8 無法の追跡者! 忍者がバイクでやってくる!(前編)
地球ファイト決勝大会四日目。
トーナメントAブロック、その第二回戦が行われる日である。
朝食時を過ぎた頃、忍者チームが借り上げたとある温泉旅館の一室。
畳に座し瞑想するは忍者代表ファイター、シャドウ・ウゲンタ。
精神統一により忍者パワーを研磨する。
「……ハチスケか」
「はい。そろそろ……」
障子戸越しに部下と会話するウゲンタ。
シン・巣鴨コロシアムに移動する時刻である。
車の手配を済ませ、外で待つのは地球ファイト実行委員会職員イガノ。
彼らは試合が滞りなく行われるよう、時間管理を主な役割としている。
ファイターが試合時間に遅刻するなどあってはならない。
万が一そのようなことがあれば――責任を取らなければならない!
「忘れ物はございませんか?」
「心配無用。さあ、出してくれい」
護衛の忍者に挟まれ後部座席へ乗車するウゲンタ。
イガノは助手席に乗る。
(妙だな……)
ウゲンタの様子をいぶかしがるイガノ。
(これから神風トオルと戦うには落ち着きすぎている。
昨日の取り調べから今日まで暗殺に動いた様子もない。
達人ゆえの平常心と言われればそれまでだが――)
「おい」
イガノの思考をウゲンタが遮る。
「地球代表が試合開始に間に合わなかった場合、勝敗はどうなる?」
「試合開始の時間は絶対です。鐘の合図で始まり、行司の軍配を掲げられた者が勝者!
その場にいない者に軍配が上げられることはありませぬ……!」
「なるほどのう……くくく!」
マスクの奥で小さく笑い声を漏らすウゲンタ!
「くくくくく……! ふははははは!!
ふはぁあああああっはっはっは!!!」
否、マスクの奥で大爆笑を漏らすウゲンタ!
(この余裕……まさか!?)
イガノは背筋に寒さを覚え――地球代表を担当する同僚の身を案じた。
◆◆◆
「よし、バスの時間には間に合ったな」
ブループラム霊山入口のバス停に並ぶ神風トオル。
妹のルリ、師のゴウショウも一緒である。
昨日はアレキカッパー大王の計らいにより、古代カッパ文明の神殿で一夜を明かした。
地獄の特訓により死の直前まで追い込まれたトオルであったが、キュウリのフルコース料理により体力は完全回復済みである。
「無事に特訓を終え、試合を迎えることができる……これもヤエベニのおかげだな」
忍者代表ファイター、シャドウ・ウゲンタ。そしてCIA四天王。
トオルの命を狙う者たちはついに現れなかった。
約束を果たしてくれた装甲くノ一・ヤエベニに感謝するトオル。
数分ののち、こちらに向かってくる路線バスが見える。
バスの運転手に笑顔で手を振るルリ。
この朝一番のバスに乗ればコロシアムに余裕で間に合う――誰もが思った、次の瞬間!
チュインンンッッッ!!!
甲高い金属音が響き、バスが真っ二つに両断!
チュドオオオオオオオオオオンンンンン!!!
そして爆発! バス真っ二つ爆発!
アスファルトの上で炎を上げる!
BOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!
その炎から飛び出す二台のモーターバイク!
高さ10メートル越えの大ジャンプだ!
「……ま、まさか!?」
「「くっくっく! そのまさかよ!!」」
中空から神風トオルを見下ろすのは――二人の忍者!
濃紺の忍者装束に身を包みモーターバイクを操縦!
「我が名はシップウ!」
「同じくハヤテ!」
「「我らウゲンタ殿の命により! 神風トオル! 貴様の命、頂戴する!!」」
着地と同時にアクセルを絞り加速!
バイク忍者が神風トオルめがけ突っ込んでくる!
「く……試合当日に仕掛けてくるとは!?」
拳を構え迎え撃たんとするトオル!
十分に加速した鉄の塊!
肉体を地球パワーで強化せねば対抗不可能!
体内で地球パワーを練り上げ、解放せんとした――その時!
「試合まで力は温存しておけ! 逃げるぞ!!」
ゴウショウがムンズとトオルの襟元を掴む!
もう片方には美少女JKのルリが担がれている!
「地球真拳・地球ダッシュ!!」
ゴウショウが二人を担いだまま地球ダッシュを発動し高速移動!
迫るモーターバイクから直角方向に回避!
道路端に設置されたガードレールをブチ破る!
その先に地面はない! 切り立った崖だ!
落下していく三人!
集団自決か!? 答えは否!
直下には道路が走る!
そう、つづら折り地形を利用した超絶ショートカットである!
「地球真拳! 地球着地!!」
落下エネルギーを相殺する地球真拳の高等歩法を使用!
走行中の自動車上にフワリと着地する!
「ここは危険だ! 直ちに降りろ!」
ドライバーの身を案じた神風トオルが屋根からフロントドアを開ける!
青ざめるドライバーを引きずり出し、道路脇へ優しく放り投げる!
「ぎゃああああああぁぁぁぁぁ…………」
一瞬にして背後へと遠ざかる元ドライバー!
空いた運転席にトオルが滑り込みコントロールを得る!
すでに助手席にはルリ、後部座席にはゴウショウが乗り込んでいる!
「奴らの狙いは……トオルを二回戦にたどり着かせぬこと!
まともに相手をしては試合開始時刻に間に合わぬ!!」
「ええい! なんて卑怯な忍者かしら!!」
鬼の形相と化すルリ!
ゴウショウは後方の様子をうかがう!
「先生の機転でだいぶ距離は稼いだはずですが――」
「兄上! アレを!!」
ルリが前方右斜め上を指す!
BOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!
崖の上からジャンプしてくるバイクが二台!
乗っているのは当然忍者!
「「逃しはせぬぞ地球真拳!!」」
ショートカットにはショートカットで対抗!
二台のバイクはトオルの数メートル先に着地!
アスファルトにバウンドし揺れる車体を制御する!
その隙にトオルの自動車がバイク忍者を追い抜く!
しかし即座にバイクが加速!
トオルカーを追う!
「ウゲンタ殿の優勝は忍者界の悲願!」
「忍者が支配する世界を作るため!」
「「我らに仇なす者には死、あるのみ!!」」
忍者たちが駆るモーターバイクはカワハギ社の『バショウ』!
排気量一万㏄のモンスターマシン!
メタリックパープルの車体が死神的にきらめく!
対してトオルが拝借した自動車はマツタケ社の『リキュウV8』!
マッチャグリーンの流線形セダンタイプマニュアル車だ!
排気量は『バショウ』に劣る8000㏄!
最高速度ではバイク忍者が有利!
「だが……バイクの操作をしていてはろくな攻撃はできまい!」
「「馬鹿め……ニンッ!!」」
ドロン! ドロン!
『バショウ』を駆るシップウ、ハヤテの後ろに白煙!
それぞれの分身が現れる!
時速300キロで走行するモーターバイクに直立!
一般庶民諸君であれば即アスファルトの染みと化すであろう!
忍者の持つ驚異的なバランス力のなせる業である!
「こいつらも分身を!?」
「「神妙に死ねい!!」」
神風トオルの読みもむなしく、分身シップウ、ハヤテがクナイを投擲!
六本のクナイがリキュウV8に迫る!
己の身はもちろんだが、車両が破壊されては試合時間に間に合わない!
神風トオルは回避するためハンドルを切らんとする!
しかし!
「運転に集中せよ!!」
後部座席のゴウショウが車から飛び出す!
アスファルトを蹴って跳躍、リキュウV8のトランク上に着地!
空を蹴り、発生させた衝撃波でクナイを撃ち落とす!
「「なにい!?」」
鉄板をも貫く威力のクナイ投擲が無効化!
目の前の男がただ者でないことを悟るシップウ、ハヤテ!
「貴様らごとき下級忍者……この俺一人で十分!!」
ソーメンにはごま油がよく合いますね!
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