第1話 主人公の木皐月智也は転校生の霞ノ雪詩葉に再会した
新連載です! よろしくお願いします。
始業式の日、俺が机で朝礼の始まりを待っていると、教室に彩乃が入ってきた。
ちなみに俺は彩乃と一緒に登校していない。
中学校に進級した時から彩乃と微妙に距離感ができたような気がする。
「おはよー、彩乃!」「今日もかわいいね」「彩乃おっはー」
クラスメイトから口々に挨拶される彩乃。
優れた頭脳と穏やかなでも横暴な人柄のお陰で、先生たちの覚えがよく、同級生の誰からも慕われている正統派優等生だ。
俺を便利屋と間違えている節があるのはみんなに知られていない。
「おい、智也。未来の奥さんのお出ましだぞ」
「うっせーよ、拓馬」
俺を茶化したのは、親友の光明寺拓馬。
死ぬほどイケメンでスポーツ万能で、完璧な男子高校生。
女子からの人気が高いことはもちろんだが、男子からも慕われている。
前の席から、こんな風に俺をいつも煽ってくる。
「最近は夫婦喧嘩すらしてないけどさ、あれか? 倦怠期ってやつ?」
「付き合ってもないし、彩乃はただの幼馴染だって言ってんだろ! どーも思ってねーよ」
「素直じゃねーんだから、ったく」
俺たちが無駄話をしている間にも、彩乃はスカートの裾も揺らさず優雅に、そして清らかに、ピンと背筋を伸ばして歩く。
「おはよー! 今日も一日、よろしくー」
彩乃は手を軽く振りながら、俺の後ろの席に着く。
でも俺に挨拶はない。
幼馴染だというのはもう昔の話。
彩乃と会話を交わさなくなってもうどれくらい経つのだろうか。
「ほーらーみんなー静かにしろー!」
先生は朝礼を始めるため、騒ぐみんなを注意する。
俺は左隣の席のに座っている幼馴染、五十鈴彩乃の厳しい目線を感じながら席に座っている。
「今日はだなー高校二年生の始まりというわけなんだが。そうだなー転校生が来たってことを言っとくぞー」
独特のイントネーションの俺のクラスの担任の先生は、廊下に向かって声をかける。
「入っていいぞ」
そうして教室のドアを開けて入ってきたのがーー
「それじゃーみんなに自己紹介をしてくれー」
ーー女子で、それもとんでもなく美人だった。
クラスの空気が一瞬で変わる。
「キャぁぁぁーーーーーーーー!」
「うぉぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉ!」
みんなが大きな叫び声をあげると同時に俺も目をまんまるくした。
俺が固まっていると、拓馬は不思議そうに俺をみてきた。
「智也、どうした?」
「いや、実はなーー」
俺は声を潜めて、拓馬に事情を説明することにした。
転校生は、今日の朝、俺に通学路でぶつかってきた本人だった。
見通しの悪いところだとは前から思っていた。
学校まで急いでいたのだろう、食パンを加えていたその美少女は見事に俺と正面衝突した。
おかげで食パンに塗ってあったマーガリンが彼女の制服に付いてしまった。
ちなみに、食パンは焼かれていなかった。
「いたたた……」
「け、怪我とかない? 大丈夫?」
「ええ」
「俺ちゃんと前見てなかった。ごめん!」
「いえ、私も……」
「これ良かったら使って」
俺はポケットからハンカチを取り出した。
「でも……あの、大丈夫ですから」
「いーよ。使ってよ、そのハンカチ。返さなくていいから。じゃあ」
俺はその女の子に手を貸してあげ、体を起こしてあげた。
そしてその場で別れたーー
「てなわけで、彼女、朝、通学路でぶつかってきた転校生なんだ」
どこかで見たことあるなと思っていたら、やっぱりそうだった。
「って、フラグか?」
拓馬はやけにニヤついていた。
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