第2話 少年リクト
東方大陸にある街リングルート。この町は、古くから貿易都市として栄えていた。
リングルートは東方大陸の国である商業共和国にある街の一つで、東方大陸の端に存在している。そのすぐ隣には西方大陸に存在するシルフ王国があった。シルフ王国には船で一週間もあれば辿り着くので、別大陸でありながらも昔から盛んに貿易が行われていた。
近年は西方大陸からの移民も多く、リングルードに住む人々の四分の一は西方大陸からきた移民となっている。
移民の他にも、リングルートには先の戦争によって行き場を失った難民などが、この街に仕事を求めてやってきている。
この街に住む少年リクトも、先の戦争によって両親を失い、この街に流れついてきた一人だった。
「ミソラ、仕事行ってくるから、留守番しっかりな」
「行ってらっしゃい、お兄ちゃん!」
リクトは妹のミソラと二人で暮らしている。
リクトとミソラはリングルート出身というわけではなく、山奥にある村に家族と住んでいた。しかし、村の若い男たちが東西戦争に駆り出されると、それを好機と見た山賊たちが村を襲い始めた。山賊たちの奇襲により、村は壊滅してしまったため、住む場所を失ったリクトたちや生き残った村人は、行き場を探すために旅立った。その際に流れ着いたのが、リングルートの街だった。
今までは両親が生活を支えてくれていたが、これからはリクトがミソラを支えなければならない。そのために、まず働き場所を探す必要があった。とはいっても、リクトは当時12歳で、引き受けることのできる仕事などほとんどなかった。人手が不足している荷運びや木こりなど、肉体労働の仕事なら辛うじて受けることが出来た。生きるために仕事を選ぶわけにもいかないリクトは、肉体労働の仕事を積極的に受けることにした。始めは慣れない仕事で失敗も多かったが、現在では一人前、いやそれ以上の仕事が出来るようになった。
そんなリクトが仕事を始めてから、既に5年が経過していた。
本日も5歳下のミソラを家に残し、仕事に出かける。本日は船着き場にある資材を運ぶ仕事がメインだ。重量は相当なものだが、手慣れたリクトは軽々と資材を運んでいく。
「何年もやっているから、大人顔負けの筋肉がついちまったな」
リクトは自分の腕を軽くたたきながら言った。
実際、リクトは力だけなら成人男性にも劣らない。年に合わない屈強な腕を持っていた。仕事をしているうちに体力もついていき、今では人一倍働くようになった。働けば働くほど、それに対する給料も増えていく。自分やミソラが生きていくためにも、リクトは働かなければならなかった。
「よし、じゃあ次……」
リクトが次の資材を運ぼうとしたその時、
「リクト、大変だ!」
同業者の一人である男から声をかけられた。
「どうしたんだ、おっさん」
「港の外れに小さい船が着いたんだが、乗員が酷い怪我でな。悪いが、一緒に運んでくれ」
「何、それは一大事だな。案内してくれ!」
リクトは男の後に続いて走り出した。