去り行く季節に
私は今日この街を出ていく。
生まれてから今日までずっとこの街で育って来た私にとって大きく環境が変わるということに不安を覚える。
とはいえ、両親の仕事の都合なのでこればかりは仕方ない。
高校2年の今なら転校しても勉強に影響が少ないというのもある。
しかし、心配なのは勉強よりもやはり友達のほうだ。
ここまで小学校からの長い付き合いの友達もいるがその子達と離れてしまう。
さみしがり屋の私は耐えられるか心配だった。
それにせっかく恋仲になったばかりのあいつとも離ればなれになってしまう。
夏が終わり吹いてくる秋風に心まで凍えそうだった。
引っ越しの日、友達との挨拶も終わり最後になるあいつとの会話が待っていた。
これで終わりだと思って暗い顔をしていた私に向かって
「暗い顔してんなよ、遠距離恋愛なんて珍しくないしこっちの大学を受ければ一年半年でまた会えるんだから、メールも毎日するよ」
そう言っていつものように私の頭を撫でる彼の手は暖かかった。
それから一年半年後、私はよく知った街に帰って来た。
あいつは離れていた時期なんてなかったかのようにいつもみたいに頭を撫でてくれた。