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(仮)聖女になった男  作者: 狐さん
プロローグ
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プロローグ編 おまけ(女神惚れ)

 星々を管理している住人が住む上界。


 一般的には天上界とも言われるかもしれないが、住んでる住人にはどうでもいい事であった。


「イザナ! 入るわよ」


 プラチナブロンドの髪に透き通るような肌をした女性が部屋の中に入ろうとするが立ち止まる。


「うぇ⋯、なに⋯このゴミだらけ⋯イザナ! いるんでしょ?!」


 チャイムらしきものを何度も押す。


「うぇ〜ぃ? 誰っすか〜?」


 中からやさぐれた格好をした男が出てくる。


「おおぅ。これは愛しのマリアちゃん。とうとう僕の求愛に応えてくれるんっすか?」


「馬鹿言わないで。絶対に嫌よ。収穫したいから許可出して」


「ちぇ〜連れないっすね。許可だすからホッペにチュっとお願いするっす」


 無言の笑顔のままでドアノブがもげる。


「⋯⋯⋯じょ、冗談っすよ〜。あ、けど求愛はマジっすよ!」


「生理的に無理だから未来永劫ごめんなさいとだけ言っておくわ」


「ぐはっ! これで5836回の振られっすか。きびしー!」


 頭をお腹をボリボリと掻く。


「そんな回数、数えるぐらいならいい加減掃除しなさいよ。どうみてもゴミの中に住んでるとしか思えれないんだけど?」


「そうは言っても、俺っちが管理してる星がいい仕事してるんっすわ。甘いもの食べて塩味食べるとうまいし、ちょっと濃い味を炭酸で飲み流すと最高なんっすよ。しかもゲームもかなり面白いっすからね! どうです? 一戦しません?」


「興味ないから遠慮しておくわ。にしてもこれは干渉にならないの?」


「ならないっすよ。実際、様子見程度に降りてバイトして自分で買ったもんっすから!」


「干渉してるじゃない!!」


「ノンノン。干渉は世界の方向性を変えたりした場合っすから、流れに乗ってるだけの俺っちはセーフっすよ」


「⋯まぁいいわ。じゃあいい子がいたら2〜3人連れて行くわね」


「了解っす。ただ、クリエイターはやめてくださいっす。この子達が描く未来に自分興味あるっすから」


「それって⋯ただ単に、本の続きやゲーム求めてるだけでしょ。言われなくても連れて行かないわよ。私が必要なのは聖気持ちだけだからね。許可さえもらえばこんなトコに居たくないし、もう行くわ」


「ひでぇっす。あ、けど、一応コレ持って行くといいっすよ。たまに見つかるからこの『死神ごっこセット』さえしていればすぐ逃げていくっす」


「⋯⋯そ、じゃあありがたく使わしてもらうわ。じゃあね。今度来る時までには掃除キッチリしておきなさいよ」


「善処するっすよ」


 こうして地球にと降りたのはいいのだが、なかなか強い聖気持ちは見つからなかった。


「⋯⋯⋯ちょっと!! 前の来た時以上に聖気持ちいなくなってるんだけど⋯?! あの馬鹿(イザナ)どんだけ魂を腐らしていってるのよ!」


 こうして何度か回るも、いい聖気持ちは現段階で連れて行くとこの星のバランスが崩れると判断し、最終的には日本にいる赤ちゃんだけとなった。


「⋯⋯⋯」


 私のことが見えているのか分からないが、赤ちゃんは私の方を見てきゃっきゃっ! と笑顔を向けてくれていた。


「ごめんね。産まれ出た君を連れて行くのは可哀想だけど⋯このままじゃ全てが無に帰すかもしれないから⋯」


 こうして偶然を装い、赤ちゃんは横断歩道に投げ出され、信号無視をした大型トラックと鉢合わせにしたのだが、少し離れた男が赤ちゃんを助けまいと必死に駆けていた。


 他の犠牲者を出すのはまずいと時間を停止させると同時に死神セットを使う。


 男は一瞬止まり慌てるがすぐに落ち着き、時間停止の中すぐに動きはじめ、赤ちゃんの方に向かおうとするが、黒いローブを羽織った私を見ると警戒体制に入る。


(この男を止めると意味ないし仕方ないとはいえ⋯さっさと退いてくれないかしら⋯)


 一向に逃げようとしない男に対し、死神セットについていた録音テープも流してみる。


【去れ。この子は我が連れていく魂だ】


 おぞましい声が男の頭に響き、汗が吹き出ている。


「ま⋯待ってくれ⋯。その子はまだ人生が始まったばかりなんだ。見逃してやってくれ。魂が必要であれば⋯俺のをもっていって構わない」


(私が欲しいのは魂じゃなく聖気なの! もう、これならどう!)


 軽く腕を振るうとヒュンっと鎌が現れ、首に当てられた。


 もちろんコレも死神セットの脅し用であり、更に追い討ちのテープを流す。


【⋯⋯⋯下らぬ。汚れた魂を持っていってなんになる? それでもまだつまらぬ戯言をほざくなら、その汚れた魂も刈ってもよいのだぞ? 肥料の代わりぐらいにはなるだろう】


(これでどう!)


 男は、それで構わないと真っ直ぐな眼で言ってきたのである。


 その言葉と真っ直ぐな眼に、上界で奇跡と言われた絶世の美女(マリア)は一瞬でも魅了された事が悔しく、つい意地悪な言葉をいったのだが、効果はなかった。


(コレは無理ね。キチンと事情を伝えるしか⋯)


 こうして死神セットを脱ぎ捨てて、男と対峙した。


 男は面白いことに聖気の話をしても、真っ向から信じてくれて、もしかすると自分にもあるかもしれないので測って下さいと言う。


(連れて行くって事は、この世界では死ぬって事なのに馬鹿なのかしら? それとも友人がいないとか⋯?)


 まぁ、この赤ちゃんより低ければ諦めるだろうから測ってあげることにした。


 仄かな光がとても力強く暖かい。


 計測してみると計測不能とでる。


「んん! ん〜? あれ?」


 こんな事ありえないと判断し、記憶を覗かしてもらおうとすると嫌がる素振りもなく承諾される。


 オデコを引っ付けると逃げようとしたので、両手でおさえると赤面していたのを見て、少し愛しく感じてしまっていたが、平常心で記憶を覗く。


(ちょっと! なによこの記憶! 善行しか行ってないじゃない⋯こんな魂あるの?!)


 ここで思い出す。


 聖気の計測不能を。


(アレは故障ではなく真実?!)


 そう思ってたら見事に男の顔に向けて大きく吹いていた。


「ごめんなさい。ごめんなさい」


(私としたことが⋯)


 慌てて拭こうとするとするが、大丈夫と言われ自分のハンカチで拭く。


(なんて誠実な方なの)


 たった30年程度の記憶をだったが、この男の生き様を見てしまったことにより見惚れていた。


 いわゆる一目惚れというやつだった。


 この時には、もうマリアは聖気を運ぶ事ともう一つの事を迅速に考えていた。


 フォルガイアの説明が終わった後、転生について話をした後、男は自分の肉体について迷っていた。


(きた!!)


 この時を待っていたと言わんばかりに提案を述べる。


「あ、あの! その⋯肉体の件なんですが、私が預かっていてはいけませんか?」


 赤面してるつもりはないのだが頬が熱いと感じながらも勇気を出して言う。


「マリア⋯様が? どうしてでしょうか?」


「そ⋯それは、まだ言えませんが⋯、も⋯もし貴方の人生が充実して、魂がこの肉体に戻ってこれたならその時に言います!」


(あう⋯私ともあろうものが言葉を吃りながらいうなんて⋯どうなってるの!)

 更に頬が熱くなるのを感じる。


 上界ではしょうもない男が寄ってくるだけだった為、恋愛などに飽き果てていたのだが、蘇った乙女心はどんどん加速していった。


「戻ってこれるんですか?」


「分かりません⋯が、上界であれば地球のように保存状態の維持・お世話をする必要もなく眠っているようにしておけますので⋯」


 目を少しそらしながら、両指をクルクルと回す。

(私の部屋でですが⋯)


「そうですか、ならお願いします。もし必要なくなれば破棄して下さい」


「それは絶対にありません!」


(そんな事する訳がないでしょう!!)

 頬を膨らませて怒りながら言ってやる。


 その後、転生先の話をランダムにお願いされるが、ここで自分の名前をつけてみては? と提案する。


(貴方の旅路を邪魔する無粋な真似は致しませんが、私の加護を与えるのはルール違反ではないですよね?)


「イヴでお願いします」


「分かりました」


(どうなるかは分かりませんが⋯私の加護と聖様が付けた名前の最初で最期の共同作業⋯)


 そう思いながら、転生の言葉を紡ぐ。


 崩れ落ちる聖を抱きしめ、言うつもりがなかった言葉をつい発してしまう。


「聖様、大好きです」


 聞こえたか聞こえなかったのかは分からないが、この一言だけはどうしても伝えておきたかったのである。

次からはいよいよ異世界編に入ります。

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