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(仮)聖女になった男  作者: 狐さん
追憶
24/42

白龍帝の審議眼(けんかい)

 夢を見る。


 それは当たり前の事だが、私にとっては過去を思い出す行為。


 いや、けど、それは過去ではなく前世(ゆめ)か⋯⋯。けど、最近ではその夢もすでに見る事は無くなっている。見ているのかもしれないが、昔みたいに体験をしているようなものはほとんど無く、朝になると記憶にすら残っていないのであった。


 あの時の夢ーー白い景色でマリア様の姿を見た以来、儚くとも前世(ゆめ)は見なくなっていた。

 すでに記憶と同調させていた技術(ぶぶん)などは忘れる事はないが、自分が友達と何をしていたか、どう過ごしていたかなど、今はもう隙間だらけになっており、それでもヒカルの声だけは鮮明に覚えている。


 それだけ仲が良かったのもあるし、子供の頃からの付き合いもあるが、なぜ私と同じ世界に来ているのかが気がかりである⋯⋯。


 これは前回、白龍帝マドウェルがいっていた、黒と白の世界バランスによるものだとしたら⋯⋯もしかしたら、ヒカルは私が連れてきたのではないだろうか? 


 前世である『神輝聖』と、今の私『イヴ=バレンタイン』は、同一人物かもしれないが、同一人物では無い。

 前世はあくまで前世であり、今の私に記憶は引き継がれていても、それは脳の奥にひっそりと(しま)う記憶の一部だからと思っていた。


 だから、私は自分が神輝聖ではなくイヴ=バレンタインとして楽しく生きてきた。


 ただ、あの時の黒影(ヒカル)は聞いてきた。それは、探し物を探す仕草であり、彼はもしかしたら転生ではなく転移ではないかという疑問に駆られている。


 話はしたい⋯が、それで彼を傷つけてしまうのはどうなのだろう?


(しょう)!! 迎えに来たぞ。一緒に帰ろう! そしてまた、下らない雑談に愚痴を言いながら飲みにつきあってくれよ!」


 私が首を振る。今の私は(しょう)ではないと。


「そんな事あるわけないだろう! 記憶があるんだ! そんな事言わないでくれ! 頼む⋯⋯!」


 身体がドス黒く変色して、白い涙を流しながら地面に沈んでいく。

 あわててその手を掴もうとしたが、すり抜けて沈んでいく⋯⋯最後まで私の名前を叫びながら⋯⋯。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ハッと眼が覚めると涙を流していた。

 起きると夢の中みたいな後悔と懺悔みたいな気持ちは一切なく、(コレ)は神輝聖が記憶と共に唯一残した罪悪感というものかもしれないと感じていた。


 そして、いつのまにか私の隣には白龍帝(ハク)さんが寝ており、私と白さんの少しだけ開いた隙間にマナが挟まるように寝ていた。


(会って1日だけどここまでフレンドリー感が全開でいいのかな⋯)

 まぁ女性同士だから問題はないのかな⋯。それとも龍だと昨日の敵は今日の親友なのかもしれない。


 お墓の掃除を済ませて朝食を準備する。マナとの癖がまだ抜けるはずもなく2人前を作ってしまい少し切なくなるが、食べるかは分からないし、無駄になるかもしれないけど精霊(マナ)のご飯も用意することにした。


「ご飯って食べるでいいのよね?」


「えぇ、ありがとうございます。マナも喜んでいますよ」

【⋯⋯⋯!】

 箸などを食べ物に突き刺す所を見ると、この精霊は生まれたてだろう事を実感し、口の周りについた汚れをタオルなどで拭き取ってあげる。


「そういえばイヴ、昨日調べた結果をいってもよろしいですか?」


「え? う、うん。よろしくお願いします」


「まず、やはりこの聖域はマナと私が研究していたモノで合っていましたが、途中で方向性が変更されていました」


「方向性?」


「はい。元々は外に溢れ出す聖気で周り一帯の浄化を目的としていましたが、それが生命樹誕の方向にもっていっています。木と言うものは元より年月を重ねる程、成長していきますが、これは地上の場合は栄養素で成長するからこそ程よく成長しますが、精霊卿などでいえば魔素で成長します」


「となると、この木は」


「そうですね。魔素でもなく栄養素でもなく聖気で育った木です。過去に一度あったと言われていたので、その光景を見たマナがその可能性を示したのでしょう。栄養素である聖気はイヴから毎日集めていたのではないのでしょうか?」


「過去の一件以来、聖女の仕事は手伝っただけで、何かをされた事はないよ?」


「その聖女の仕事でしょうね。補充機に補充。どれだけの数をしたかは知りませんが、余りはじめたのではないでしょうか? それで樹の方に回したと思います」


「なるほど」


「あとは、この聖域は新生したものです」


「新しく生まれたって事?」


「はい、なので、私達以外はまだ誰もいません。精霊達はその内時間が経てば勝手に住み始めるでしょうが、人は難しいと思います」


「人を住ませるの?」

 我が家のイメージが強いので、人が住むという認識はなかったんだけど⋯。


「違うのですか? 桃幻郷(ここ)を創造する時に、隣人と酒を酌み交わしと言われていたので⋯⋯」


「あ〜、それは前世の記憶による文章を思い浮かべたからね。街も近いんだし、ここに住む必要はないんじゃないかな? 森で困っていれば迷い込む形のほうが幻想郷って感じには思うかも」


【⋯⋯⋯!】

「なるほど、ならそうするねと言っています。昨日私達が見て回っていたのは、空間の広さと人が住めるかどうかを確認していたので」


「という事は、人は住めないの?」


「いえ、住めますが⋯⋯確実に何もしなくダメ人間が次々と製造されていきますね」


「なに⋯その嫌なマダ二工場⋯⋯」

 まるでダメな人間を略してマダニ。


「食べ物に困る事がなく、争いもなく、毎日ゆったりと過ごす毎日。この聖気が充満している空間で1週間もいれば確実に何もしないことが幸せと感じるようになってしまいます」


 それ、桃幻郷に寄生して吸い続けるって事だから⋯⋯マダニそのものなのでは⋯⋯。


 いわゆるほのぼのした空間と充満した聖気が、何もしないという悟りを開かすとの事らしい。


「それなら、私は大丈夫なの?!」


「問題ありませんよ。そもそもイブの聖域ですからね。まぁ、迷い込んでも数日という事にして、期限がすぎれば何処かに退出するような形にしておきますね」


「う⋯⋯うん」


「お酒はどうしますか?」


「お酒? これも想像した件から?」


「はい。とはいえ、ここのお酒は少し普通とは違いますが⋯。街に出ればエール系が多いですがこちらのは『神酒(みき)』ですね。作り方と言うべきか『龍酒』は龍の魔素を高濃度に圧縮した液体ですが、ここのは聖気を圧縮した液体となります」


「⋯⋯⋯えぇっと、それってコレ⋯」

 アイテムボックスからビンを取り出してみせる。


「一口いただきますね」

 舐めた瞬間、ショートヘアが静電気を当てられたかのように逆立ち、すぐに収まる。

「え⋯⋯えぇ、間違いありません。これは神酒です。これはどうしたのですか⋯⋯って聞かなくても分かりますね」


「う⋯うん」

 身体を包む結界を色々調べている時、手から水滴が出ることに気づいた事がある。恥ずかしながらかなりすごい手汗と思い舐めてみると、アルコールっぽく感じたので料理に使えると思い貯蓄していた。

 けど、なんか自分の体液をどうぞ? みたいなのは恥ずかしいので内緒にしていたが、既に何度か料理に使用していたが、問題なさそうで安心する。

 

「けど、これは⋯私でも酔いますね⋯⋯元の性質がいいので悪酔いがなさそうなのですが、人に渡す時は注意してくださいね」


「あんまり渡したくないかなぁ⋯。既に料理では使ってるからそれでいいかなと」


「ふふ、それでいいと思いますよ」


【⋯⋯⋯!!】

 精霊(マナ)がいつのまにかビンの中身を全て飲み干していた。


「うわ! 大丈夫なの?!」


「うまし!! だそうです。元が聖気で成長していますからね。問題はないと思いますよ」


「そうはいっても、酒ビン抱えこみながら丸まって寝たんだけど⋯」


「お腹が一杯になって眠る事は、子供にとっては当たり前の事ですよ。それよりも、今日もし時間が空いていれば、イヴ自身を調べさしてもらってもよろしいですか?」


 調べる⋯⋯調べるって何をするんだろうか? 身体測定? 体力測定? それとも水晶や鏡などに手をかざして測る? 想像するだけでかなり多種が想像できるけど⋯。


「⋯⋯うん。いいよ。じゃあ⋯よろしくお願いします」


 かといって、お断りするのも失礼なのでお願いすることにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なるほど⋯」


 ひとまず、下着のみで触診されている状態である。


「すみませんが胸に巻きつけている布も外してもらっていいですか?」


「えぇっと⋯⋯はい⋯」

 白さんの眼は医者のような感じで拒否するのはなんだか申し訳ないので観念してサラシを解く。


「身長153に胸囲はハ⋯⋯」

「わぁぁぁぁ⋯⋯!! ちょっとまって! 言わなくても大丈夫だから!」

「?? そうですか⋯⋯大きいと思いますが気にしなくても大丈夫ですよ」

「うぅぅ⋯そういう訳じゃないんだけど⋯」


 両腕で胸を抑えるが⋯⋯男目線からいえばよく育ったと思う。ほんと⋯聖気がここに集まってるんじゃないかと思うぐらいに⋯。

 っていうか、カップとか特に調べる必要ないんじゃない? そう思うのだが、かなり精密に測定された。


「ここまで正確な数字いるの? 正直かなり恥ずかしいんだけど」


「必要ですよ。私からにしてみれば成長記録も含めていますので」


「それ必要?」

「はい、必要ですよ」

「⋯⋯そっか⋯」

 

 はっきり言われると、納得するしかなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 イブ=バレンタイン 12歳♀


 職業:聖女【女神愛(じあい)】、渡り人【極】


 ・HP(体力):A

 ・STR(持久力):A

 ・MP(魔力の貯蓄量):F

 ・POW(力):B

 ・DEF(防御力):B

 ・INT(頭の良さ):A

 ・AGL(素早さ):S

 ・DEX(器用さ):S

 ・MND(精神力):B

 ・LUK(運):A

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「これが、イヴの現在の能力数値ですね」


「ふむふむ、魔力は低いのね」


「いえ、Fなので才能無に当てはまります」


「そうなんだ⋯⋯残念。けど、一応矢などを媒介にして各属性は使えるんだけど⋯」


「それは魔力ではなく聖気なのだと思います。数値自体見たら優秀もしくは天才枠に当てはまりますが⋯」


「⋯⋯が?」


「これは⋯⋯聖気補正を抜いた数値です。聖気を含めた補正値は正直にいって分かりません」


「分からないって⋯⋯」

(龍帝でも分からない事あるんだ⋯)


「そもそも、あれだけ色々出来るのに職業が2つもおかしい話です。簡単に考えて、これは渡り人に全て含まれているのでしょう。ただ【女神愛(じあい)】が補正値の影響しているのでしょうが⋯」


「そっか。まぁいいんじゃないかな? 毒じゃないんだしあっても困らないしね」

 考えても仕方ない事は諦めるのが一番であり、死活問題なら最後まで考えるが私のモットーなのであーる。


「そうですが⋯⋯まぁ、おいおい調べていくようにしましょうか」


「了解だよ。ゆっくりでいいじゃない。まだまだ時間はあるんだしね」


(まぁ⋯⋯今の段階でわかる事は、女神愛ーー自愛(じあい)と考えて、状態異常無効、体力持続回復などは確実に含まれているでしょう)

 火山での戦闘を容易にこなしていた理由だけははっきりと理解ができたのである。


 この後、庭に出て軽く手合わせをし、今の技術などを実践して見せたりして、能力計測などはその日は夜までかかることになったのである。

【オマケ】


能力値を出され、次は外で実技をする。


家から出ると、精霊(マナ)が丸い芋をその手に持っていた。

【⋯⋯!!】

「あ、堅イモだ。ありがと〜♪」


 頭を撫でるととても喜んでいた。


「イヴ、どうしたのですか?」


「マナちゃんが堅イモ持ってきてくれたんだよ。これ、美味しいのよね。毎日、朝食べてるけど全然飽きないのよね〜♪」


「毎朝⋯⋯ですか。いつぐらいからですか⋯」


「えぇっと、小さい頃だけど⋯⋯駄目だった?」


「いえ、特に駄目というわけでもないんですが⋯コレはどういうものか知っているのですか?」


「堅いイモだよね? 蜜がタップリ入っている」


「なるほどその認識なのですね。コレは神に捧げる供物として昔にあった食べ物です」


「そうなんだ。昔って事は今はないの?」


「一部ではあるとおもいますが⋯⋯環境的に無いに等しいと思います」


「うわ⋯結構希少なんだね」


「まぁ物自体もそうですが⋯⋯その効力です。女性ホルモンを活性化、分泌を促進させる女性にとっては喉から出るほどほしい一品です」


「ええっと、それってまさか⋯⋯」


「はい。イヴのいやらしい身体の理由が分かりましたね」


「うわぁぁぁぁ!! そんな! 途中からマナも食べはじめたのにそんな事一切言われなかったよ!!」


「それはマナにもまだ女性らしさが残っていたのでしょう」


「そ⋯そんな⋯」

なんてこった。美味しいもの食べて喜んでいたのにこんなトラップがあるなんて⋯⋯。


「どうしますか? 堅イモはもう食べないようにしますか?」


「うぅ⋯⋯」

食べたくはない⋯⋯。食べたくはないけど⋯あの極上の蜜をやめるなんて⋯⋯。


【食べる】【食べない】

再びやってくる、究極の選択肢。


「⋯⋯ふむ。これからも楽しみですね。イヴの成長が」


 当然やめられるわけもなかったのである。




次回:【スターシャの街へ】

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