合ってる。
「あらあら、メリーさん。とてもよく似合っているわ。可愛い」
マダムの評価は上々なようだな。
「わぁっ……メリーさん、可愛いです。ほら、見てみて」
桜井さんは、手鏡を出してメリーさんの今の姿を映し出す。
「……ふわ……」
目を大きく見開いているメリーさん。
お気に召したようだな。
……でもな、メリーさん。
…………まだ、あと二つ、残ってるんだからな?
………………どれが一番、似合うんだろうな?
……………………あれ? 今、ネコミミ動かなかった?
いやほら、ピクピクって、動いたよ?
後書き
・俺:主人公。男性。
……備考:職業・総合商社の営業。優良物件。
ハーレム願望はありません。
メリーさんにネコミミ。
フードもいいけれど、カチューシャもヤバいくらい似合ってて興奮した。
・メリーさん:少女の姿の……怪異?
……備考:もうすっかりマダムの家の子。
この後、取っ替え引っ替え何度も何度も。
……あ、ネコミミの話なの。
・桜井さん:同じ会社の、同僚の女性。
……備考:会社内では、入籍カウントダウンな扱い。
ネコミミメリーさんが可愛すぎて、危機感感じます。
あのお店、また行ってみようかなぁ?
・西のマダム:西の高級住宅街に住むお金持ち。女性。
……備考:生まれも育ちも上流階級。美味しいものと可愛いものが大好き。
つまり、メリーさんが大好き。
ネコミミカチューシャを見つけた主人公グッジョブ!




