1 唸れ地球真拳! 神風トオル対ドン・ナポリタン!(中編)
――ドン・ナポリタン。
イタリア最大のマフィア組織『ケチャッピーネ』のボスである。
その性格は冷酷非道。
無能な構成員は即始末し、ミートボールに混ぜて出荷してしまうのだ!
一般庶民諸君!
イタリア旅行の際にはケチャッピーネ印のミートボールに注意してもらいたい!
「お前にはここで死んでもらう! 決勝会場へは行かせん!」
「狙いはこの俺か! 郵便屋さんを傷つけたのもお前たちだな!?」
「いかにも! お前に召集令状が届かぬうちに始末するつもりだったが……しぶとい男よ!」
「それだけの理由で……何の罪もない郵便屋さんを!」
「HAHAHAHAHA! 何をクソスイーツなことを!
地球ファイトに挑む者……地球ファイターとなったからには常在戦場!
あらゆる手段を使ってライバルを減らすのが定石!
すでにサバイバルダンスは始まっているのだ!」
ドン・ナポリタンがマフィアマシンガンを構える!
拳を固く握る神風トオル!
「ボス! この程度の小僧! この私にお任せくだされ!」
マフィア集団から一人進み出たのは大柄な筋肉マフィア!
鍛え上げられた筋肉によりマフィアスーツがパツンパツンである。
神風トオルの前に進むや否や、ジャケットを脱ぎ捨てる。
「この俺はなあ! その辺の一般的マフィアとは違うのだ!」
そう言い放ち、両拳を胸の高さに構え格闘体勢を取る。
やや猫背の構え! 軽快なフットワーク!
明らかに殺人のプロ的挙動!
「ッ! 確かに……貴様は一味違うようだな」
「くっくっく……俺はなあ! 素手でプロレスラーを二十人以上絞め殺してきたのだ!」
「二十人も! なんという外道!」
「イエス! この俺の手で! お前もひき肉ミンチにしてくれるわあああ!」
「!?」
筋肉マフィアが瞬時にトオルの目前に接近!
殺人的超高速アッパーを繰り出す!
トオルのアゴに迫る拳! 恐るべき速さだ!
「もらったあああああ!」
「速――――くなあああいいい!」
グシャリ!!!
「あぎいいいいいい!!??」
筋肉マフィアの殺人的超高速アッパーよりも速く、トオルの殺人的超高速裏拳がその脳天を砕く!
凹型にへこむマフィアヘッド!
「この俺の前では……貴様の拳はストップ・モーション! 全く速くない!」
神風トオルをうっすらと覆う青いオーラ!
これは地球パワー粒子が大気中の物質と接触することにより生じる、アレやコレやの科学的根拠に基づいた発光現象である!
「我が名は地球真拳継承者! 神風トオル!
貴様らの狼藉……断じて許さぬ! 覚悟せよ!」
――地球真拳!
地球由来の超天然エネルギーである地球パワーを自在に操る拳法!
神風トオルの有する身体能力を地球パワーがさらに増幅強化!
圧倒的な戦闘能力を発揮するのだ!
トオルが拳を引き、気合を込めて追撃をかける!
「てえええええい!」
悪魔的遠心力の乗った高速上段回し蹴り!
トオルの踵が筋肉マフィアの顔面に炸裂!
バギャン!!! ボキッ!!!
ギュルギュルギュルギュル――ッ!!!
首が53000度回転! ボトルキャップのごとし!
筋肉マフィアの目が回る!
「殺されたプロレスラーの無念! 思い知ったか!」
「アガ……! アガ……!」
致死的ダメージを受け、もはや筋肉マフィアは戦闘不能!
平和的解決!
――そう思われた、次の瞬間!
ガガガッ! ガガガッ! ガガガガガー!
ガガガッ! ガガガガッ! ガガガガガー!!
「――ッ!!」
咄嗟にその場を離れる神風トオル!
背後から悪魔的銃撃を受け穴だらけのレンコンと化す筋肉マフィア!
そして爆発!
チュドーン!!!
木っ端みじんとなる!
殺人目的の銃撃を行ったのはドン・ナポリタンだ!
「神風トオル! よくも我がファミリーを痛めつけてくれたな!」
「何を言うか! 自分の部下を撃つとは! この人殺しが!」
「殺して何が悪いか! 我らマフィアの世界はキビシイのだ!
殺されずに死んだマフィアがどこにいるものかッ!!」
ドン・ナポリタンが部下に合図!
神風トオルに向けられる悪魔的数の銃口!
「愚かな……。この俺に銃弾は当たらん!」
「くっくっく! よけることができればな!」
「ッ!? ま、まさか!?」
「そう! そのまさかよ!!」
おお、見よ!
神風トオルの背後を!
マシンガンの射線上には――神風家の玄関!
そこには負傷した郵便屋さんと傷の手当を行う神風ルリ!
つまりこの位置取りは――!
「逃げれば大変! お前の妹はひき肉ミンチだ!」
「ええい、この外道が!」
「外道で結構! ビバ外道!
あの世へ直行! 殺人決行!」
ガガガッ! ガガガッ! ガガガガガー!
ガガガッ! ガガガガッ! ガガガガガー!!
非情なる悪魔的マシンガン掃射!
ドン・ナポリタン以下悪いマフィアンズがイタリア的に笑いながら弾丸をばらまく!
「――ッ!!」
神風トオルはその場から動かない!
殺人的銃弾を正面から浴びる!
「HAHAHAHAHA! HA―HAHAHAHAHA!!!」
おお、なんたる悪魔的残虐性か!
弾が切れるまで……マシンガンをひたすらに撃つ!
神風トオルとルリはひき肉ミンチと化し、ハンバーグ屋さんに出荷されてしまうのだろうか!?
――答えは否である!
「……甘いな!」
「――ッ!? ば、バカな!?」
「地球真拳の前では……銃弾など無意味! 無味無臭!」
なんと! 神風トオルは無傷で仁王立ち!
その手に握られているのは――鉄の塊!
そう! マシンガンから放たれた弾丸は全て受け止められていたのだ!
「これぞ地球真拳の基本技! 地球真拳・銃弾掴み!!」
「オーマイパスタ!?」
「地球真拳の威力、とくと味わうがいい!」
掴み取った弾丸を――神風トオルが親指ではじき返す!
そう! これぞ地球真拳の基本技――!
「地球真拳・銃弾返し!!」
機関銃以上の威力! 速度!
己の放った弾丸を逆に浴びせられる悪いイタリアンマフィア!
瞬時に穴だらけのレンコンと化していく!
「「「ギャアアアアアア――――ッッッ!!!」」」
あわれ! 一般黒スーツマフィアは全滅!
ドン・ナポリタンは部下を盾に生存! なんたるしたたかさか!
「おのれええええええい!!」
おお、見よ! ドン・ナポリタンが被っているナポリタン・スパゲッティを!
麺の一本一本が意思を持つかのごとく動き出し、ドン・ナポリタンの拳に固く巻き付いていく!
それはまるで――ボクシンググローブのごとし!
「受けよ! ミーの必殺技!
ナポリタン・キラーパンチいいいいい!!!」
――ドン・ナポリタンのナポリタン・キラーパンチ!
ニンニクとタバスコが効いたその拳は……目に入れば失明の危険性もある恐ろしい技だ!
非人道的極悪パンチが神風トオルに迫る!
しかし!
「見いぃぃえるううぅぅぅ!!!」
神風トオルは己の前腕で相手の拳を弾き、パンチの軌道を巧みに逸らす!
失明回避!
超人的な動体視力がなければできない芸当だ!
そして――がら空きとなったドン・ナポリタンのボディに正拳突き!
グシャリ!!!
「オゴアああああああ!!??」
吐血1リットルを撒き散らしながら吹っ飛ぶドン・ナポリタン!
庭の石灯籠に叩きつけられさらに吐血1リットル!
オリーブオイルの汗が噴き出す!
彼とてイタリア代表の地球ファイター。
暴走トラックに轢かれても10台程度なら耐えられる超人的肉体の持ち主だ。
しかし――それでもなお! 致死的ダメージ量!
「……勝負あったな」
「ぐぐぐ……ちょ、ちょっと待て!」
ドン・ナポリタンがフトコロから携帯電話を取り出す!
「おい! いつまで待たせやがる!
さっさと来んかい!」




