幼少期(後編)
「さて、まずは材料集めからしようかな〜」
家の周りに出て水辺にいくと、細かい砂や砂利と小石をあつめる。
「イブ、そんなの集めてどうするのさ?」
「どう⋯って、コレがマナおばさまをビックリさせる為の材料だよ? あと炭をもらってもいいかな?」
「あぁ、研究用の奴があるから持っていっていいよ。そんなもので私がビックリするものができるとは思わないけどねぇ⋯」
「ふふふ、知っているーー理屈がわかっているだけでは解ってないのと同語だよ。人は自分の目で手でやってこそ理解するのです」
「そうは言っても⋯イブや⋯お前さんも初めてじゃろう」
私は満面な笑みを浮かべる。
「そ! だから、いまドキドキしてるの。私の記憶が本当にそうなのかどうかが!」
「かかっ! その顔を見るとそれなりに遠慮していたのが分かるわ。他に材料は必要無いのかい?」
「あとは布と器だけだよ」
「ふむ。なら、すぐに用意してあげよう」
新品の布と器を出してくれる。
「そして〜、布、小石、砂利、炭(活性炭)、砂、布の順番に器に丁寧に詰めて⋯はい! ろ過機の完成!」
「で、それでどうなるんじゃ」
ふふふとキュピーンと目を光らすと。
「これにミルクを注ぎます」
「⋯⋯⋯で?」
「コレで終わりだよ? 時間がかかるから明日の朝までのお楽しみです」
「なんじゃい⋯期待したの残念じゃ。結果は分かりきっておろうに」
「へぇ〜? じゃあ、マナおばさま! 答えをどうぞ!!」
「飲めんミルクがでてくるだけじゃろ。少し黒くなったミルクとかな」
「へぇ〜、ふ〜ん、そうなんだ〜?」
ニヨニヨと笑みを浮かべる。
「何じゃい。まぁ、明日になれば分かることじゃ。今日はもう遅いから就寝じゃ」
「は〜い」
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「お、出来てるね」
翌朝、実験結果を見ると透明な液体がコップに溜まっていた。
「ほう? それが昨日のミルクとでも言うのかい?」
「うん!」
「そりゃぁすごい!! っとでも言うと思ったかい!! 昨晩の深夜に何やらゴソゴソしておったじゃろ! どうせ水と交換したんじゃろ」
「わ! やっぱり気づいてたんだ⋯。でも、あれは⋯」
「でももあれもないわい! ちょっと待っておれ!」
外にいた狼を呼ぶ。
「これは聖女を守る守護獣じゃ。ただし、不正や悪事を行った者には敵対心を持つ」
「守護獣⋯」
「そう、悪いことしてないと思うなら触ってみるがえぇ。もしかすると噛み切られるかもしれんから気をつける事じゃ」
「触っていいの?!」
「おぉ⋯、じゃが悪いことしたら⋯」
わーいと両手を広げて大きい狼にダイブする。
「⋯⋯⋯⋯」
躊躇なくいくとは思わなかったマナは、噛みつかれる心配をして止めようとするが、時すでに遅く、間に合わない事に絶句し硬直状態に入る。
「わーい! モフモフだー! モフモフモフモフ♪」
守護獣は、生き物の形をとってはいるが生き物ではなく精霊に近い為、公平に物事を判断する。
「噛まれるどころか懐いてる⋯⋯?」
それが全てを物語っていた。
「あ、マナおばさま。そのお水を一口でいいから飲んでみて」
言われるままに一口飲むと違和感を感じる。
「こ⋯これは、ミルク!?」
「せいか〜い! 正確には乳脂肪が薄くなったミルクだけどね」
「自分の目でみてないのは解ってないと同語か⋯くくく、あっはっは! 参ったよ。ビックリした。約束通りこの家の周りであれば好きにしていい。必要な物があれば言ってくれればいいよ」
「やったー!」
「ウォン!」
「ただ、お礼に⋯私も問題を出してあげようかね。イヴや、私は何歳に見える? 前後5才までは正解としてあげよう! そして当てれたら、今はまだ連れて行く予定にはなかった街にも、一度連れて行ってあげようね」
ニヤニヤとマナがイヴに問題を問う。
「本当に!」
「あぁ! 嘘は言わないさ!」
(マナおばさま、見た目から40後半は確実だと思う。周りからの信頼も厚いし⋯)
「じゃぁ、45〜55歳です!」
「本当にそれでいいのかい?」
「うん。いいよ」
「残念。私は78歳だ」
空間がピシッと凍りつく。
「うっそだー!! 絶対にそんな歳じゃないよ! ねぇ?」
狼に同意を求めるが、狼はウォンとだけ吠えて、嘘では無いことを物語っていた。
「かかか、残念だったねぇ! これでおあいこさね!」
「くぅ〜! くやしい〜!!」
後に話を聞くところ、聖女という職業は純潔を守っていれば身体は自然と若く保っていくのだという。
祈りを続ければ続ける程、聖気が強くなる聖女、そして長くに至り黒い大地の浄化していく為ーーいわゆるサイヤ人と一緒なのだと納得するしかなかったのである。
このあと、マナおばさまから欲しいものを聞かれて、調理器具、大工などの工具系、そして弓をお願いしたのでありました。
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さてさて、現在の時間に戻る。
「はぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜しあわせじゃ〜」
「でしょでしょ! 作って良かったでしょ! だから言ったじゃん。コレも毎日の疲れを癒す幸せタイムだからねぇ」
早速お風呂を完成させたので、その夜の一番風呂はマナおばさまを優先にする。
「ほんっと⋯、イヴの前世は凄いとこだったんじゃのぅ〜」
水はマナの札からだし、火は薪を入れて沸かしている。
「そうだねぇ。ただ、人数が多かった分、小さな幸せを感じれる人は少なかったんだと思う」
ふと、そう思う。
「それがまぁ、その世界の裏なのじゃろうて。行き過ぎた技術は恩恵をかんじなくなるからのぅ」
「そうだね。けど不幸でもないからいいんだと思うけど」
私も服を脱ぎ、お風呂に入る。
「はぅぅぅぅぅ〜、ひあわせぇ〜」
労働の後に入るお風呂は、身体が溶けそうになるほど気持ちよかった。
「クロウも汚れてるんだからおいで〜」
近寄ってくるクロウに、お湯をたっぷりつけた手で頭から身体まで力強くしっかりと手を走らせていく。
「気持ちいい〜?」
「ウォン!!」
こうしてこの夜は、みんなで幸せなお風呂タイムを満喫していったのであった。
正解した方は、〇〇森林や〇〇火山や人物名を考える権利をあげます。
え? いらない?
⋯⋯ですよねぇ〜(ノД`)・゜・。
どんな名前にしようかなぁ〜。