紫陽花
探そう。
貴方の……
白く、立派な花弁を持つ紳士がいた。
彼は、色を認識できなかった。
正確には、老化によって色を認識することができなくなった。
そんな彼には、お嫁さんがいる。
美しい『紫色』の花弁を持った、おとなしいお嬢さんだ。
白い紳士は紫のお嬢さんをとても愛していましたが、色を認識できないのでいつも形で判断していました。
二人はとても仲睦まじい夫婦でした。
そんな夫婦を、ひとりのお嬢さんがねたんでいました。
彼女は美しく『蒼に最も近い紫』の花弁を持っていました。
蒼い彼女は、紫のお嬢さんのお姉さんでした。
白の紳士は二人と話したうえで、紫のお嬢さんを選びました。
紫のお嬢さんも、白の紳士も、二人とも幸せでしたが、やはり、蒼の彼女はとても、妬むのです。
「わたしが、あんたよりも年上なのに、美しいのに、どうして!!!」
ある日、妬みのあまり、蒼の彼女は紫のお嬢さんを手折ってしまいました。
紫のお嬢さんは、二度としゃべらず、二度と動かなくなりました。
「……すこし、雰囲気が変わったね」
「あら、そうですか?」
「ああ……ほんの、すこしだけ」
「もしかしたら、梅雨が近いからそう感じるのかもしれませんね」
いまでも、夫婦は幸せそうです。
白の紳士と……『蒼の彼女』の、偽りの夫婦は。
「本当は知っていたよ。でもね、紫のお嬢さんのマネをしている蒼の彼女を、私は、愛したのさ。薄情だと思うかい?」
あなたのこいびとは、なにいろでしたか?
色を失った紳士はダレを愛していますか?
花言葉:移り気