第2話 木皐月智也はフラグを回収した……くない
「って、フラグか?」
「俺に限ってそんなことは絶対ない」
と言って、拓馬と大声をあげて笑った。
そんな俺たちを横目に、彩乃は難しそうな顔をしている。
「へー智也にそんなことが……これはもしや幼馴染のあたしに危機が訪れているのかしら……」
「彩乃、ぶつぶつなに話してんだよ」
「うっさい、バカ」
へーい、あっしがわるーござんした。
ぶつかった時、彼女から、彩乃とは違い、胸の感触がしっかりと伝わったのは秘密。
「……いったぁぁぁ! 彩乃、なにすんだよ!」
「え? 別に虫がいたから潰しただけ。気にしないで」
「チッ……」
俺は不条理なシステムを組まれている幼馴染から目を逸らし、正面にいる転校生を見た。
「今日からこの斗西高校に通うことになりました霞ノ雪詩葉です。みなさん、よろしくお願いします」
霞ノ雪詩葉……かすみのゆきうたは、って名前なのか。
彼女が挨拶を終えると、クラス中に溢れんばかりの拍手が巻き起こる。
男子の盛り上がり方っていったら尋常じゃない。
霞ノ雪詩葉は、騒がしいクラスの中で、すでに地位を確立していた。
醸し出すオーラが違うというか。
「それじゃあー席はどこがいいかー。じゃあ、あそこにいる少し目つきの悪くケツに風船がついている男の席の横にでも座ってくれー」
「はい」
ちょっと待てい、俺のことこき下ろしすぎじゃないですか!?
このタヌキじじいめ……覚えてろよ。
しかも謎の呪詛の声がクラスから聞こえる。
「どうしてあいつの席の隣なんだ」
「よくよく考えれば、あの木皐月の周りに光明寺拓馬様がいらっしゃるのね。穢らわしい存在ね、あの男」
いや、俺は何も悪いことシテナイヨ?
みんな、ひどすぎない?
「智也、気にすんなよ」
「た、拓馬……!」
「でも、お前は超絶鈍感野郎だから立ち位置考えろYO」
親友の追撃を受けた俺は完全に撃沈した。
光明寺拓馬はいつからテンプレギザ野郎になったのだろうか。
「俺の味方はいないのかよ……」
俺がひとり悶々としてうち伏せでいると、隣の席の椅子を引く音がした。
ーーあの朝の時と同じ横顔、美しい。
スラリとしているから、椅子に座った感じもすごく良い。
そして、儚げな微笑みを讃えながら霞ノ雪詩葉は、こちらに向かって話しかけてきた。
「これからよろしくお願いします。朝、会いましたよね?」
「あ、あーそーいえばそんなことも……あはは」
「名前はなんとおっしゃいますか?」
「あ、俺? 木皐月智也」
「木皐月くん、あの時はありがとう」
「あ、ああ。そんな礼言われることなんてしてないし、ははは」
あ、やべ、今俺すっげーデレデレしてんじゃない?
俺はふと周りを見渡す。
大丈夫、意外にも誰も俺とこの転校生の会話を気にしていないようだ。
転校生と初っ端から会話を交わす、それも彼女はこれからクラスカーストトップ層に入ること間違いなしの美少女だからな。
だが。
あるまじきことに、大モブの俺は、眠気を誘う朝礼の最中、寝てしまった。
「伝えたいことがあるんだけど、寝てるし、これ置いときますね……」
何か霞ノ雪詩葉が話しかけてきたようだったけど、俺は昨日夜遅くまでラノベを読んでいたので極度の眠気に襲われていたのだ。
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