第11話 木皐月智也と霞ノ雪詩葉はご飯を食べたい
お腹の音が鳴った時ーー
こういう時、人ってなんだか恥ずかしくなるんだよな、ほんと。
俺は急いで目線を外した。彼女に気を遣って。
うそ、美人すぎて直視出来なかった。
首元から耳元まで真っ赤に染め上げこっちを見ていた霞ノ雪詩葉の表情に心が揺れる。
「では……いただきます」
席に向かい合い、ごはんを食べる。
何年ぶりだろう、他人と一緒に食事をするのは。
「味は……?」
「すっごく美味しいです! こんな料理私には勿体無いくらいで……」
「そんな褒められるとー」
困っちまうなー、お箸をお皿から口元まで運ぶ姿も美しい。
というか、可愛いすぎる。
無言で食べ進めるのも、と思い俺は、正直なところを霞ノ雪詩葉に打ち明けようと思った。
「本当に真緒も喜んでた。俺もあいつに何もしてやれなくて不甲斐なかった
けど、明るくこうしてここまで妹と頑張ってきたんだよな」
やべーしみじみとした雰囲気になってるけど!?
俺、こういうのは似合わないタチなんだよなー。
話をどうにかして変えようと思い、別の話題を振る。
「あっ、そうそう! 美味しいジュースをさ、この間真緒がご近所さんに頂いたとかいうので、確か冷蔵庫で冷やしてあったと思うんだけど……飲みます?」
「えっ……あ、の、飲みます」
「じゃあ取ってくるね」
「私が取りますよ……冷蔵庫に近い所に座ってますから」
「いや、いいよ」
俺と霞ノ雪詩葉は同時に席を立ち上がった。
ところが、彼女は足を挫いてしまい、俺にもたれかかってきた。
「あっ……!」
「ひゃっ……!」
霞ノ雪詩葉と抱き締め合うような形になってしまった。
身体がくっつく。
やばい。
その時だった。
「ただいまーって……あれレレ!?」
やばい、真緒が帰ってきた!
こんな変なところを見られるとは……
俺たちは急いで元の姿勢に戻る。
「あわわわ、わ、私はな、何も見てもいませんし聞いてもいませんからっ!」
「ち、違うんだってば、真緒!」
「やっぱり二人はそういう関係で……ご、ごめんなさい! お邪魔しました!」
「誤解なんだよぉ、真緒!」
「わ、私は自分の部屋でゆっくり片付けでもしとくので。ごゆっくり!」
真緒はくるりと踵を返し、急いで部屋に入って行った。
「霞ノ雪さん、足は大丈夫ですか?」
「大丈夫です……けど、木皐月くんに迷惑かけちゃったみたいでごめんなさい」
同級生、それもあんな美人な転校生ともうおかしくなっているなんて言われたら、俺は多分校内で半殺しにされちまう。
でも大丈夫だ、ここはあったか我が家。誰も見ていない。
霞ノ雪詩葉は俺に掴まれた腕をじっと見ている。
もしかして俺たちが変なことしていたって思われるのがショックすぎるのか?
さらには俺たちが付き合ってるとか!? とか真緒に煽られたのが心に引っかかったとか!?
ったく、分別のつく真緒が誤解するはずないのにあんなこと言いやがって。
「霞ノ雪さん、あ、あの……」
俺の言葉を遮るように霞ノ雪詩葉は言った。
「そろそろ時間ですし……失礼させていただいてもいいですか?」
「あのう、ごめん、俺があんなことしたばっかりに気分悪くさせて……」
俺の呼びかけに応えることなく、静かにご馳走さまをして、玄関の方へわき目も振らず、帰ろうとした。
俺も申し訳ないのなんの、女性に不埒な行いをしたことに落とし前つけるため、武士道精神らしく切腹しようと覚悟した、その時、霞ノ雪詩葉は急に立ち止まって、俺の方を振り返った。
「木皐月くん、本当に覚えていないんですか?」
振り返った時に浴びた良い香りに俺は少し酔いそうになりながら、追い討ちをかけるように霞ノ雪詩葉から微笑みかけられた。
「覚えて……ない?」
「ええ。じゃあ……今から3つ数える間に思い出さなかったら罰ゲームですよ?」
「ば、罰ゲーム!? やべっ、って何を俺は思い出せば良いんだよ!」
「それは答えですよ。ふふっ、じゃあカウント始めますね。3……」
「お、俺と霞ノ雪さんって出会ってすぐじゃん! 思い出すって何を……」
「2……」
俺は極限状態になりながらも、必死に頭を働かせて、真緒がなんだか霞ノ雪詩葉と知り合いっぽい感じだったことを思い出した。
廊下から真緒の部屋の扉を叩くが、応答はない。
「真緒! 一生のお願いだ! ちょっとお兄ちゃんを助けてくれ!」
「1……」
「うぉぉぉぉぉぉ……俺なんかまだ悪いことしましたか!? 反省してますぅ!」
「0!」
終わった、というか始まる前から決着はついているだろ、こんなもん。
「じゃあ罰ゲームとして……」
俺は喉をゴクリと鳴らした。
怖い、怖い怖い怖い怖い怖すぎる。
なんか手のひらで転がされている感半端ないけど、逆らえるような身分でもないし(大大大前提として真緒の留学費用をなんだかんだ負担してもらった)
まさかホストにでもなれとか、臓器を売れとかそんな体に傷をつけることなんてしたくないよぉぉぉぉぉぉ!
「明日の朝から、しばらくの間、一緒に朝登校してくれるっていうのが、罰ゲームです」
俺は、目の前が真っ白になった。
フラッシュを焚かれたような感覚がした。
「じゃあ、明日また来ますから。マンションの前で、待っててくださいね?」
扉はゆっくりと閉まっていった。
俺はしばらくその場に立ち尽くしていた。
「おい、待てって。まだメシが残ってるって……っていつ食べたんだ!? あいつあの量もう食べてしまったのか!?」
今日分かった。彼女は小食ではないのかもしれない。
もしくは、生姜焼きは好き、だったのかもしれない。
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