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~プロローグ~
『日本軍の中にはときどき赤備えの軍服を身に纏った朱色の兵隊が現れ、この兵隊はいくら射撃してもいっこう平気で進んでくる ――ロシア満州軍総司令官 アレクセイ・クロパトキン』
彼の日露戦役の折、
ロシア軍人が最も恐れたのは日本兵ではなく、日本兵に化けた“なにか”であった。
◇ ◇ ◇
僕たちは語り継がなければならない。
武士が台頭してきたあの時代から
共に傍らにいてくれた、
あの者たちのことを。
総力戦と謳われ、
尊い犠牲の上に終わったあの戦争にも
ほんとうは彼らもいたんだ。
これは、
僕たちの歴史から忘れ去られたひとかけら。
誰にも伝えられることのない
ほんの小さな物語。
君たちとあり続けようと懸命に戦った、
ある守護神たちへの
――鎮魂歌。