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Common  作者: 二見
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第3話 二人の貴族

 港の外れに着くと、そこには小さな船に二人の乗員がぐったりと倒れている姿があった。二人とも金髪の男性だが、一人はリクトと同い年くらいの少年で、もう一人は20代後半の青年だ。どちらも派手な衣装を着ている。貴族の人間だろうか。


「おい、あんたたち大丈夫か!」


 リクトは大声で呼びかけたが、二人に返事はなかった。


「リクト、運ぶときは注意しろよ。あんまし動かしちまうと、命にかかわるからな。そっと運べよ」

「ああ、わかった」

「どこに運ぼうか。とりあえず安静にさせなきゃだな」

「俺の家が近いから、そこに運ぼう。ついでに途中で誰かに医者を呼んでもらおう」

「よし、そうするか」


 話が決まると、リクトは少年をそっと持ち上げた。


(こいつ軽いな。あんまり食べてないのかな……)


 そんなことを想いながらも、リクトは過度に揺らさないようにしながらも急いで自分の家へと走り出した。




 リクトの家に着いた二人は、急いで寝具の準備をして、二人を寝かせた。


「お兄ちゃん、その人たちは?」


 怪我人を見たミソラが心配そうに尋ねる。


「わからない。港外れに倒れていたから、近かったここまで運んできたんだ」

「この人たち、生きてるのかな……」

「まだ息があったから生きてはいるだろう。もっとも、かなり衰弱しているようだから、命が危ないかもしれんが」


 男の言葉に、ミソラは顔を曇らせた。


「医者はどれぐらいでくるんだ」

「後10分くらいだってさ。貴族風の男たちだって言ったら、大急ぎで準備し始めたらしい」


 貴族を助けたとなれば、報酬として様々なものが貰えるかもしれないという魂胆から、大急ぎで準備を始めたのだろう。


「まったく、医者も現金なもんだよな」

「しょうがないよ。誰だって自分の益になることならやる気がでるもんだ」


 そんな会話をしているうちに、医者が到着した。


「患者はどこにいる?」

「こっちだ。見たところ、西方大陸の人間らしいが」


 この世界は大陸によって髪の毛の色が異なっている。故に、髪の毛の色を見ればどこの大陸出身なのかがおおよそわかってしまう。西方大陸の人間の特徴は、髪の毛の色が金髪になっていることだ。


「そのようだな。ここから一番近い西方大陸の国だと、シルフ王国か」

「シルフ王国……」


 東方大陸から出たことのないリクトにとって、西方大陸の国の名前は新鮮だった。西方大陸の人間を見かけたことはあるが、あまり関わったことはなかった。リクトにとって、こんな間近で西方人を見るのは初めての体験だった。


「それが何でこんなに傷ついているのかはわからんが、よほどのことがあったんだろうな」

「特に青年の方は重症だ。場合によっては命にかかわるかもしれん」

「そんな……」


 医者の言葉に、ミソラは悲しさを浮かべた。


「どうにかして助けてやれないんですか?」

「もちろん、最善は尽くすに決まっている」


 リクトは倒れている二人に視線を向けた。二人とも、苦しそうに呻き声を上げている。


「……とりあえず、こっちの少年の方は大丈夫そうだ。傷も浅かったし、安静にしていれば時期に治るだろう」

「もう一人の方は?」

「先ほども言ったが、こっちは重傷だ。傷が深い上に疲労が溜まっているんだろう、体の免疫や回復力が落ちている。体力が戻れば、状態も安定するかもしれんが……」

「……」

「とりあえず、やれることは全部やった。後は、二人の回復を祈るのみだ」


 そういうと医者はリクトの家から出ていった。


「じゃあ俺もいくわ。リクト、今日はもう上がっていいぞ。彼らの面倒を見なきゃだしな。報酬のことは心配するな、俺が上手く言っといてやるさ」

「ありがとう、おっさん」


 そういうと男も出て行った。


「ミソラ、ごはんにしようか。この二人の分のご飯も作らなきゃだから、ついでに俺たちもごはんにしよう。今日は何がいい?」

「うーん、消化のいい物がいいかなあ」


 ミソラは二人の体調を気遣ってか、消化の良い料理を希望した。


「よしわかった。俺は買い物をしてくるから、その間見ててくれ。必要なものを買ったらすぐに戻るから」

「了解!」


 リクトはそういうと、大急ぎで買い物をしに出かけて行った。


「大丈夫なのかな、この二人……」


 ミソラが心配そうに二人の様子を確認すると、


「ううっ……」


 と、二人の内の少年が呻き声をあげた。


「! 大丈夫!?」


 ミソラは少年に呼びかけるが、ときどきうめくだけで返答はない。


「ど、どうしよう」


 人の看護をしたことがないミソラは、おろおろするばかりだ。


「お、お兄ちゃん早く帰ってきてー!」


 あたふたとしながらも、ミソラは自分が出来ることを最大限やろうと努力することにした。

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