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父との特訓


次の日、ゆっくりと身体を休めた俺は朝食を取った後、父さんと共に村の外れの誰もいない場所で特訓をしていた。この場所は昔から俺と父さん(ゼルバ)でずっと特訓していた思い入れある場所だ。


「すごいなぁ。前よりも剣の振りが速くなってるじゃないか!鍛錬は怠ってなかったみたいだな」


「そんなの当たり前でしょ!いつか父さんを超える冒険者になるんだから!」


「はは、俺もうかうかしてると一気に抜かされてしまうな」


冒険者になりたいというのは父さん(ゼルバ)を見て憧れたからだ

。カッコいい、楽しそう、そんな感じの職業を探していた俺にとって、冒険者は理想の職業だった。だが、冒険者になるには、最低でも6歳にならないとなることはできない。


「よし、身体も暖まってきた頃だろう。そろそろ手合わせといこうか!」


「うん!負けないよ!」


そう言って俺は剣を模した木の棒を構えた。父さん(ゼルバ)も同じ物を持ち構えた。


「とりあえず、やっておこうーー【身体強化・中】!そしてーー【剣神よ、我に力を与えよ••••••斬!】」


俺はやる前に身体に【身体強化・中】と【剣術強化】を使った。身体強化は身体の強度、速度、柔軟、敏捷性、全ての能力を上昇させるスキルだ。身体強化にもレベルがあり、小・中・大・特大・絶の5段階に分かれている。【武神の加護】を持っている俺は最高レベルの【絶】まで引き出せるのだが、使うと、まだ5歳の身体ということもあり、そのレベルの動きに身体が追いつかず、下手をすると、骨折などの重傷をする恐れがある。最後の手段として取っておくべきものだ。


そして【剣術強化】はその名の通り、剣術を強化するというものだ。以前にも話したが、俺のステータスに表示されているレベルはあくまで、強化無しの状態を映している。この【剣術強化】は【剣神の加護】を持っていないと、使うことはできない。剣神だけあって、強化された後の力というものは、上記を逸する程の力となる。その力は剣術Cだった者が急に剣術Sになるようなものだ。だからこそやむを得ない場合以外は使うことを控えていたのだが、今回ばかりはあの父さん(ゼルバ)が相手ということもあり、いつもよりも気合いが入ってしまい、使ってしまった。これが後で自分の首を締めることになるとも思わずに••••••。



「準備はいいか?」



「うん!始めよう!」



俺はゆっくりと肩の力を抜いた。これは剣を振る前の当たり前の行動だ。無駄な肩の力は抜け!そう教わった。目の前にいる父さんに!


「では、いくぞ!」


先に仕掛けてきたのは父さん(ゼルバ)だった。剣を片手に持ち替え、姿勢を低くしながら、猛然と俺に向かって距離を詰めてきた。だが、



「遅くなってる••••••?」



決して父さん(ゼルバ)が遅いわけではないのだが、俺にはどうしてもゆっくりと動いているようにしか見えなかった。


「フッ!」


ゆっくりとした動作?のまま父さん(ゼルバ)が剣を振り下ろしてきた。それを俺はあえて剣で受け止めた。自分の力が父さん(ゼルバ)とどこまで競えるかを確かめたかったからだ。


「ほう!今のを受け止めるか!結構本気でいったのだがな!」


「••••••え?」


今のが本気?一瞬何を言っているのかわからなかった。あんなスローな動きで本気?おかしい、どうもおかしい。剣を受け止めながらそんなことを考えていた。


「それに、力も強くなったな!これだけ押しても倒れぬとは、もう冒険者としてもやっていけそうだな!」


「そ、そう?嬉しいなーあ、あはは••••••」


押してるんだ。てっきり気を遣っているのかと思っていたけどどうやら違ったらしい。



「父さんばかりずるいよ!次は俺の番だ!」


強引に剣を外すと俺はバックステップで距離を取り、そこから再び父さん(ゼルバ)に向かって襲い掛かった。


「いくよ!」


「こい!」


【身体強化】と【剣術強化】をしていたこともあり、身体がすごく軽かった。ダッシュも平常時よりも数倍は速く走れていた。剣を持つ腕も今までにないくらい軽く感じられた。


そして父さん(ゼルバ)に向かって俺は剣を振り下ろした。


「パアァァァァーーン!!!!!」


俺の剣が父さん(ゼルバ)の頭を打った音が辺りにこだました。


「••••••」


父さん(ゼルバ)は何が起こったのか理解が追いつかないらしい。それもそうだろう。気がついた時にはすでに面を打たれていたのだから。

ただ、理解が追いつかないのは俺も一緒だ。父さん(ゼルバ)の面を打ったという確かな手応え。それは喜ぶべきなのだがどうも素直に喜ぶことができない。無理もない。あの目標としていた父さん(ゼルバ)との対決がこんなにもあっさりと勝負がついてしまったのだから。だから理解が追いつかないというのは今の俺の実力のことについてだ。あの父さんを一掃する程の力は一体どれほどのものなのか?場合によっては抑えなければならないなどなど。考えることがたくさんあった。



「セ、セレン?お、おまえ一体?」



まるで別人を見るような視線を向けてきた。



「ごめん父さん。今は何も言わないで。俺も整理したいから」



その後俺と父さん(ゼルバ)は、なんともぎこちない空気のまま、特訓に励んだ(対決は行わなかった)。




 【キャラ紹介】



 ゼルバ・ディクトリア



セレンとルージュの父親。冒険者をしていて家族とは離れて暮らしている。毅然とした性格で何事にも決して手は抜かない主義。だがルージュに関しては時々親バカな一面を見せることもしばしば。冒険者ライセンスはCランク。










少し間が空きました。

次回をお楽しみに!

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