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玉依手稿  作者: Trakhtn
思想Ⅰ
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子宮Ⅱ

つらい

精子の生死。

朱い血を塗りたくられた後に白で隠された秘匿のカンヴァス。

密教的ヴァニタス、死神はロンドを踊り、もしくは、何かの音楽に合わせて、

音楽は鼓動、命の証、止まる時に合わせて座る。肉体へ浸透する。

それはもう要らないのだから、捨ててしまいなさい、

もう一度腹の中に入りなさい、幼子よ


芸術は、肉の壁を伝って、子宮を蹴りながら、落ちて、堕ちて、現れるもの。

同時にまた、肉の壁を伝って、神経の道を通って、目から入って、新しい何かを孕ませる、

それをさらに出産させ得るほどのものでなければならない。

感じることが全て、この母宇宙の上では。子宇宙の中で反芻していればいいだけ。

思う。曰く、月経とは死と再生の暗喩儀式であると。

血が剥がれ落ちることは、死を意味し、しかし一度死ななければ、再生は望めない。

死と再生はつながっており、生物の中では。

常に何かは死ぬが、同時に生命の光が溢れている。

人間がその循環の平衡を崩したから、今のような歪な生態系が出来上がった。


子宮によって保護された胎児であることを知れ。

母親はこの星そのものであり、地球である。

父親は存在しない故に。

そしてわたしたちは、今の段階では母体から長く離れることはできない。

産生物はすでに母よりも遠くへ行った。それへの憧れが、人類の中では。

子宮の中で争うことなかれ、人類。それこそ「人類皆兄弟」なり。

子宮の中で争って、たった一人の胎児になったところで、いざ生まれたところで、

誰もいない、誰もいない、孤島にひとりきりの。

母たる大地を傷つけて、血を、肉を、使って成り立った文明を呪う。

その血は太古に生えていた木々であった。

太古に生きていた生命であった。

もう残った血は少ない。補給もすることができない。過去には戻れない。

そして、血肉の上に成り立つ文明も、血肉なしでは滅ぶのみ。過去には戻れない。定めだ。

人類が兄弟だというのなら、木々も、花も、けものも、鳥も、風も、等しく。

人間様、人間様と兄弟に言わせているのは楽しいか?人間様。

人類が多胎児だというのなら、ミジンコも、ミカヅキモも、ゴキブリも、オオグチボヤも、等しく。

人間様、人間様と威張り散らすのは楽しいか?


子宮の中で優越感を抱こうとも、今でしかない、その優越感は。

子宮の外ではその価値観は適用できないから、人間様、

いずれその頂点の座から堕ちるぞ、人間様、

その時後悔するがいいさ、今威張り散らしていることを、人間様、

大地をこれ以上傷つけるな!外へその目を向けるがよい!


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