第8話 リコ
その後も二人は、リングルートの街を探索し続けた。
特に商業区には、一国の城下町に比例するほどの人が集まっている。その光景を見たラグナは、懐かしいものを見るかのような眼差しをしていた。
町を歩いて二時間ほど経ったので、少し小休憩をしようと近くの茶屋に向かうと、腰に剣を携えた女性がお茶を飲んで和んでいた。
「珍しいね。女剣士かな」
「ん、あれ、お前もしかしてリコか?」
「ん? あ、リクト! 久しぶりね」
リコと呼ばれた女剣士は、リクトたちのもとへ近づいた。
「久しぶり、元気だったか」
「もちろん、順調よ」
リコはにっこり笑って答える。
「そうか、それはよかった」
「で、そちらの少年は? あんたとは縁のなさそうなほど上品な感じだけど」
リコは茶化しながら、ラグナの方へと視線を向けた。
「失礼だな。こいつはラグナ。訳あって、今俺の家にいるんだ。で、こっちがリコ。俺の一歳上だから18歳だっけか。俺やミソラとは小さい頃からの付き合いで、今は傭兵をやりながら世界を旅しているんだ」
リクトはラグナの肩をぽんと叩いた。
「ラグナと申します。よろしくお願いします」
「あら、これは丁寧に。私はリコです。もしかして、貴族の方ですか?」
「……まあ、一応」
ラグナは少しためらいながら答える。
「ふーん。貴族の方とリクトが顔見知りになるなんて、珍しいこともあるのね」
ちらりとリクトを一瞥。
「失礼な。まあいい、ところでリコ、暇なら家に寄っていかないか? ミソラも会いたいだろうし」
「もちろん行くわ。私もミソラちゃんに会いたいし。あ、ラグナ殿、私も同行して大丈夫ですか?」
リコはラグナに尋ねた。
こういった社会性のあるリコを見たことがなかったリクトは、彼女も傭兵生活で日々成長しているのだな、と心の中で感心していた。
「僕は構わないですよ。それと、あなたの方が年上なので、そんなかしこまらずに大丈夫です」
「それなら、あなたもかしこまらないで、リクトに接するのと同じようにしてくれて大丈夫よ。そうやって接せられるの、あんまり慣れてないし」
リコが提案する。
「それじゃ、これでよろしくね、リコ」
「ええ。そっちの方がやりやすいわ」
リコもすっきりしているようだ。
「よし、お互いに紹介も済んだし、そろそろ家に帰るか。丁度休憩しようとしていたところだしな」
「あんたの家って、相変わらずあそこにあるの?」
「ああ。引っ越す金なんてないしな」
「それぐらい、私が援助して上げるけど」
「いいよ。お前にも生活があるだろうしさ」
リクトとリコのやり取りを見ていたラグナは、二人に浮かび上がった疑問を尋ねた。
「君たち二人は、一体どこで知り合ったの?」
「あー、リコとは住んでいた村が同じだったんだ。そうだな、せっかくだし、歩きながら話そうか」
リクトは自宅への帰路で、自分の過去について話す。