第10話 木皐月智也は霞ノ雪詩葉の動機がわからない
真緒がいなくなり、リビングに残された俺と霞ノ雪詩葉。
どうして霞ノ雪詩葉があんな大金を持っているのか。
100万円の紙の帯が付いているところを生きてきて初めて見た。
霞ノ雪詩葉の家はお金持ちなのだろうか。
俺は真緒と一緒に霞ノ雪詩葉のご両親のところに土下座してお金を返しに行かなければならないだろう、どう考えても。
普通の親ならば自分の娘が勝手に見ず知らずの他所様に大金を渡すなどあってはならないことだ。
俺はいろんなことに思いを張り巡らす。
さっき、リビングから出て行く時の真緒の笑顔は忘れられなかった。
夢へ一歩踏み出すことができた人間が見せる表情はすごくイキイキしていた。
でも、頭の中に浮かんできた現金の束が、俺を一気に幸せな気分から引き戻す。
怪しすぎるだろ……屋上といい風紀部への入部といい、霞ノ雪詩葉の行動は意味不明なことばかりだ……
真緒が急に出て行って、部屋からいなくなり、二人っきりになって、気まずい雰囲気が流れるが、これはもう、霞ノ雪詩葉に聞くこと聞かないと落ち着かない。
「霞ノ雪さん、その……ありがとう」
「そんなお礼なんて……」
霞ノ雪詩葉は謙遜する。
「あ、それと……お金、持ちなんですか?」
「え、ええ……っとそういうことになり……ます」
「そう……なんだ、すごいね」
よくよく考えてみたら200万円ポンっと渡せる高校生なんて相当なお金持ちのお家じゃない?
なんだか同級生なのに遠い存在に思える。
「私って……嫌味な女だとよく言われて、以前通っていた高校ですごくイジメられて……中学校でもイジメられて……小学校の時には……実は……」
俺は自嘲ぎみに笑った。
いじめ?
だからこういう美人で性格も良くって丁寧で控え目な女子はコンババの女子どもに狙われるっつーーの!
男みたいに目立たなければそれでいいなどというモブ理論は、彼女には通用しない。
世の中、おかしい。
「どこが嫌味なんだろうな。そんなことを霞ノ雪さんに言ってた奴らって本当バカじゃねーの? 大体イジメなんてさ、どっかの芸能人が言ったように、変態がすることじゃね?」
「あっ、あのうっ……」
霞ノ雪詩葉はすごく不安な面持ちだったのに、俺がいきなり変態なんて言い出したもんだから、一瞬笑いそうになりーの、泣きそうになりーの、すごく忙しそうに表情が動いている。
「だよな、イジメの話をしてるのに変態だなって言ったりするのはおかしいよな。あははは、いや、どっかの芸能人がさ、『ぼくは人をいじめたいと思ったことはありません!でも嫌いな人はたくさんいます。むしろ多い方ですw なぜ嫌いな人がいても、いじめたいと思わないのか。それは、いじめという行為が嫌いな人に自ら近づいて関わって行くという奇妙な変態行為だからで、ぼくは変態じゃないからです✩(笑)』ってさ、言ってたんだよ」
「……ふふっ、木皐月くんって、物知りなんですね」
「も、物知り!? そ、そうかなぁー? 無駄なことばっかり知っててろくに定期テストに役に立つことなんてひとつもないお蔵入りのネタばっかしで」
そこまで言って、俺は自分が馬鹿なことをペラペラと話していることに無性に恥ずかしくなり、照れ笑いした。
おっかしいーな、普段ならクソつまんない俺が自ら進んでまくし立てることなんてないのに。
「そういえば霞ノ雪さん、ご飯は食べました……?」
「忘れていまーー」
お腹の音がした。
「ぐ〜〜」
ハッとして顔を上げた霞ノ雪詩葉と俺は目が合った。
「ご飯食べますか」
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