血
血と死と生と性を愛す
あの艶めかしい赤よ。あの鉄の色よ。
わたしは愛おしい。痛みも伴う出血も。血の容れ物も。血を取ることも。
血に関わるものは何でも美しい。
美しい赤、艶めかしい赤、劣情を催す上品な赤。
動脈血はそこまで上品ではないな。あれは少し赤すぎるとは思う。静脈血こそわたしの望むものよ。
血が詰まった爪の間から感じる虚無と、引っ掻かれた場所から感じる痛みと、
全ての感覚に対する愛おしさがわたしを活性化させ、
そしてこうして文章を生み出すのである。全ての感覚を文章化して、感じるもの全てに正直に、
わたしはわたしであり、そして全てを喰らい、自らのものとせんとせしめる。
血により存在を刻み込む。
血液という液体は、画材は、その者が生きていた証拠をも示すと。
だからわたしは絵に自らの血液を使わせ、画用紙に自らの血液を染み込ませ、
時には電子情報に、時にはコピー用紙に、時にはメモ帳の断片に、
わたしの、欠片を染み込ませる。
そうしなければ肉体を得られない。
わたしの血で、わたしの愛しいものたちを刻んでおりますゆえ、
わたしは痛みも疲れも愛おしく感じるゆえ、
愛おしいもののためならば、心臓をも差し出しても良いとすら考えるようになりましたゆえ、
ゆえ、わたしは、彼らの良き父であり、良き母でなければならないゆえ、
表現の出産を奨励せねばならない。
血を流しましょう。
血で社会を回しましょう。
血は酸素を供給するためのものであり、また分け与えるべき共有財産でもある。
しかし人間というものは所有物に目を見張って、真に分け与えるべき者を見ようとしない、
感じすらしない。自らの所有物を守るだけでは輸血はできない。
献血せよ、人間界隈の者よ。
その血は無駄にならない。いずれあなたの下に還ってくるものだから、
いずれ世界の為になるのだから、今の痛みは今だけで、
その後の展開においてはその痛みは考慮しなくてもいい。
その時点で既に痛みは過去のものとなっている。
傷は治るか治らないかは丁と出るか、半と出るか。経済を廻転させよ人類よ。
人間にとって、血は血と答える者が多いだろう。
しかし集団、社会へと発展すれば考えも変わることよ。
人間社会においての血は、金銭を指し、血流は経済を表す。
持つものだけが持つだけではなく持たざる者へ血を分け与えるのだ。その血を決して土へ還すことなかれ。
地球の生態系の中に金銭は存在しない。
インクは血
命を削り 心を削り 体を削った表現が いずれこの世界の血となり肉とならん
そのためにも わたしたちはキャンバスに赤い血も青い血も黄の血も
白い血も黒い血も刻み込まなければならないのだ
刻み込むことでわたしたちは永遠となる
成らざるを得ない
わたしたちは永久に保存される
定めだ