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1話 魔王様とオセロ

前半が序章感あります

 神隠し。それは神などの手により人が突然いなくなってしまう現象。古来より伝わるそれは現代でも起きている。現代ではそれを異世界転送と呼んでいる。

 そして今まさに現実世界とは別世界に1人の男が飛ばされた。

「っ、ここはどこだ?」

 男が飛ばされた先は荒れた土地だった。草木もほとんどなく人が住むという雰囲気ではない。ただ崩れた神殿の瓦礫のようなものが落ちている。

 それは魔界と呼ばれる世界だった。悪魔や魔物が住む世界だ。

 男は気づいた、自分が異世界に飛ばされたことを。

「やったー!異世界だ、チート能力で俺つえー!やっほー」

 男は喜びその場で小躍りした。

「さあ、どこに行けばいいんだ」

 男が数歩歩くと足元に魔方陣が現れた。

「ああああああ!!」

 そして男は爆散した。

 これがファンタジー小説ならば男の想像通りだろう。

 だがこれはコメディだ、そして彼は主人公ではない。だから彼は死んだ。特筆すべき内容もないモブだったからだ。

 男から数百メートル離れた場所に3人の魔物がいた。

「侵入者の死亡確認!魂の反応はもうありません、レオン殿」

 これまたモブの悪魔がレオンと呼ばれる鎧の男に報告する

「そうか、侵入者以外には?献上物はないのか?」

 献上物とは神隠しの物バージョンである。皆様も経験があるだろう。久しぶりにゲームをやろうと思ってカセットを探したらなくなっていることが。捨てるようなものでもないのになくなっている、それはまさに神隠しである。

「今現れたのは侵入者のみです」


「いえ、再び反応あり、何かが現れます!」

 もう1人のモブが報告する。

 先ほど男が立っていたあたりが怪しく光る。ドンっと激しい音とまぶしい光が当たりを包む。

 そして現れたのは人ではない、物だった。

「献上物です!レオン殿」


「そうか、では回収しておこう」

 レオンは現れた献上物を回収し城へと向かった。

 城の奥、魔王の自室のドアをノックする。

「レオンです、魔王様、献上物を持ってきました」


「むっ、来たか、入るがよい」


「失礼します」

 魔王、それは魔界に存在する王にしてこの地域に住む魔物たちを統治する存在である。その姿は一言でいえば幼女であった。角と尻尾が生えているだけの幼女である。

「魔王アイリス様、こちらが本日手に入った献上物にございます」

 

「ほおう、これは……」


「なんでしょうか、まったく用途がわかりませんが」


「くくく、レオンよ、我はこれを知っておるぞ」


「なんと、本当にございますか?」


「うむ、これはオセロと言ってなあちらの世界の遊戯道具なのだよ」

 魔王アイリスは引き出しから紙切れを取り出す。そこにはオセロの遊び方と書いてあった。これは献上物としてこの世界に現れたオセロの説明書の翻訳である。それをどや顔でレオンに見せつけた。

「ということでさっそくだがレオン、我と遊べ!」


「私でよければお相手します、遊び方を教えていただけますか?」


「うむ、読むぞ、え~っと、8×8の四角に白と黒の石を置いていく遊びです

 真ん中の4か所に白黒を隣り合わせにならないように置きます、遊ぶ人は白と黒に分かれて交互に自分の色の石を置いていきます。置かれている石と置いた石で相手の色を挟んだらひっくり返します。全部おまった時に数が多いほうの色が勝ちです、だそうだ」


「あきらかに8×8より多いようですが?」


「まあ、そういうのもあるんじゃろ、よし、我は黒、キサマは白だ」

 オセロが始まった。先行はアイリス、白い石を挟みひっくり返す。だが盤上の黒は3個である。

「では次は私ですね、はい」

 白の石に黒が挟まれひっくり返る。されど盤上の白、4つである。

 彼らはさらに繰り返す。だが一向に差が開かない。

 理由は簡単である、これがオセロではないからだ。

 マス目に白と黒の石を置いていく描かれている翻訳は間違っていない。アイリスは勘違いをしていた、ここでいう白と黒の石、とは表が白、裏が黒の石のことである。だがそれを黒い石と白い石と勘違いしたのだ。なぜなら目の前にあったのがちょうどそれらだったから。

 そう、これは囲碁である。

 だが彼女はまだ気づかない。彼女はバカだった。

 レオンは何かおかしいとは思っていた

(もしかしたらこの遊び方、間違っているのでは?

 ひっくり返すなら両面同じでは意味がないし)

 だがそれを口にすることなくオセロ(囲碁使用)は続いていく

 そしてバカも気づき始めた。

(あれ?これ数変わんなくないか?もしかしてこれ、オセロじゃない?

 いや、まさか、そんなはずはないだろう)

 そして盤上が石で埋まった。

「では数えるぞ、いーち、にー、さーん」

 数は同じである。数えるまでもないことだ。

 だがアイリスは丁寧に数えていく。

(数が違えばこの遊び方は間違っていないはず、違ってくれ、でないとどや顔でオセロとか言った我の立場が……)

 その間レオンも考え事をしていた

(やはりこの遊び方は間違っていた、これはオセロという遊びではない、だがそれを指摘してもよいのだろうか?せっかく楽しんでおられるのに水を差すような……だがこのままにしておけば魔王様が他の者と遊ぶときに恥をかくかもしれない)

「うむ、引き分けじゃな、キサマもなかなかやろうのう、次は他の者と遊んでみるかのう」

(やっぱこれオセロじゃない、だが向こうも気づいていない、どうかこのまま気づかんでくれ)

「ま、魔王様、お伝えしたいことが……」


「む?なんじゃ?」


「おそらく、この道具、オセロではない別の遊戯に使うものかと……」

(こいつ、気づきおった、終わりか、否!)

 アイリスが照れ隠しに得意の爆裂魔法でもぶつけてくるかと思っていたレオンは彼女の反応を見て驚いた。

「くくく、はーっはっは!」

 アイリスは顔を真っ赤に大笑いしたのだ。

「いやなに、いつ気づくかと思っていたんだがな、まさか今まで気づかなんだか、くくく」

(押し通す、魔王の風格は守り通す!)

「い、いえ、気づいてはおりましたが、あまりの楽しそうにしておられたので」


「水を差すべきではないと、キサマは優しいな、さて、楽しんだことだしこのよくわからんものは物置にしまっておけ」


「はい、では私はこれで」

 レオンが部屋を去ったあと、アイリスはベッドにうつぶせに倒れ、そして

「ぬわああああ、恥ずかしいいいい!!」

 ゴロゴロと転がった。

「あああ、気づかれてないよな、我が気づかずに始めたことは気づいていないよな?ああ、でも優しいやつの性格、もしかしたら、あああ!!」

 アイリスはそのまま1時間転がり続けた。


 この物語は異界から現れた用途のわからないものを魔王アイリスがわからないないに使おうとして何かしらやらかす物語である。


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